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詰めが甘い

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第一章

               詰めが甘い
 黒田夏織は男女混成野球部、通っている高校のそれでキャッチャーをしている。背は一五〇程でアフリカ系アメリカ人の母の血で肌の色は黒い。黒髪はアジア系のさらりとしたショートのもので大きな黒い目と小さな赤い唇を持っている。
 彼氏がいて相手は同じ学校で同じ部活でピッチャーをしている堀江浪二がその相手だ。堀江は背は一七八位ですらりとしている。日焼けした肌に細く小さな目で黒髪を短くしている。
 カップルでバッテリーを組んでいる、勿論夏織が堀江をリードしているが。
 堀江は部活が終わって夏織と一緒に帰る時に彼女に言った。
「今日監督言ってたな」
「あのことか」
「ああ、お前のリードはな」
「普段はいいんだな」
「普段はな」
 普通の時はというのだ。
「試合の時もな」
「そう言っていたな」
 ここで夏織は胸を張った、白のブラウスの膨らみは小さい。青いプリーツスカートでソックスも白である。
「監督は」
「ああ、けれどな」
「それでもと言っていたな」
「試合のいつもな」
「肝心な時にだな」
「迂闊なボールを出させるって言っていたな」
「うう、そのことはだ」
 夏織は苦い顔になって答えた、横にいる彼に。
「僕もだ」
「気にしているか」
「そうだ」 
 こう堀江に返した。
「自分でもな」
「それならな」
「それなら?」
「バッテリー組んでるからな」
 それでとだ、堀江は夏織に言った。
「肝心な時は俺を頼ってくれるか」
「君をか」
「ああ、そうしてくれるか」
 こう言うのだった。
「そうしてくれるか」
「僕はキャッチャーだ」
 夏織はそのポジションから言った。
「そして六番バッターだ」
「俺が五番でな」
「君をリードしてナインに指示も出してだ」
「俺の後で打ってくれるな」
「君を支えるのが仕事だ」
「それでもな、バッテリーで前の打順だからな」
 それでというのだ。
「俺でよかったらな」
「君が僕を支えてくれるのか」
「野球は全体でやるものだろ」
「そうだ、九人どころかな」
 夏織は持論を述べた。
「チーム全体でだ」
「やるものだよな」
「カープやソフトバンクを見ることだ」
 こうしたチームをというのだ。
「チーム全体でやっているな」
「そうだよな」
「ソフトバンクは優れた人材を次々と送り出してだ」
「巨大戦力って言われてるな」
「阪神もそうだな」
「ピッチャーだけはしっかりしてるな」
「そうだ、先発と中継ぎ抑えが噛み合ってだ」 
 そうしてというのだ。
「いつも十二球団屈指の投手陣だ」
「打線もそうだったらな」
「全くだ」
 二人で伝統的に打たない打線についてはこう述べた。 
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