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Fate/WizarDragonknight

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さっきまで人間だったもの

 
前書き
コウスケ「ったく、雨止まねえな……」
響「今日天気予報雨だったっけ?」
コウスケ「晴れだったと思うんだけどな」スマホの天気チェック
響「残念……今日も美味しいもの食べたかったよ……へっくし!」
コウスケ「風か? 体には気をつけろよ」
響「分かってるよ。そもそもサーヴァントだから、体壊したりはしないけど」
コウスケ「そいつは羨ましいな。俺もぜひそうなりたいぜ」
響「あはは……でも、いざフィールドワークに行こうとしたら雨なんて、私たち呪われてるかも」
コウスケ「全くだ。しばらくここで雨宿りしようぜ」
響「そうだね……あれ? ねえ、コウスケさん。ここってレストランじゃない?」
コウスケ「お? マジだ。折角だし、ここで食っていこうか」
響「やった! こんにちわ!」
店主「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
コウスケ「おお! いい店だな」
響「そうだね。オシャレだけど、私たちだけだね」
店主「お待たせいたしました」水
コウスケ「おう!」ゴクッ
響「あれ? メニューないんですか?」ゴクッ
コウスケ「うっ……体が……」
響「あれ? なんか、体が痺れてきた……」
店主「折角食材に来店していただいたのです」蒸気プシュー
響「え?」
店主「調理させていただきます」カニアマゾン
コウスケ、響「!?」
カニアマゾン「はあ!」
コウスケ「危ねっ! 変身!」L I O N ライオン
響『Balwisyall nescell gungnir tron』
カニアマゾン「? お前たちは……?」
響「止めて! ねえ、貴方の目的は何? こんなことしなくても、貴方の目的に協力できるよ?」
カニアマゾン「なら、大人しく私に食われてくれ」ハサミブン!
響「うわっ!」
ビースト「響! 新聞見たろ? アマゾンになった奴は、もう救えない! 被害を抑えるためにも、倒すしかねえ!」
響「でも、この人も人間だったんでしょ? うわっ!」キッチンへ投げられる
ビースト「響!」
カニアマゾン「人の心配をしている場合か?」
響「いたた……ん? これって……」ぶつかって壊れた冷蔵庫
 その中の、冷凍された人体
響「……」
ビースト「このっ」2バッファセイバーストライク
カニアマゾン「ふんぬっ!」斬り裂く
ビースト「響!」
響「やるしか……ないの……? イグナイトモジュール、抜剣!」 

 
『ランド シューティングストライク』
「太阿之剣!」

 黄の弾丸と赤の剣が、カマキリのアマゾンに風穴を開けた。力の抜けたアマゾンは、そのまま地に伏し、雨に溶けるように薄まっていった。

「はあ、はあ……」

 ウィザードからハルトの姿に戻り、肩で呼吸する。動かなくなったカマキリアマゾンの服に触れる。

「この人……多分、これまでも何度かラビットハウスに来たことあるよね……」
「うん。私も、見覚えある……」

 可奈美も頷く。

「私のサンドイッチ、美味しいって言ってくれた人だよ……」
「……」

 ハルトは何も言わず、指輪を使う。

『コネクト プリーズ』

 出現した、大きな魔法陣。そこから引っ張り出したのは、マシンウィンガー。可奈美にヘルメットを渡しながら、それに跨る。

「行こう。可奈美ちゃん」
「うん……」

 可奈美はヘルメットをかぶりながら、ラビットハウスを見返している。ハルトが壊した窓からだと、あれだけいた客の姿が見えない。ココアとチノも避難していることを祈るしかない。

「可奈美ちゃん?」
「大丈夫」

 可奈美も、ハルトの背後に付く。彼女の手が自分の腰に回ったと同時に、ハルトはアクセルを入れた。
 そして、木組みの町を走り、見滝原西駅に近づいたとき。

「うがあああああああああああああああ!」

 人の悲鳴。
 道行く人が、傘を取りこぼし、胸を抑えている。
 何より、その体には、黒い血管が浮き出ていた。

「ああああああ_________」

 やがてそれは、人間から、人喰いの怪物(アマゾン)へ。

「また……!」
「ハルトさん! 先行って!」

 ハルトの返答も待たず、可奈美はマシンウィンガーから飛び降り、千鳥を抜いた。

「可奈美ちゃん!」
「フラダリさんの暴走が原因なら、誰かが止めないといけない! 私はアマゾンを止めながら行くから!」

 そういいながら、可奈美は千鳥を抜刀。クモのアマゾンの心臓部を突き刺した。
 ぐったりと力の抜けたアマゾンと、目を強くつぶる可奈美を横目に、ハルトは見滝原中央病院への道を急ぐ。

「っ!」

 突如として、ハルトはグリップを強く引いた。マシンウィンガーは大きくカーブし、そのまま止まる。
 その原因は、明白だった。モズのようなアマゾンが、上空から狙ってきたのだ。

「また……!」

 ハルトの考えを現実だと示すように、モズアマゾンの周囲の電柱には人が串刺しにされている。モズの習性である早贄(はえにえ)に、ハルトは歯を食いしばる。
 再びハルトをその仲間にしようと、急降下してくるモズアマゾン。ハルトはソードガンで発砲、右肩を狙撃した。

「______」

 飛行能力を失ったモズアマゾンは、そのままハルトの進路上に墜落。その隙にハルトは、次の指輪を使った。

「変身!」
『フレイム プリーズ』

 アクセルとともに、フレイムスタイルとなったウィザードは、立ち上がったばかりのモズアマゾンにマシンウィンガーで激突。変身により強化された突破力により、モズアマゾンは二つに引き裂かれていった。

「……」

 モズアマゾンを倒したウィザードは、地面の死体と電柱の人々をそれぞれ見る。
 冥福を祈りたいが、今は時間が惜しい。松菜ハルトとしての表情を宝石の奥に隠し、ウィザードは病院への道を急ぐ。
 それからも、アマゾンは見滝原のあちらこちらで出現し、人々の悲鳴が聞こえていた。
 だが、アマゾンに抵抗するように、黒い光線が見えた。
 学校の近くでは、不似合いな銃声が聞こえた。
 野獣の咆哮が轟いた。
 誰かを繋ぐ(うた)が流れた。

 そして、ウィザードを襲う、横からのコウモリのアマゾンの襲撃。

「くっ!」

 ウィザードはぎりぎりのところで姿勢を低くしてそれを躱し、蹴りによりバランスを崩させる。

「_____________」

 コウモリのアマゾンは、それにより地面に投げ出された。マシンウィンガーから降りたくないウィザードは、ウィザーソードガンの手を開く。

『キャモナシューティング シェイクハンド キャモナシューティング シェイクハンド』
「悪いけど、構っている時間はないんだ……」

 ルビーを読み込ませようとしたとき。
 アマゾンの足場のコンクリートが波打つ。

「……え?」

 ウィザードが一瞬動きを止めた、そのタイミングで、コンクリートが水面となる。
 ザバーンと、まさに水がはじける音とともに、白い影が、コウモリアマゾンの右手を刈り取った。

「__________」

 悲鳴を上げるコウモリアマゾンだが、白い影は振り向きざまに身を捻る。それにより、今度はコウモリアマゾンの首が飛んだ。

「……」

 その一部始終を見て、ウィザードは言葉を失った。
 雨の中、コウモリアマゾンの死骸のそばにたたずむ、白い影。
 白いスク水少女。首にかけたヘッドホンという、なんとも奇抜な外見の彼女は、その手にしたハルバードでアマゾンをつついた。
 しばらくそれを続けた後、彼女はウィザードへ視線をずらす。

「……」

何も言わない。だが、無表情な瞳ではあるが、こちらへ歩んでくる。そこから、ウィザードは彼女をこう断言した。

「サーヴァント……」

 それが正しいと証明するように、スク水少女はハルバードを構える。
 ここで戦闘をする時間はない。そう判断したウィザードは、呪文詠唱を続けるウィザーソードガンにルビーを読ませる。

「ごめん! 急いでいるんだ!」
『フレイム シューティングストライク』

 炎の銃弾を、スク水少女の足元へ発射する。気温、水という条件も合わさって、魔法の炎は水蒸気となり、新しいサーヴァントの周囲を白く包んでいく。
 彼女の影が右往左往している素振りのうちに、ウィザードはマシンウィンガーを見滝原中央病院へ走らせる。
 霧が晴れたころには、すでにウィザードは、彼女から遠く離れていた。



「あーあー。折角の獲物だったのに」

 影から、スク水サーヴァントにそう声をかけたのは、彼女のマスターだった。

「つーか、アレ何だよ?」

 傘を差しながら、マスターは口を尖らせた。お姫様みたいな綺麗な表情の彼女だが、期限が悪くなると継母(ママハハ)のように醜くなる。

「サーヴァントって言ってたってことは、アイツも聖杯戦争の参加者だろ? だったら、この騒ぎでも戦えっつーのに」

 彼女は頭を掻いた。不機嫌そうに電柱を蹴り、

「まあいっか。オラ、復讐者(アヴェンジャー)。さっさと狩り続けんぞ」

 彼女は今までと打って変わって、眩い笑顔でスク水少女へ言った。

「さっさと社会貢献すれば、ウチの株も上がって、あきらっきー!」

 傘を放り投げ、マスター、蒼井(あおい)(あきら)は雨空を仰いだ。



 ようやく見滝原中央病院が見えてきた。
 ウィザードは、アクセルをもう一度強くする。
 だが、もうすぐで入口に差し掛かるその時、視界に黒い弾丸が現れた。

「え?」

 それはまっすぐウィザードの体を目指している。ハンドルを切ったウィザードだったが、間に合わず、右腕が弾丸の餌食になってしまった。

「ぐあっ!」

 マシンウィンガーから転げ落ち、変身解除。アスファルトにたまった水たまりに顔を打ち付けながら、ハルトは着地(・・)した弾丸を見上げる。

「あれって……ウニ?」

 黒い針だらけの体、複雑に絡まった大きな歯。まさに人型のウニとしか言えないものだが、あれもアマゾンなのだろうか。

「種類豊富すぎだろアマゾン……」

 毒づいているうちに、ウニアマゾンは再び体を丸め、高速回転。再びミサイルのように飛んでくる。
 ハルトはソードガンでそれを受け流すが、変身する隙がない。
 一方、ウニアマゾンは着地すればすぐに弾丸となるため、いくらでも攻撃ができる。
 ハルトは打ち落とすことを諦め、まっすぐ立った。それは当然、アマゾンからすれば格好の獲物。
 だが、飛んできたアマゾンに対し、ハルトは、まっすぐにソードガンを突き立てた。
 ハルトの柔らかい人肉よりも先に、銀の刃物がウニアマゾンの___しかもそれは丁度頭部___体に突き刺さる。

「うおおおおおおおおおお!」

まさにウニの歯を抜くように、ハルトは力を込めてその顔を斬り裂いた。
 力なく倒れたウニアマゾンを確認したハルトは、再びマシンウィンガーに乗る。
 もう、病院は目の前だった。
 そして、その門の中は……

「嘘だろ……」

 それを見た瞬間、ハルトはここが人間の支配する世界であることを忘れた。
 真っ白な病院の壁を埋め尽くす、黒黒黒。
 人の服を不自然な赤で染め上げた怪物たち。色とりどりのカジュアルシャツの人もいれば、病院関係者らしき白衣の者まで、無数のアマゾンたちが、それぞれ人体のパーツ一つ一つを、まるでスナックのように食らいながら徘徊していた。

「アマゾンの病院……」

 思わず足が震える。だが、それはアマゾンたちにとっては、餌同然。こちらへの視線が、どんどん増えていく。
 やがて、アマゾンたちはハルト(捕食対象)を食らおうと駆け出してきた。

「変身!」
『フレイム プリーズ』

 ハルトの左側より赤い魔法陣が出現。通過により、ハルトの姿は赤のウィザードとなる。
 両側より掴みかかってきたアマゾン二体を蹴り飛ばし、ソードガンでアマゾンたちを寄せ付けない。
 掴みかかってきた蛇の髪を持つアマゾンをビッグで弾き飛ばしたウィザードは、出し惜しみはしていられないと、指輪を取り出す。

『コピー プリーズ』
『コピー プリーズ』

 二度の複製の魔法により、ウィザードは一人から二人、二人から四人にその人数を増やす。
 間髪入れず、次に使う魔法。それは。


『チョーイイネ キックストライク サイコー』

 

右足に火の魔力を込める。さらに、バク宙。右足を上に飛び上がり、右足をアマゾンの大群へ向ける。
 だが、これだけでは足りない。

『ビッグ プリーズ』

 巨大化の魔法陣により、ウィザードの足が大きくなる。体積威力ともに増加したそれにより、アマゾンの大群にぶつけた。
 雨を打ち消すほどの威力は、病院の中庭全てを火の海に変えた。

「……」

 病院を火の海に変えた。
 地面に落ちるアマゾンたちだったものに目をくれることなく、ハルトは廃墟となった病院に入っていった。



 だが、病院の中は、この上ないほど無音だった。
 音に変わり、病院内を充満するのは、鉄の臭い。薬品もろもろの臭いを塗りつぶす赤い臭いに、ハルトは不快感があった。

「これは……」

 薙ぎ倒された植物。引き裂かれた椅子。白を上回る赤。
 そして、人一人いない、この惨状。

「まさか……病院が、一番アマゾンになった人が多いのか……」

 クトリや千翼はどうなった。
 考えたくない結果を頭に浮かべながら、ハルトは故障したエレベーターをしり目に階段を登る。

「誰か! 誰かいないのか!?」

 生き残りを求めるハルトの声は、ただむなしく病院内を響くだけだった。
 やがて、二階フロアに着いた時、すぐ近くのドアが開く。

「生き残り!」

 その姿に、ハルトは歓喜の表情を浮かべた。
 可奈美と同じくらいの年齢の少女。全身傷だらけだが、ドアノブに体を寄りかけながらその姿を見せた。

「君! 大丈夫?」

 ようやく見つけた生き残りの少女を助け起こしながら、ハルトは尋ねる。
 全身血まみれの少女は、ハルトを見上げて呟く。

「に……げ……て……」

 その時、ハルトは絶句した。
 見上げた彼女の首筋に、黒い血管が浮き出ていることに。
 彼女から発せられた蒸気により、全身が焼けるような熱さに襲われる。
 悲鳴も上げる間もなく、少女の姿は、黒い、アマゾンへ変わった。

「!?」

 急いでアマゾンから離れようとするが、変身解除したのがまずかった。少女だったアマゾンはハルトの腰を掴み、指輪のホルスターがその爪にかかる。
 結果、ホルスターがそこにはめられていた指輪が散乱し、階段から一階へ落ちていく。。

「しまっ……」

 アマゾンの前で、拾いに戻るなどという隙の大きいことなどできない。ハルトはアマゾンの腕をドロップキックで相殺し、近くの病室へ逃げ込もうとした。
 だが。

「ここも……っ!」

 病室には、ぐちゃぐちゃと折り重なった中年の男女を食べる、子供のような大きさのアマゾン。サイの頭部をしたそれが食べているのは、まさか両親では、とハルトの背筋が凍る。
 その子供のアマゾンは、ハルトの入室に気付き、次の獲物に狙いを定めた。

「またかよ!」

 ハルトは急いで廊下に飛び出し、新手のアマゾンから逃れる。

「くそ、まだ生き残りがいるはず……!」

 二体のアマゾンへ近くの観葉植物を投げつけ、距離を稼ぐ。走る先に見つけた、もう一つの階段。
 そして、向かいの病室の扉が開く。
 騒ぎに怯えた病人_____だった、アマゾン。

「嘘でしょ!」

 大人らしい身長のクワガタの姿をしたアマゾン。それはハルトを見定めると、その首を掴みかかってきた。

「グッ……!」

 対応できなかったハルトは、そのまま廊下に押し付けられる。一度引き込まれ、再び壁に。アマゾンの人智を越えた腕力に、壁は砕かれ、ハルトは二階からロビーへ投げ出された。
 指輪がなければ、ウィザードといえどもただの人間。生身のハルトは背中から落下した。

「あっ……」

 ウィザードリングとの距離が縮まったのに、痛みでより遠く感じる。
 飛び降りてきた三体のアマゾンに加え、病室や陰などに隠れていたアマゾンたちもその姿を現す。

「こんなことって……」

 痛みに揺らぎながら、ハルトはそのアマゾンの数に唖然とした。
 本来人でなければならないアマゾンたちは、全身のどこかに赤い染みをしていた。そして今、ハルトをその染みの一員にしようとしている。
 まっ先にハルトへ攻撃をしてきたのは、クワガタのアマゾンだった。
 ハルトは痛む体を起こし、蹴りで反撃。掴みかかってくるクワガタアマゾンの顎を素手でつかみ、投げ飛ばす。
 だが、アマゾンの群れは次々にハルトに雪崩れこんでくる。裏拳で殴り飛ばせば、別の一体がそれを掴み、回転蹴りで受け流せば、別の一体が背後から背中に切り傷を付ける。
 やがて、腕、肩、足、背、首……全ての箇所にアマゾンが食らいついた。

「うわああああああああああああ!」

 想像を絶する痛みに、ハルトは悲鳴を上げた。だが、それで事態が好転するわけもない。
 そして。
 ハルトの意識が、赤一色に塗り潰された。

 その直後。病院の一階を、赤い爆発が包み込んだ。 
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