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イヌカレたのはホノオのネッコ

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第肆話「ジョーカー」

 
前書き
今年初の更新ですね。

YouTubeの炎炎全話無料配信、5月9日までらしいので早めに更新進めないとなぁ。
この機会にフォロワーさん達ももっと炎炎観て欲しい。マジで面白いから。

今回はダークヒーローおじさん、もといジョーカー登場。
今年もタマキちゃんのラッキースケベられは絶好調だよ!お楽しみに! 

 
開始の合図から10分ほど経過した後、俺は着々と障害物を乗り越え進んでいた。

道の途中に炎が噴き出したり、壁や柱、天井が崩壊したりと障害物が多数あった。道こそ入り組んでいるものの、どれも予想の範疇を出なかった。

……が、あれは流石にズルいだろ。

競技開始の合図の直後、新人消防官達は一斉にスタートした。
ところが、その中に1人とんでもないやつがいた。

俺の親友、森羅日下部である。

第三世代能力者である彼の能力は、両足から炎を噴射することであり、空を飛ぶことが出来る。

つまり……

『ヒーローはいつだって、空から登場だぜ』

一人だけ空飛んで障害物を全部避け、一足お先に上の階へと到達しやがったよあの野郎!!

ルール違反ではないが、大会の趣旨に沿っているかと言われると……いや、でも現場で厄介な障害物を無視して要救助者の元へと辿り着けるのは、消防官として見ればとても理に適ってるし……。

うーむ……腑に落ちないけど文句の付けようはないな……。

だが、俺だって負けられない。
今のところ、他の消防官達を追い抜いてトップを独走しているのは俺だ。
このまま進めば、森羅はすぐに見えてくるだろう。

──その時、空気が揺れた。

(ッ!?爆発音!?)

断続的に音が反響し、壁が振動する。

これも訓練……なのか?いや、何かおかしいような……。

音の聞こえた方向へと足を進める。
一歩進む毎に嫌な気配がひしひしと肌に伝わってくる。

あくまで直感だが、日常的に不幸に苛まれている俺のカンはよく当たるんだ。
それも、危険察知に関してなら人一倍だと自負している。危機回避までは難しいのが難点だけど。

ともかく、この先に何らかの危険が存在するのは間違いない。
それが何なのか、確かめなければ……。

……とその時、右側の壁が綺麗な三角形にくり抜かれた。

「なんだ!?」

思わず構える俺は目を凝らす。
壁をくり抜いて出てきたのは……

「む……なんだ、カヴァスか」

バカ騎士もとい訓練校の同期、アーサー・ボイルだった。

「なんだ、アーサーか……。お前、その呼び方やめろって言ってるだろ。俺にはちゃんと狛司って名前があるんだ」
「フッ……」
「いや、フッ……じゃないだろ!?」

アーサーは基本的に他人を名前で呼ばない。
万年厨二病のアーサーは自らを騎士王と名乗り、先輩方や教官達にさえタメ口かつデカい態度を取るくらいの馬鹿だ。

能力は高温のプラズマで剣を形成するというものであり、普段持ち歩いている十字架型の柄だけの剣には「エクスカリバー」と名付けている。

そんなアーサーから俺が付けられたあだ名こそ、「カヴァス」である。
アーサー王お気に入りの猟犬の名前らしい。

「俺はお前の犬になった覚えはないぞ」
「そんな事よりカヴァス、この爆発音はなんだ?」
「いや聞けよ。無視すんな」

久し振りだが、相変わらず話を聞かないアーサーに一言言ってやろうと思っていたその時、またしても爆発音が響いた。

それも、さっきより音も揺れも大きい。

反射的に身構えた、その直後──

「うわああああああああっ!?」
「え?ええええええわぶぅっ!?」

親方、天井から女の子が……。

「いてて……はー、ビックリしたぁ……」

この声……間違いない、古達ちゃんだ……。

「っ!……この先、嫌な気配が……すごく嫌な危険な香りがする……」
「そいつは犬型の座布団ではないぞ?早く降りてやれ」
「へ?」
「犬じゃねぇ……あと古達ちゃんそろそろ降りて……」

アホのアーサーだが、流石に視界を長時間女の子の柔らかくてデカいお尻が占めてるのは色々と不味い……という気遣いくらいはできる。

アーサーに言われてこちらに顔を向ける古達ちゃん。この後のパターンは、もう読めている。

「はにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!?どうして下にいるんだよ興梠のド変態!!」
「痛い痛い痛い痛い!!ごめんってば!!でも今回俺悪くないでしょ!?」
「その辺にしておけ。そいつは犬型のサンドバッグでもない」
「だから犬じゃねぇ!!」

ポカポカと音が出るくらい俺を叩きまくる古達ちゃん。諌めようとしてるけど相変わらず俺のことは犬呼ばわりのアーサー。

何だこの状況、ツッコミ不在か?

「そ、そんな事より先進むぞ!森羅に何かあったかもしれないんだ!」
「そうだった!行かなきゃ……」
「あの悪魔に心配は不要だと思うが……」

今はこんな事してる場合じゃない。この先で何が起きてるのかを確かめなければ。

音のした方へとしばらく進むと、前方にある広い部屋から煙が溢れていた。

この臭いは……爆煙?
発煙筒から出る煙に比べて明らかに焦げ臭い臭いがする。

「行こうっ!」

すると、古達ちゃんが一人先に走り出した。

「おいっ!」
「待つんだ古達ちゃん!何が起きてるかまだ……」

古達ちゃんが部屋へと入った次の瞬間、シュッと空気を切る音がした。

「危ないッ!!」

俺より先に、抜刀したアーサーが動いた。

エクスカリバーが、古達ちゃんを狙っていたそれを弾き返す。

「今のは……炎のカード?」

カードが飛んできた方向へ目をやると、そこには見知らぬ人物が立っていた。

「ゆっくりしすぎたか……邪魔が来だした」

まるでカードディーラーのような服装に、長い黒髪と黒い帽子。そして左目を白いレースの刺繍が施された黒い布で隠した男が、煙草を咥えて立っていた。

「待たせたな、焔ビト役」
「いやどう見ても違うだろ!?」

キメ顔でそう言ったアーサーにまずツッコミを入れておく。
さっきスタート地点で見た焔ビト役の隊員と明らかに違うだろ!?
そもそも服装からしてどう見ても関係者じゃないぞ、怪しすぎるだろ!!

「アーサー!狛司!競技施設内に不審者が侵入、危害を加えられた2名の隊員が負傷!外の隊長に報告しろっ!!」
「なにっ!?」

森羅の額には切り傷があり、血も出ている。
どうやら本当にアクシデントらしい。急いで報告しなければ……。

だが、このバカ騎士(アーサー)は不敵に笑うと自信満々に言い放った。

「……フッ、嘘をつくな。勝つのは俺だ」
「は?」
「アーサー、森羅は嘘なんて……」

アーサーは俺と森羅の話も聞かず、エクスカリバーを手に不審者へと突っ込んで行った。

「俺が捕まえるっ!!」
「だあああああああっ!バカ騎士ぃぃぃぃッ!!」
「あのバカ!!あーもう、森羅!ここに寝てる2人でいいんだな!?」
「ああ、頼んだ!!」

アーサーが戦ってる間に、焔ビト役と要救助者役の隊員を部屋の隅へと運んでおく。
幸い、息はあるようだ。気絶しているだけらしい。

一方、謎の男はアーサーの剣を全て軽々と避け、笑っていた。

「その剣を振り回して、どう俺を捕まえる気だ?」
「私を、忘れるんじゃねぇぇぇぇぇッ!!」

そこへ、古達ちゃんが猫の如く躍り出る。
猫又の尻尾を伸ばすと、不審者をそのまま縛り付けた。

「捕まえたっ!」

不審者を拘束し、思わず自慢げに笑う古達ちゃん。

いや待て、あの男懐から何か取りだして……ッ!?

俺は反射的に、古達ちゃんの方へと動いていた。
両掌の炎をジェット噴射として、一気に加速する。

「んにゅ?」
「古達ちゃん危ないッ!!」

古達ちゃんを抱え、床に身を投げ出した次の瞬間。

ボンボンボンッ!!

ついさっきまでたっていた場所で、断続した爆発が起こった。
しかもかなり威力の高い爆発、音の正体はこれか!!

「新人大会でここまでするの!?」
「そんなわけあるか!!」
「だから言ってんだろ!競技は中止だ!!」

古達ちゃんもアーサーの言葉を信じていたらしく、驚いた表情で爆煙の先を見つめる。
隣ではアーサーが口を空けてポカーンとしていた。お前はもう少し人の話を聞けこのバカ。

「お前、いったい何者なんだよ!?」

俺の問いには答えず、煙の先で男は、ただ両手指の先に持った小瓶に入った()()()()()を散布しながら笑っていた。

「森羅ァ~、お前がヒーローに拘るなら……ここにいる連中を一人残らず助けて見せろ」
「ッ!?またあの灰っ!?」

灰は流れるように部屋中へと広がっていく。
この灰が爆発を引き起こしていたのは、今見たばかりだ。

灰……粉末……密室……爆発……。

……ッ!?ちょっと待て、確か訓練校で習ったものの中に……。

「何だこれ?」
「灰……?」
「これは……」

アーサーと古達ちゃんが周囲を見回す。

四方を壁に囲まれた部屋……充満した可燃性の粉塵……そして、この場にいるのは黒ずくめの男を含めて第三世代能力者揃い……これは、マズいッ!!

「じゃあな、悪魔。お前がその気なら、この”ジョーカー“の仲間に入れてやる……上手くやれよ?」

それだけ言い残すと、ジョーカーと名乗った男はタバコの煙と共に姿を消した。
ご丁寧にも、煙で『Bye』の文字を描いて。

「チッ……早くここから逃げるぞッ!!爆発するッ!!」
「ええっ!?」
「ッ!?」

俺が叫ぶと、ジョーカーのいた方を見つめていた森羅はハッとなり、気絶している隊員達の元へと駆け寄った。

「この人達は俺が運ぶッ!狛司、アーサーと猫女をッ!!」
「了解ッ!!アーサー、天井を抜け!脱出するぞッ!!」
「騎士に指図していいのは、麗しき姫だけだッ!」

そう言ってアーサーは跳躍し、エクスカリバーで天井を三角に斬り裂いた。

だが、切断されたはずの天井が、5秒経っても落ちてこない。

「フッ……切り口が鮮やか過ぎて落ちてこないぜ……」
「何カッコつけてんだバカぁぁぁぁぁッ!!」

命の危機が迫ってんのにドヤ顔してんじゃねぇよこのバカ騎士はあああああッ!!

「退いてッ!天井を抜くんだろ?」

と、古達ちゃんがアーサーの背中を思いっきり突き飛ばし、切れ目の入った天井の真下に立つ。

「はあああああああッ!たああああああッ!!」

尻尾を勢いよく伸ばし、天井を思いっきり押し上げる。ようやく出口が空いた所で、森羅が一足先に飛び立った。

「2人とも掴まれッ!」
「急げ狛司ッ!!」

既に周囲の灰から灰へと燃焼が伝播し、連鎖爆発を起こしている。
古達ちゃんとアーサーがしがみついた直後、俺は脇目も振らずに両掌を床へと向けて飛び立った。

激しい熱が足元から伝わってくる。
炎には耐性のある能力者と言えど、追いつかれればタダでは済まない恐怖の息吹が轟音と共に迫って来る。

ヤバい……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいッ!!
追いつかれれば爆風で空まで吹き飛ばされ、勢いよく地面に叩きつけられる!!炎熱の影響以外には、能力者も普通の人間と変わらない。確実に死ぬだろう。

死にたくない死にたくない死にたくない!!こんな所で、死ねないんだあああああ!!

「クソッタレッ!!消防官はヒーローなんだよッ!!」

森羅の声が聞こえる。
ああ、そうだな。ヒーローは死なない。ここで生きて帰らなくちゃ、約束は果たせないッ!!

「死んでたまるかあああああああああッ!!」

そして、森羅と俺が天井を抜けたその直後だった。

ドガァァァァァァァァンッ!!

大きな爆発音と共に吹き上がった煙炎が、脱出した俺達を吹っ飛ばした。

振り落とされた古達ちゃんとアーサーが宙を舞い、俺もバランスを崩して落下する。
チクショウ、ギリギリ脱出出来たのに爆発からは逃れ損ねたッ!!

「狛司ッ!アーサーッ!猫女ッ!!」
「たぁぁぁすけてぇぇぇぇあわやわわわわわふえぇぇぇぇん!!」
「南無三……」

手足をバタつかせながら絶叫する古達ちゃん。

こればかりはどうにもならない、と諦めた顔のアーサー。

両肩に気絶した隊員を抱えてるため、俺達を助ける余裕が無い森羅。

凄くマズい状況だ……!

空中で体勢を立て直し、何とか二人を助けないと……。

「古達ちゃん!俺に掴ま──べふぅっ!?」

何かが、俺の額に直撃した。

「はにゃあああああああっ!?何でこんな時に脱げちゃうんだよぉぉぉぉぉッ!!」

目の前には落下の風圧でブーツが脱げて裸足になった古達ちゃん。なるほど、それが俺の顔に飛んで来たのか……。

「不幸dぶわぁっ!?」
「にゃあああああああっ!?コートまで脱げたあああああああっ!?」


そして真っ黒なものに覆われる俺の視界。
今の声からして、おそらく古達ちゃんの防火コート。クソッ、前が見えない!!

前が見えない上に何かこう、脱ぎたてコートの生暖かさが顔全体に!!あとめっちゃいい匂いする……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!こっちは別の意味でヤバい!!

集中が途切れるし、方向感覚も掴めない……。

誰か……誰か、何とかしてくれぇぇぇぇぇッ!! 
 

 
後書き
こんな時に不幸体質が発動しちゃった狛司くん。絶体絶命、どうなる次回!? 
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