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もう一つの"木ノ葉崩し"

作者:ぬんすち
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プロローグ―木ノ葉の忍たち

火の国・木ノ葉隠れの里に激震走る。


里創設を成した二人の立役者の一方・うちはマダラが里を抜け,最強の魔獣"九尾"を伴って木ノ葉に襲撃をかけたのだ。彼に対抗できる人物はこの広い世界でもただ一人。もう一方の創設の立役者・千手柱間は,里を護るべく,かつて共に夢を語り合った親友との決戦に臨んだ。



結果は……柱間の勝利。うちはマダラは死亡し,マダラに操られていた九尾は柱間とその妻・うずまきミトの手によって封印された。


こうしてマダラによる襲撃は終わり,里に再び平和が訪れる……誰もがそう思った。


勝利した千手柱間であったが,受けたダメージと疲労は想像を絶するものであった。彼の回復力,生命力をもってしてもなお,うちはマダラとの死闘は,彼に数週間にも及ぶ昏睡を余儀なくさせたのだ。


――「木ノ葉の二大巨頭,落つ」


いかに情報を守ろうとすれども,これほどの大ニュースが漏れないはずもなく,いずこからか発信されたこのフレーズは,世界を駆け巡った。柱間とマダラ,この二人が睨みを利かせていた間は決して手を出すことが出来なかった国や里も,「今こそ好機」とばかりに不穏な動きを見せ始める。



しかし,彼らは知らなかった。木ノ葉隠れの里が,"柱間"と"マダラ"だけではないという事を……。



「来たか。入れ。」

「失礼します。」

「待っておったぞ,サスケ。サイゾウ。」

火影室に入ってきた二人の忍を迎えるのは,千手扉間。初代火影・千手柱間の弟にして,後の二代目火影である。数々の制度を発案して里に基盤づくりに貢献したほか,術の開発者としても知られる人物である。

「二代目様,初代様のご容態は……。」

「うむ,まだ目を覚まさぬ。兄者のことだ,これしきりでくたばりはしないだろうが,心配なのは今の木ノ葉の状況を知った国々が攻撃を仕掛けてくることだ。警戒を緩めるな。特にお前たちは木ノ葉の主力たる存在。負担を掛けるようだが,よろしく頼むぞ。」

「もちろんです,お任せください。」

扉間の言葉に力強く答えるのは,猿飛サスケ。木ノ葉創設以前から戦国の世を生き抜いてきた忍であり,猿飛ヒルゼンの父にして猿飛一族の長。里創設に際しては一族を率いて千手・うちは連合に加わり,マダラをも驚かせた。

「必ずや,里を護って御覧にいれます。」

サスケに続いて気概を見せるのは,志村サイゾウ。同じく戦国時代の忍であり,志村ダンゾウの父にして志村一族の長。戦国時代には猿飛一族と並んで名門として知られ,里創設を受けて千手・うちは連合に加わった。
※名前は本作オリジナル。原作第481話において,ダンゾウの口から「戦場で忍として死んだ」ことが語られている。

「もちろん,いざという時はワシも出る。兄者が苦労して創り上げたこの里……よそ者に決して好き勝手はさせん。」

そして扉間自身もまた,里を護らんとする気持ちは誰にも引けを取らない。

「それとな……,ワシは兄者の代理でここにいるだけだ。二代目様という呼び方はよせ。扉間様で良い。」


トン,トン,トン

扉をたたく音がした。

「入れ。」

扉間がそれに応じる。

ガチャガチャ……ガチャガチャ……トントン

しかし,彼あるいは彼女は一向に入ってこない。どうやら,扉を開けるのに苦労しているようだ。

「……?どうした?誰だ?」

「……?」

扉間は不思議に思って声をかける。サスケとサイゾウもまた,互いに疑問の表情を浮かべた顔を見合わせる。

ガチャガチャ……

「おじーさま,あけて。とどかない。」

扉の向こう側から声が聞こえる。

「ツナか!?」

「綱手様……!」

扉間は驚いて火影室の椅子から少し腰を浮かす。扉の近くにいたサイゾウが急いで開けようと手を伸ばすが,それよりほんの少し早く扉が開く。

ガチャッ…キイィ……

「あっ,とどいた。」

めいっぱい背伸びをして何とかドアノブに手を届かせた綱手が,ゆっくりと開く扉の隙間から顔を出す。千手柱間の孫にして,後の五代目火影。やがて驚異的な医療忍術の才能を開花させることになる彼女だが,この時はまだ誰も知らない。

「綱手様,お一人でこのような所に……。」

サイゾウが扉を大きく開けて,綱手を中へ入れてやる。

「ツナ,どうした。あまり一人で動き回るなといつも言っておるぞ。」

「おじーさまは?」

綱手はその場にいた三人を見上げ,順番に見回す。

「……兄者は今,少し体調を崩して休んでいる。ここには居ない。」

「どこ?あいたい。」

綱手は扉間に顔を向ける。

「…今はならぬ。すぐに良くなるゆえ,それまで心配せずに待っておれ。」

「あいたい。」

なおも食い下がる大姪の澄んだ瞳を見て,扉間はほっと溜息をついた。 
 

 
後書き
お読みいただきありがとうございます!
志村ダンゾウの名前が加藤段蔵から来ていることに倣い,志村サイゾウの名前は霧隠才蔵からとっております。
ロリ綱手,この当時2歳です。
千手扉間は50代半ば(本編における伝説の三忍ぐらい),猿飛サスケと志村サイゾウは40代後半くらいをイメージしてます。 
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