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自分に勝て

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第一章

                自分に勝て
 加藤夕実は強い。
 警察官の父に鍛えられている為兎に角強かった。
「高校生じゃねえぞ」
「あの強さはもう違うだろ」
「プロレスラー並だろ」
「滅茶苦茶強いぞ」
「身体も柔道も黒帯でな」
「合気道も有段者で」
「プロレスもしてるしな」
 だからだというのだ。
「物凄く強いぞ」
「あんなのと戦って誰が勝てるんだ」
「十人の不良が喧嘩売って瞬殺だったんだろ」
「えげつない強さだからな」
「外見は兎も角として」
 黒の髪の毛は短くしていてきりっとした顔立ちである、眉は細く整っていて眼の光は強い。背は一七〇あり引き締まった身体をしている。美形と言っていい。
「あの強さはないぜ」
「男よりもずっと強いな」
「もう加藤に勝てるのいないだろ」
「この辺りじゃいないな」
「身体能力もずば抜けていて」
 身体測定ではどの能力も男顔負けである、このことも誰もが驚きそして勝てないと脱帽することである。
「それで格闘の訓練も受けている」
「それじゃあ不良が十人でも負けるだろ」
「マシンガン持っても勝てないだろうな」
「戦車でもないとな」
「しかもな」
 夕実を知る者はさらに話した。
「交際は自分に勝ってからとかな」
「自分に勝った奴でないと駄目とかな」
「無理に決まってるだろ」
「普通の高校生がプロレスラーに勝てるか」
 そもそもというのだ。
「十人の不良瞬殺したんだぞ」
「そんな奴に誰が勝てるんだ」
「絶対に無理だぞ」
「結局誰とも付き合いたくないんだろ」
「それで言ってるんだろ」
「そうな」 
 多くの者がそう思っていた、だが。
 ここで名乗りを挙げる者がいた、その彼はというと。
 河原崎直哉、細面で小さくきりっとした目と太い眉を持っている。黒髪を短く刈っていて背は一七七位できりっとした顔立ちと体格である。夕実と同じクラスで学年一の成績と芸術センスで知られている。
 その彼がだ、周りにこう言ったのだ。
「俺は告白するからな」
「加藤にか」
「そうするんだな」
「あの娘に」
「実はタイプなんだ」
 だからだというのだ。
「告白するな」
「おい、勝てるのかよ」
「あの加藤に勝てるのかよ」
「相手は強いなんてものじゃないぞ」
「プロレスラー並だぞ」
「マシンガン持っていても勝てないぞ」
「あれは化けものだぞ」
 周りは誰もが無理だと言った。
「勝てる筈ないだろ」
「身体能力は男顔負けでな」
「それ空手も合気道も柔道も有段者だぞ」
「闘って勝てる奴がいるか」
「十人がかりでも駄目だったんだぞ」
「いや、大丈夫だ」
 河原崎の言葉は変わらなかった。
「俺は彼女に勝てる」
「だから無理だっての」
「波の人間に勝てる相手じゃないぞ」
「勝ちたいなら戦車に乗って挑め」
「自衛隊に頼んで来い」
「自衛隊に言わなくてもな」
 それでもとだ、河原崎はまだ言うのだった。 
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