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人面猫から

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第一章

                人面猫から
「私は猫ですが」
「嘘吐け」
 黒猫の身体、耳までそうで顔だけが中年親父のものであるその猫にいきなり言われてだった、常盤三日月は思わずその猫に言い返した。
「お前普通の猫じゃないだろ」
「いえ、猫です」
「そんな猫いるか」
 公園で部活帰りベンチに座って自動販売機のコーラを買って飲んでいると前に出て来たその明らかに普通の猫でないその猫に言った。
「おっさんの顔して日本語喋る猫がよ」
「あれっ、おかしいですね」
 猫は常盤の言葉に首を傾げさせた。
「天界では猫はこうした姿と聞いて変身して下りてきたのですが」
「今変身って言ったな」
 常盤は猫のその言葉を聞き逃さずに突っ込みを入れた。
「そうだろ」
「貴方耳ざといですね」
「普通聞き逃すか、というかお前今天界って言ったな」
 常盤はその言葉に突っ込みを入れた、金色に染めた髪の毛をスーパーリーゼントにしていて目は細く鋭い。背は一八〇あり引き締まっている。外見は古い不良のそれだが実は授業はしっかり出ているしバスケ部も真面目にしている。勿論煙草も吸わない。
「天使か?ひょっとして」
「はい、私は智天使のヒヤマエルといいます」
 猫は常盤に畏まって答えた。
「神に仕える天使の一員です」
「やっぱり普通の猫じゃなかったな」
「私の正体を瞬時に見破るとか貴方やりますね」
「だからおっさんの顔して日本語喋る猫がいるかよ」
「ううむ、私の変装は完璧な筈なのに」
「だから違うって言ってるだろ」
 コーラを飲みながら突っ込みを入れた。
「天使ってのは馬鹿なのかよ」
「馬鹿とは失礼な、私は天使の階級でも二位にある智天使ですよ」
「それでもその姿で猫って言うには無理があるぞ」
「情報に齟齬があったのでしょうか」
「その情報どの情報なんだよ」
「ある漫画からですが」
「どの漫画だよ」
 そもそもそのことが気になった。
「人間の顔をした猫とかな」
「さて、何の漫画だったか」
「それもわからねえのかよ、それで何で俺に話しかけてきてるんだ?」
 常盤は猫を自称していた天使に問い返した。
「俺は浄土真宗だから勧誘はお断りだね」
「実は世界を救って欲しいのです」
「世界を?」
「はい、実は今世界を魔王が征服しようとしています」
 天使ヒヤマエルは常盤に話した。 
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