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詰めが甘い

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第四章

「僕が至らない為に」
「いいさ、そうしたところも好きだからな」
 堀江は申し訳なさそうな顔の夏織に笑って応えた。
「俺は」
「そうなのか」
「可愛いからな」
「か、可愛いのか僕が」
「そうさ、だから一緒にいるんだよ」
 思わず真っ赤になった、黒い肌でもそれがわかる位になった夏織に堀江は笑ったままそのうえで返した。
「俺もな」
「そうなのか」
「当たり前だろ、可愛いからな」
 それでとだ、また言うのだった。
「俺から告白しただろ」
「そうだったな」
「そういうことさ、じゃあ今度のデート何処行くんだ?」
「駅前の百貨店はどうだ」
 夏織は自分からその場所を言った。
「あそこに」
「ああ、百官店か」
「水着を買いたいんだ」
「シーズンじゃないだろ」
「だからかえって売れ残りが安いからな」
「それでか」
「行きたい、いいか」
 堀江のその顔を見て言う。
「君と」
「宜しくな」
 堀江はここでも笑顔だった、そうしてだった。
 二人は休日デートを楽しんだ、そして夏織の読み通りシーズンでないので売れ残りが安く売られている水着でこれはというものを選んでだった。
 試着の後で買ったがここでだった。
 夏織は自分の財布を見て言った。
「予算が足りない」
「幾つだよ」
「十円だ」
「仕方ねえな」
 堀江は夏織のその言葉にくすりと笑ってだった。
 自分の財布から十円出した、それで夏織に手渡した。
「ほら、これでいいか」
「済まない」
「シーズンでないから売れ残りが安く売られているところを攻めたのはいいけれどな」
「予算が足りないとはな」
「それも十円な、本当にお前はな」
「詰めが甘いか」
「ならそこはな」
 その詰めが甘いところはというのだ。
「任せろよ」
「済まないな」
「いいってことさ」
 堀江はここでも笑った、そうしてだった。
 夏織が水着を買うのを見た、そうしてまた笑顔になった。


詰めが甘い   完


                     2020・7・17 
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