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戦国異伝供書

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第百二十話 三州奪還その八

 実際に島津家の軍勢は鉄砲を一斉に放ちだした、すると堀は広く石垣の上にある高い壁も確かな木の門もだった。
 鉄砲の弾を受けていきそうしてだった。
 崩れてきた、義弘はそれを見て兄に言った。
「又六郎の言う通りですな」
「うむ、この城はな」
「鉄砲のことは考えていませぬな」
「鉄砲のない頃に築かれた城じゃ」
「だからこそ」
「それでな」
 まさにその為にというのだ。
「鉄砲がじゃ」
「よく効きますな」
「うむ、ではな」
「このままですな」
「城の壁に門を壊し」
「充分壊してから」
「その上でじゃ」
 さらにというのだ。
「よいな」
「はい、城の中に入り」
「攻めていくぞ」
「わかり申した」
「お主は正門から攻めてな」
 そしてというのだ。
「又七郎は裏門からじゃ」
「攻めて」
「そのうえでな」
「攻め落としますな」
「そうする」
 こう言うのだった。
「その時が来ればな」
「ではその用意もですな」
「するのじゃ、この城を攻め落とせば」
「後の伊東家の城は何でもありませぬし」
「相手も驚くわ」
 高原城が落ちればというのだ。
「だからな」
「高原城をですな」
「攻め落とすぞ」
 これからとだ、こう言ってだった。
 義久は二人の弟にそれぞれの門から攻めさせた、無数の鉄砲に撃たれ崩された高原城は為す術もなく攻め落とされ。
 城の者達は残された門から這う這うの体で逃げ出していった、義久は逃げる彼等を見て悠然として言った。
「今はな」
「はい、あの様にしてですな」
「逃げるに任せますな」
「そうしますな」
「あの者達が当家の力を騙ってくれる」
 義久はその彼等を見て弟達に話した。
「伊東家の他の城にな」
「そうなってですな」
「他の城は恐れ」
「そしてですな」
「進んで降る様になる、城に籠ってもじゃ」
 例えそうしてもというのだ。
「攻め落とされるとなればな」
「降りますな」
「籠っても無駄だとわかれば」
「もうそれだけで」
「それを見せる戦になった」
 この度の城攻めはというのだ。
「だからよかった、ではな」
「これよりですな」
 歳久は長兄に確かな笑みで応えた。
「それぞれの城に使者を送り」
「降るならそのまま当家に迎え入れる」
「そうしますな」
「降る者は拒まぬ」
 義久は笑って述べた。
「当家はな」
「だからですな」
「それはよい、しかし降らぬなら」
「攻める」
「そうする、そして攻めればな」 
 その時はというと。 
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