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瞳の中の想い

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第五章

「そして人間とは何か」
「そう考えているから」
「私は話しているのだ」
「そうなの」
「これは当然のことなんだ」
 こう娘に言うのだった。
「だから気遣いは無用だ」
「そうなの」
「お前が人間であることは確かなんだ」
「身体がアンドロイドであるだけで」
「お前は人間なんだ」
 紛れもなくというのだ。
「だからだ」
「それでなの」
「お前は心配しなくていい」
「そうなの」
「当然のことだからな」
 娘に微笑んだまま話してだった。
 博士は世間に対して彼女のことを話し続けた、そうして理解者も増やしていきおかしな考えを持つ者達に対しては。
 安全を計った、星はミドリを壊そうとする暴漢達の存在を聞いて博士に話した。
「壊すとかですね」
「神がどうとか言ってな」
「命を生み出すのは神の為すこととか」
「それは違う」
 博士は星に答えた。
「それはな」
「神の摂理にもですね」
「私は反していない」
 断じてというのだ。
「このこともだ」
「言えますね」
「淀みなくな」
 まさにというのだ。
「言える、私は彼女の父だからな」
「そう言えますね」
「そして妻は私の母だ」
「親が子を為した」
「そうなのだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「私は神の摂理にもだ」
「反していませんね」
「フランケンシュタインもな」
 この小説もというのだ、尚作中の人造人間はモンスターといってフランケンシュタインとは彼を造り出した博士の名前だ。
「彼も然りだ」
「人間の心がありましたね」
「色々とあったが」
「そうでしたね」
「そして博士の子供だった」
「そうなりますね」
「紛れもなくな」 
 まさにというのだ。
「彼はだ」
「博士の子供でしたね」
「生み出されたのだからな」
「そしてミドリも」
「博士のですね」
「私の娘であり妻の娘だ、そして家族は血筋でもなるが」
 それと共にというのだ。
「愛情によって育まれてだ」
「そうしてですね」
「なってもいくものだ」
「ですね、親でも愛情がないと」
「生みの親でもな」
「家族にならないですね」
「子供を捨てた親が親か」
 冷徹な声だった、博士の今のそれは。
「果たして」
「そう言われますと」
「ただ血縁のものでだ」 
 それに過ぎずというのだ。
「親ではないな」
「確かにそうですね」
「親はな」
「それは血によってなるものでもありますが」
「愛情によってだ」
「育まれていきますね」
「そうだ、だから私は親としてだ」
 その立場でというのだ。
「これまでミドリのことを話してきたし」
「護ることもですね」
「していく」
 そうしていくというのだ。
「これからもな」
「そうですか」
「そして神の摂理に反するものでないこともな」
「お話していきますか」
「護りながらな」
 こう言って暴漢達から彼女を護りそのうえで神の摂理に反するかどうかも話していった。そうして理解者も増やしていった。 
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