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八条学園騒動記

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第五百九十五話 正門を去ってその九

「何でも当時の殷の銅器は質がよく」
「弱っている国のものじゃなかったの」
「紂王の暴政でな」
「そうだったのね」
「だが国が滅んでな」
「滅ぼした人達にそう書かれたのね」
「そうした説がある」
 アルフレドはビアンカに話した。
「実はな」
「そうなのね」
「何しろ四千年以上前のことだからな」
「事実はわからないのね」
「そうだ」
「成程ね」
 ビアンカは自分の兄の言葉に頷いた。
「歴史は書かれていることと事実は違う場合があるのね」
「時としてな」
「そうなのね」
「後になって捏造というかな」
「無茶苦茶書かれることもあるのね」
「歴史は勝者が作る」
 古来より言われてきた言葉だ。
「だからだ」
「それでなのね」
「勝った者が倒した者を意図的に悪く書いてもだ」
「それが歴史になるのね」
「そこにどれだけ創作が入ってもな」
 それでもというのだ。
「それが歴史になる」
「そういうことなのね」
「それで紂王もな」
 暴君と言われている彼もというのだ。
「どうもな」
「その実は、なのね」
「違うという説がある」
「そうなのね」
「そうだ、だがよく調べるとな」
 文献なり遺跡なりをだ。
「わかってくる」
「実際はどうだったか」
「あのローマ皇帝ネロも実は暴君ではなくだ」
 長い間暴君の代名詞と言われてきたがというのだ。
「実はそれ程酷い皇帝ではなかった」
「そうだったの、あの人も」
「確かに頭に血が上ると処刑もしたが」
 それでもというのだ。
「市民の為に常に心を砕き国家を守り奴隷に寛容で文化に造詣があった」
「あれっ、結構いい皇帝?」
「少なくとも非道であったかというと」
 暴君としてというのだ。
「違った、競技も皇帝の証月桂冠を外して参加した」
「一選手として参加したの」
「正々堂々とな」
 ただ競技の優勝は開催側がゴマを擦って多くした様だ。
「そうもしていた」
「かっとしてもなのね」
「そうした人だった、だが弱点はあった」
「弱点?」
「軍隊を送って戦わせることは出来たが」
 それは出来たがというのだ。
「軍歴がなく自分で軍隊を率いて戦うことは出来なかった」
「ああ、指揮官ではなかったの」
「この当時これはかなりまずかった」
 ローマ皇帝としてはというのだ。
「皇帝自ら戦うことがローマでは多かったからな」
「ネロはそれが出来なくて」
「それが弱点となって叛乱が起こっても自ら出陣出来なくてだ」
「叛乱を抑えられなくて」
「自決に追い込まれた」
「それで悪く書かれたのね」
「国全体は守れてもな」
 つまりローマの国家戦略は理解していたのだ、ネロはこのことから見ても愚かな人物ではなかったと言える。 
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