戦国異伝供書

「見事な城をです」
「築かれるか」
「その様です、江戸にもです」
「東国にもか」
「そちらにもとか」
「ううむ、そうか」
　義久はその話を聞いて唸った。
「まさに天下の東西をな」
「一つにされて」
「そのうえでな」
「しかと治められるのですな」
「そうお考えであるな」
「そうなのですな」
「もう織田殿の天下で決まった」
　このことはというのだ。
「完全にな」
「このことは」
　歳久も言ってきた。
「まさにかと」
「そして当家はな」
「織田家と争うつもりはないですね」
「天下を望んでおらん」
　義久ははっきりと言い切った。
「その様なことはな」
「それでどうして織田家と争うか」
「それはない、若し織田家が来れば」
「その前にですな」
「果たすべきことを果たし」
　そしてというのだ。
「それを認めてもらう」
「そうしますな」
「それでよい、織田家が天下人になるなら」
　それならというのだ。
「問題はない」
「左様ですな」
「だからじゃ」
　それでというのだ。
「三国を手に入れれば」
「それでよい」
「ではことが整えば」
　家久が言ってきた。
「その時は」
「伊東家を攻めてな」
「日向もですな」
「当家の手に戻すぞ」
「さすれば」
　家久が応え他の弟達も続いた、そうしてだった。
　義久は首実検が終わるとその後は戦で死んだ者達を弔い薩摩に戻った、その後ですぐに伊東家との戦の用意に入った。


第百十九話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・１０・２３