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戦国異伝供書

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第百十九話 悪人達の絵その九

「我等は近所の村の者達から色々話を聞いていてです」
「伊東家の軍勢のことはわかっておる」
「それもよく」
「だからであるな」
「はい、ですから」
「そのことを使うな」
「おそらく敵はまた加久藤城を攻めます」
 歳久も言ってきた。
「それがしが先に話した通りに」
「そしてであるな」
「今度は守りを一層固めていますので」
「また攻め落とせぬな」
「そうなります、そして」
「そこでじゃな」
「攻めましょうぞ」
 こう義久に話した。
「それがしの話通りに」
「はい、それでは」
「まずは伊東家にあの城を攻めませようぞ」
 こう言ってだった、義久は三百の兵をそれぞれの家臣達に率いさせて城から出してだった。その中には家久もいた。そのうえでだった。
 敵が加久藤城を攻めるのを待った、すると実際にだ。
 伊東家はその城を攻めた、ここで義久は兵を出した。義弘を先陣として自身は歳久を伴って本陣を率いて出陣した。そうして。
 兵を進める中でだ、彼は言った。
「城を攻めている時にであるな」
「我等が動くとです」 
 義久の傍にいる歳久が応えた。
「やはりです」
「攻めあぐねておるからな」
「幾ら我等の兵が少なくとも」
「退くな」
「そこで、です」
 まさにというのだ。
「我等はです」
「攻めるな」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうします」
「それで勝てるな」
「確かに我等の兵の数は少ないですが」
「地の利があるしな」
「策もあります」
 その両方がというのだ。
「ですから」
「それで、であるな」
「勝てます」
 まさにという返事だった。
「必ず」
「では」
「我等はこのまま攻めましょう、そして今頃です」
「城を攻めておる敵の周りにであるな」
「はい、百姓達がです」
 近くの村々の彼等がというのだ。
「のぼりを立てています」
「敵の周りにな」
「それを見てです」
 まさにというのだ。
「敵は余計にです」
「実は我等が大軍と見てな」
「退くことを考え」
 そしてというのだ。
「決めますので」
「そうであるな」
「はい、退きます」
「そこを攻めるな」
「地の利に疎いので退いても」
 そうしてもというのだ。
「その足は遅く」
「伏兵にもな」
「遭います、そうしてその敵をです」
「我等は追ってな」
「攻めます、薩摩隼人は足も速いですし」
 駆け足で随分進んでも疲れない、このことも薩摩隼人の強さの一つだ。
「そしてです」
「地の利もある」
「ですから充分追いつけますし」
「伏兵と共にであるな」
「敵を攻め」
 そしてというのだ。
「勝ちましょうぞ」
「それではな」
 義久は歳久の言葉に頷いた、そうして敵に向かいながら情報を逐一聞いていた。すると歳久の読み通りにであった。 
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