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戦国異伝供書

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第百二十一話 耳川の戦いその三

「我等の望む地に敵を向かわせ」
「そこで、であるな」
「我等の望む戦をし」
 そうしてというのだ。
「倒しましょう」
「それがよいな」
「はい、それでは」
「策を練るか」
「是非共」
「では兄上」
 家久も言ってきた。
「軍議もですな」
「開く、そしてどう戦うかを話し」
「そして決めて」
「そのうえで戦うとしよう」
「わかり申した」
 家久は義久の言葉に頷いた、そうしてだった。
 彼は意を決した顔で義久にこうも言った。
「ではそれがし戦になれば」
「命を賭してか」
「戦いまする」
「それでこそ薩摩隼人じゃ」
 義久は末弟のその言葉に確かな声で頷いた、そうして三人の弟達と家臣達に対してあらためて話した。
「この度は戦になれば誰もが死兵となり戦うぞ」
「そうすべき戦ですな」
「当家の生き残りを賭けた」
「そうした戦ですな」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「死ぬ気で戦うぞ」
「そして勝つ」
「そうしますな」
「戦になれば」
「橙の旗と具足を血で赤くしてもじゃ」
 島津家のその色をというのだ。
「よいな」
「はい、戦ならば」
「我等薩摩隼人は恐れませぬ」
「全てを賭けて戦いまする」
「ならよい、ではな」
 義久はあらためて話した。
「大友家の動きを見てな」
「そのうえで、ですな」
「あの家が動けば」
「その時は」
「我等も動く、只備えはしておく」
 今でもというのだ。
「特に高城にな」
「あの城にですな」
「兵を置きますな」
「今から」
「あの城は小さいが要地じゃ」
 日向におけるそれだというのだ。
「あそこを固めればな」
「日向に攻め込まれても」
「大友家を足止め出来ますな」
「あちらで」
「そしてあの辺りは我等もよく知っておる」
 高城の辺りはというのだ。
「耳川の辺りも含めてな」
「ではあの地で戦うこともですな」
「考えていきますな」
「大友家と」
「そうする、何ならな」
 ここでだ、義久は。
 その目の光を強くさせてこう言った。
「釣り野伏せも使うか」
「あれをですか」
 家臣達は義久の言葉に驚いて声をあげた。
「まさかと思いますが」
「あれを使われますか」
「当家の切り札」
「あの秘策を」
「そうするか」
 家臣達に言うのだった。 
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