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Fate/WizarDragonknight

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アマゾン態

 アマゾンネオ___否、それはもうアマゾンネオとはことはできなかった。
 触手を動かすごとにまき散らされていく、生物をアマゾンにする体液。今はウィザードの姿のおかげで助かっているが、生身ならどうなるか分かったものではない。

「ドラグレッダー!」

 隣の龍騎の声に、倒れていた赤い龍が反応した。アマゾンへ火を吐きながら宙を泳ぎ、触手を焼き切る。

「うわっ!」

 ウィザードたちは地面に落ちる。
 自らの身体の一部を欠損したというのに、アマゾンは一切動じない。それどころか、ドラグレッダーを敵と定め、触手を一斉に発射した。

「ドラグレッダー!」
「_________!」

 吠えるドラグレッダーは、火炎で触手に対応しながら、病院の広い吹き抜けを縦横無尽に泳ぎ回る。やがてしびれを切らしたアマゾンは、ジャンプにより直接ドラグレッダーに肉薄した。

「________________!」

 六本の拳が放たれるが、それをタダで受けるドラグレッダーではない。柔軟な体を動かしてそれを回避、むしろアマゾンの蒼い肉体に炎を浴びせていく。
 だが、六本の腕という数は、ドラグレッダーにとっても不利となる。躱しきれず、弾丸のような拳を浴びるのも一回や二回ではない。

「_____________!」

 ドラグレッダーは咆哮により、アマゾンの動きを遮る。距離を置き、追撃に来る触手をその尾の刃で斬り裂いていった。
 だが、触手を使い、吹き抜けから各フロアの柱を使い、ドラグレッダーを追跡する。

「っ……!」

 ドラグレッダーを援護しようと、ウィザーソードガンの銃口を向ける。
 あの青い怪物へ狙撃……

(できるわけがない……!)

 あの怪物が千翼だと考えると、引き金を引くことができなかった。
 だが、その間に、アマゾンはドラグレッダーの胴体を捕まえる。
 ドラグレッダーは抵抗するために、アマゾンの肩を食らい、壁に投げ飛ばす。
 ドラグレッダーはさらに、容赦なく炎を浴びせるが、アマゾンもそれで負けるはずもなく、ドラグレッダーへ反抗した。
 炎と拳。
 ウィザードたちの頭上で行われるそれは、怪物同士の戦いだった。
 だが、戦いはやがてアマゾンの方に傾いていく。だんだんドラグレッダーの被弾率が上がり、やがては地面にその身を投げ出すこととなった。
 さらに、アマゾンは地上に着地。

「!」

 さらに、アマゾンは全身より触手を放つ。それは視界全てを斬り裂き、ウィザード、龍騎、友奈にも大ダメージを与えていく。

「ぐあっ……!」

 変身解除する三人へ、アマゾンがじりじりと距離を詰めてくる。抵抗しようとも、身を引き裂く痛みに動けなかった。
 だが。
 突如として、アマゾンの体が動きを止める。思い出したかのように呻きだし、全身の筋肉が痙攣していく。

「____……う……あ……」

 やがてアマゾンの身体より、白い煙が吹きあがる。まるで人がアマゾンになるのと同じようなものだが、それは逆に、アマゾンを人のシルエットに戻すものだった。
 やがて、煙の中から現れたのは、ふらつきながら何があったのか理解していない顔の千翼だった。

「こ……これって……」

 千翼はまるで記憶がないかのように、周囲を見渡している。やがて、傷ついたハルトと友奈を見て、

「俺……俺がやったの……?」
「待って……」
「俺が……俺が……!」

 千翼は足元に円状に広がるアマゾンの体液を見て、頭を抱える。

「あああああああああああああああ!」
「千翼……くん!」

 ハルトが止めるよりも早く、悲鳴とともに千翼は階段へ逃げて行った。

「待って……千翼くん……」

 千翼を追いかけようとするハルトの前に、アマゾンたちが道を塞ぐように湧いてくる。

「まだこんなにいるのか……っ!」

 変身しようと指輪をするが、その前にアマゾンたちが押し寄せてきた。

「ハルト!」

 だが、そのアマゾンたちを真司が食い止めた。

「真司さん!」
「おりゃっ! 大丈夫だハルト! ここは俺に任せて先に行け!」
「でも……」
「このっ! ほら、友奈ちゃんも!」
「い、いいの?」

 友奈もアマゾンたちと格闘する真司へ驚きの眼差しを向けている。
 だが真司は、友奈を立たせ、ハルトの方へ背中を押す。

「真司さん!」
「大丈夫だ!」

 真司はサムズアップをしながら、その腰にVバックルを付ける。アマゾンたちの攻撃をいなしながら、腕を左上に流す。

「変身!」

 真司が鏡像とともに龍騎となる。アマゾンたちを階段に通すことなく、元人間たちを食い止めていく。
 ハルトは龍騎の背中に感謝しながら、階段を駆け上り、要塞のような病院内部を進んでいった。



「千翼君!」
「千翼くん!」

 千翼の後を、ハルトと友奈が追いかける。二階。三階。だが、大きく引き離された千翼の姿はどこにもない。

「どこに行ったの……?」

 四階の踊り場で、友奈は廊下と上の階を交互に見ていた。

「多分この階じゃないな。孤児院だとしたら、最上階だ!」
「最上階……」

 友奈が階段を駆け上がっていく。ハルトも大きく飛び越えながら、階段を登っていく。
 その時。

「うわっ!」

 踊り場で待機していたのか、ハゲタカの姿をしたアマゾンに首を掴まれる。そのまま階段より六階の廊下へ押し倒された。
 眼球を狙って指で付いてくるハゲタカアマゾンの腕を受け止めるハルトへ、友奈が引き返そうとする。

「ハルトさん!」
「行って! 友奈ちゃん!」

 拘束を振りほどき、生身で蹴りを入れながらハルトは叫ぶ。
 迷い気味に階段を急ぐ友奈を見送りながら、ハルトはウィザードライバーを起動させた。

「変身!」
『ハリケーン プリーズ』

 再び接近を図るハゲタカアマゾンの顔面を蹴り飛ばし、すぐに指輪を取り付ける。。

『チョーイイネ キックストライク』

 スピードに優れる必殺技。緑の弾丸となったウィザード最速の一撃は、ハゲタカアマゾンの上半身を吹き飛ばした。

「……」

 人間の死に方ではない。残ったハゲタカアマゾンだったものを見下ろしながら、ウィザードはハルトに戻る。

「もう……ここには、アマゾンしかいないのか……?」

 クトリは無事なのだろうか。
 彼女と千翼がいる上の階へ行こうとすると、物音に足を止めた。

「またアマゾン?」

 さっきまでの騒ぎに一切気付かなかったのか。近くの病室から、物音が聞こえる。
 その方向に向けていると、やがて物音は話し声であることを知ると安堵した。
 周囲が血まみれになっているのに対し、その部屋はほとんど綺麗な状態だった。ゆっくり扉を開けると、そこにはまだ無事な病人の姿があった。

「生き残りがいた……」

 喜びを隠しきれず、ハルトは部屋に入る。
 入院していた少年___多分中学生くらい___は、静かに窓の外へ向けていた顔をこちらに向けた。
 ハルトの姿を見て一瞬引き攣った表情をした彼を、ハルトは安心させるように宥める。

「あ、大丈夫だよ。俺はアマゾンじゃない。君たちを助けに来たんだ」
「助けに……?」

 ハルトの言葉に、少年は半信半疑ながら安堵の息を吐いた。

「あれ? この前の大道芸人?」

 その声は、ベッドではなく、入口近くより飛んできた。青い髪の少女は、今にもつかみかかろうという姿勢で固まっている。最初ギョッとした表情をしていたが、ハルトの姿にほっとしていた。

「君は確か……美樹さやかちゃん……だったっけ?」

 以前まどかの友人ということで紹介された顔。さやかは、ハルトが入ったと同時に扉を閉めた。

「大道芸人さん……あんた、その体……」

 引き攣った顔のさやかは、アマゾンたちとの戦いで傷ついた体を指さす。
 ハルトは笑いながら、

「頑張って切り抜けてきた。でもよかった……無事で」
「外、アマゾンでいっぱいでしょ? どうやって?」
「それは脱出したあとで教えてあげる。大丈夫。安全に逃げられるから速く逃げよう」
「う、うん……行こう、恭介。……あれ?」

 恭介に首を貸すさやかが首を傾げる。同時にハルトも、妙な音に振り向いた。
 何かが刺さった音。床に、小さな黒く、丸い……タネのようなオブジェが突き刺さっていた。

「あんなもの、あったっけ?」

 さやかがそんな言葉を言った直後。

 空間が、ぐにゃりと歪みだした。

「え?」

 白と、汚れた黒赤が、徐々に斑色に染まっていく。やがて病室は、完全に人工物ではない別物___むしろ、前回の赤黒の結界に近い___へ変貌した。

「なっ?」

 やがてバラ園のようになったその場所で、すぐ近くに現れた巨大生物。ピンクの体、蝶の翼。緑の滴る顔には、無数のバラが植え付けられている。
 アマゾンでもファントムでも、ましてやサーヴァントでもない謎のそれは、その巨体でハルト、さやか、恭介を押しつぶそうとした。

「う、うわあああああああ!」
「変身!」
『ランド プリーズ』

 すさかず土のウィザードに変身、その巨体を両手で受け止めた。その重量に、力自慢のランドスタイルでも旗色が悪くなる。

「おりゃあああ!」

 ウィザードは、張り手で怪物を突き飛ばす。
 窮屈な病室の広さをみうしなうほどの 広大な結界の中、怪物は蝶のように舞い、蜂のように攻め立てる。

『フレイム プリーズ』

 フレイムスタイルで攻撃を回避し、その顔面にスラッシュストライクを叩き込む。図体が大きい分ダメージも軽微なようだが、それでも痛みにより大きく後退させることができた。

「よし……勝てない相手ではないな。キックストライクでいけるか?」

だが、そこまで魔力が持つだろうか。そんな心配をしていたら。

「うわあああああああ!」

 突如として響いた、さやかの悲鳴。
 振り向けば、まるで綿のような小さな怪物たちが、二人に襲い掛かっていた。まるでひげのようなものを生やした植物のようなそれらは、全身を震わせながら動いていた。

「手下がいたのか!」

 ソードガンで発砲するも、そんな豆鉄砲では怪物たちの勢いは止まらない。

『コネクト プリーズ』

 コネクトの魔法陣をさやかと恭介の前に出現、ソードガンで綿の怪物たちを切り裂いていく。

「走って!」

 ウィザードの言葉に、さやかが恭介の手を引いて逃げる。だが、群なす怪物たちの方が速い。

「くっ……」

 ウィザードは二人を優先し、バラの怪物へ背を向けた。だが、それは敵へ油断する以上の悪手である。

『________』

 バラの怪物の唸り声に気付いた時にはもう遅い。その重量がウィザードの背中に炸裂、その体がさやかたちとは明後日の方向へ吹き飛ぶ。

「ぐあっ……」

 ダメージは小さい。だが、すでにさやかたちとの間にはバラの怪物が入っており、助けにいくのは難しい。
 さらに悪い状況は重なるもの。逃げているさやかと恭介の前に、あの妖精が現れた。

『やあ。初めまして。美樹さやか』
「キュウべえ!」

 白い、ウサギのような猫のような妖精。仮面のような無表情が、一瞬だけウィザードを向いた。

『久しぶりだね。ウィザード。今回はどうやらバーサーカーと戦っているようだね』

 キュウべえは、相変わらずの無表情できゅっぷいと頷いた。

『悪いけど、今は君には用はないんだ』

 キュウべえの視線は、聖杯戦争参加者のウィザードではなく、ただの一般人であるさやかに向けられた。

「な、なに……?」

 さやかもまた、驚きの眼差しでキュウべえを見つめていた。一方恭介は、キュウべえを視認することもできず、「どうしたの? 何が見えてるの?」と戸惑っていた。
 だが、キュウべえはこの緊急事態の中、他に興味を向けることなく、さやかにこう告げた。

『美樹さやか。僕と契約して、魔法少女になってよ!』 
 

 
後書き
ほむら「……?」
キャスター「マスター。いかがなさいましたか?」
ほむら「……何でもないわ」宝石ポケットに戻す
キャスター「?」
ほむら「……この周回に来てから、まだ○○は現れていない……偶然? それとも、今の反応は何……? まさか、たまたま遭遇していないだけ? でも、佐倉杏子の存在はまだ確認できていない……どこまで今までと同じで、どこからが今までと違うというの……?」
キャスター「マスター。まだアマゾンが」
ほむら「……考えても仕方がないわ。行くわよ。キャスター」 
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