戦国異伝供書

　　　　　　　　　　　　　　　　第百二十一話　　耳川の戦い
　島津家は大友家の動きを注視していた、するとそれは彼等がそうしてくるのではという様なものだった。
　義久はそれを見て家臣達に話した。
「やはりであるな」
「はい、大友家はこちらに来ますな」
「日向に」
「伊東家を助けるという大義名分を掲げ」
「そうしてきますな」
「そうであるな、ならばな」
　義久は家臣達に主の座からさらに話した。
「我等としてはな」
「戦いますな」
「その大友家の軍勢を迎え撃ち」
「そのうえで、ですな」
「退けますな」
「そうする、大友家がどれだけの大軍で来ても」
　それでもというのだ。
「打ち破るぞ」
「では兄上」
　家久が言ってきた。
「この度はそれがしも」
「うむ、出てもらう」
「左様ですな」
「この度は島津家にとっての生きるか死ぬかの戦になろう」
「そこまでの戦ですな」
「だからな」
　それ故にというのだ。
「我等も総力を集めてじゃ」
「戦いますな」
「そしてじゃ」
　そのうえでというのだ。
「全力で戦うぞ」
「さすれば」
「お主にも出てもらい」
　そしてというのだ。
「又四郎と又六郎にもじゃ」
「我等もですな」
「出陣ですな」
「そしてわしもじゃ」
　義弘と歳久にも告げた。
「出陣する」
「兄上もですな」
　義弘が応えた。
「出られ」
「戦う、そして敵を破るぞ」
「そうされますな」
「必ずな、日向は我等の国」
　元より守護を任せられた国の一つだというのだ。
「大友家より知っておるわ」
「それも遥かに」
「その日向で戦えばな」
「勝てますな」
「大友家がどれだけの数で来てもな」
「それでも」
「それが出来る、ただ」　
　ここで義久はこうも言った。
「織田家がどう動くかであるな」
「はい、大友家は織田家と親しいです」
　歳久が応えた。
「盟友と言っていいまでです」
「親密な間柄であるな」
「そうです、だからですな」
「大友家を助けてな」
「この戦にですな」
「関わって来るやもと思っておるが」
「それはないかと」
　歳久は鋭い目で答えた。
「今の織田家は」
「戦どころではないか」
「政に全てを注いでいますので」
　それ故にというのだ。
「兵はです」
「出せぬか」
「はい」
　そうだというのだ。
「実際は大友家にもです」
「戦をじゃな」
「止めたいのでしょう、ですが言っても」
　大友家に九州での戦をこれ以上はせぬ様に言ってもというのだ。