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Fate/WizarDragonknight

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木綿季のオリジナル

「千翼君が……バーサーカー……」

 ウィザードの変身を解除し、ハルトは千翼を見つめる。
 当の千翼は、ハルトと顔を合わせようともせず、クトリへ吐き捨てた。

「なんで姉ちゃんがここにいるのさ」
「ここにいたら悪い?」

 クトリはほほ笑む。すると、千翼は少し不機嫌そうに「別に」と背を向ける。

「よかった」

 クトリは安堵の息とともに、千翼の後ろから抱き着いた。

「……放してよ」
「ダメ。お姉ちゃんを心配させた罰」
「……だから、そういうの……」

 やめてよ。そう、彼が言おうとしている言葉を飲み込んでいる。
 そんな姉弟の感動の再会に水を差すような気もしながら、ハルトは言わなければならないことを口にした。

「千翼くんが……バーサーカー……」

 その言葉に、こちらを振り向く千翼の顔が一気に強張った。

「……アンタ、マスターなんだ」
「……」

 隠すつもりもない。ハルトは、右手に刻まれた黒い刻印を見せる。
 龍騎の紋章そのものの令呪を、千翼は凝視した。

「そうだよ。ライダーのマスター」
「ライダー……」
「以前一緒にアマゾンを倒した、あの赤い龍の人」
「……ああ」

 思い出しているのか否か、ハルトにはわからない。
 次に、ハルトはクトリの手に注目する。彼女の綺麗な白肌には、令呪のような黒い呪いはどこにもない。

「千翼君、君のマスターは誰?」
「答えるわけないじゃん」

 千翼はクトリの手をほどいた。思春期の彼は、どうにも素直な言葉を口にしてくれない。

「ねえ。聖杯戦争のルール分かってる? 俺たち、殺し合いしなくちゃいけないんだよ」
「俺は情報開示したけどね」
「そっちが勝手にやっただけだろ? それに、友奈さんも」

 千翼の目が、ハルトの隣の友奈に向けられる。

「友奈さんだって、聖杯戦争の参加者じゃないの?」
「うん。セイヴァーのサーヴァントだけど」
「やっぱり……」

 千翼は、外したばかりのベルトを再び腰に装着する。

「ち、千翼!?」

 クトリが両腕を掴んで止めようとするが、千翼はそれを振り払う。

「離れてて姉ちゃん。こいつらは、俺の敵だ!」

 注射器をベルトに装填。そのスイッチを押し、彼の体内に薬品が流し込まれていく。それに伴い、千翼の目も赤く染まる。

「ちょ、ちょっと待って!」

 友奈が止めようとするが、千翼は敵と認識した者の言葉に耳を貸さない。こちらに走り出し、その身を紅蓮に包む。
 仕方ない。と、ハルトはルビーの指輪にカバーをかけた。

「アマゾン!」
「変身!」

 友奈の前に立つ、ルビーのウィザード。ソードガンと、アマゾンネオの刃がぶつかる寸前。

「止めなさい!」

 止まった。ソードガンと刃が、クトリの首寸前で静止していた。

「姉ちゃん……!」

 アマゾンネオが呪ったような声で言った。二人の火中に飛び込むクトリの大胆さに驚きながら、ウィザードはソードガンを下ろす。

「ほ、ほっ……」

 緊張感に当てられた友奈が、腰を落とした。

「二人とも……驚かさないでよ……」

 一方、クトリはアマゾンネオに抱きつく。

「ね、姉ちゃん!」
「大丈夫。怖くない。心配ないから」
「そういうことじゃない! アイツは……!」
「ハルト君は、たまに病院にマジックを見せに来てくれる人。それだけ。ね? マスターとか、そういうのじゃないよ」
「……」

 クトリの言葉に、アマゾンネオは黒一色に変わっていく。やがて千翼へ戻り、そのまま背を向ける。

「千翼?」
「……喫茶店に戻る。木綿季さん、置いていったから……」
「うん!」

 クトリが頷き、彼の手を握った。照れ臭そうな千翼だが、彼女の手を振り払う様子はもう見られなかった。
 それを見送りながら、ハルトはスマートフォンを動かす。

「ハルトさん?」

 友奈が心配そうにこちらを見ている。ハルトは、

「ああ。ちょっと気になることがあってさ。友奈ちゃんは?」
「うーん……私もちょっと心配かな? 着いていっていい?」
「いいけど。ラビットハウスっていう、俺と可奈美ちゃんが働いている喫茶店だよ」
「りょーかい! この前教えてもらってるから大丈夫だよ」
「知ってたんだ」
「ハルトさんは?」
「ちょっと、確認だけしてから戻る。先に行ってて」
「? うん」

 頷いた友奈は、千翼とクトリを追いかける。
 彼女たちを見送って、ハルトは可奈美に電話をかけた。
 可奈美が出るのは、思ったよりも早かった。

『もしもし。ハルトさん?』
「可奈美ちゃん。ごめん。まだ話してた?」
『ううん。さっきチノちゃんも帰ってきて、今ココアちゃんを入れて三人で話してるよ』
「そっか。……ねえ、確か可奈美ちゃんがアマゾンって怪物の名前最初に知ったのって、昨日だよね?」
『そうだよ』
「それってバーサーカーが言ったんだよね」
『うん』
「それで、フラダリさんがアマゾンって怪物名を発表したのが今朝……」

 そこまで言ったところで、可奈美もハルトの意図を理解できたのだろう。息をのむ音が聞こえた。
 ハルトは続ける。

「どうしてフラダリさんとバーサーカー、同じ名前で言えたんだ?」

 アマゾンの町中の出現に騒然としている街。その音が、遠くに聞こえた。



「……」

 可奈美はスマホを切る。
 ハルトとの通話後、可奈美はじっと自身のスマホ画面を見下ろしていた。刀剣博物館で気に入った展示物の待ち受けが、静かに可奈美を見返している。

「可奈美さん!」

 可奈美の意識を戻したのは、背後のチノが裾を掴んだ時だった。

「チノちゃん?」
「助けてください……木綿季さんの言ってることがさっぱり分かりません!」
「え?」
「私、そんなに変なこと言ったかな?」

 机では、ココアが頭から煙を出しながら突っ伏している。どうやら彼女はオーバーヒートしてしまったようだった。

「あれ? どうしたの?」
「どうしたんだろ? 私がちょっと話したら、お姉ちゃんがのぼせちゃって」
「お姉ちゃんに……任せなさい……」

 ココアが消え入りそうな声で言葉を紡いでいる。

「ちょっと鹿島新當流(かしましんとうりゅう)の話をしただけだよ」
「ああ。姫和(ひより)ちゃんの……でも、それでそんなにパンクする? ココアちゃん?」

 何の気のなしに、可奈美はココアへ尋ねた。するとココアは首だけを動かし、魂の抜けた顔で見上げた。

「可奈美ちゃんは分かるかもしれないけど、普通の女の子は剣のことなんてさっぱりわからないんだよ……」
「「うそっ!」」
「普通分からないよ!?」

 オーバーヒートしたはずなのに、一気に復活した。ココアは白目を剥きながら、

「ねえ可奈美ちゃん! 普通の女の子は剣のナントカ流ってわからないよ! ……いやリゼちゃんなら分かるかもだけど……」
「そうなの?」

 と木綿季。
 可奈美は首を傾げながら、

「私は友達から、結構色んな剣術を聞くよ? そうして覚えたのもたくさんあるし」
「僕も、ネットで色々調べたから、それなりに覚えたんだけど」

 可奈美と木綿季は頷きあい、ココアとチノを見る。

「「変わっていらっしゃる」」
「「こっちが(ですか)!?」」



 ラビットハウスの裏庭で、可奈美は鞘に収めた千鳥を持っていた。
 相手は、竹刀を手にした木綿季。あまり自由の利かない体のため、ココアが彼女を支えている。

「本当に大丈夫ですか?」

 中庭の端で、チノが心配そうに尋ねた。だが木綿季は元気に答える。

「平気平気! 動けるようになった僕を、可奈美にも見てもらいたいし!」

 木綿季がまっすぐに可奈美へ剣を向ける。
 可奈美は頷いて、千鳥を構えた。無論御刀を一般人に向けるわけにもいかない。鞘からださず、このまま迎え撃つつもりだった。

「じゃあ、やろう! 立ち合い!」
「チャンバラだね!」

 勘違いしながらココアが目を光らせている。

「私も参加していい?」
「ごめん、ココアさん。僕がやりたいんだ」

 木綿季の顔が、あたかも肉食獣のようにゆがむ。

「見せてあげるよ。可奈美。僕がずっと考えていた、僕だけの技!」

 そして。
 木綿季が、可奈美へ竹刀を振り上げた。

「うおっ!」

 それを避けた可奈美は、再び上がろうとする彼女の剣を止める。

「いい踏み込みだね。もしかして、私がいないとき結構練習してたの?」
「してたよ。だって、速く可奈美とぶつかりたいから!」

 木綿季は竹刀を引っ込め、可奈美の拘束から逃れる。一回転とともにきた横薙ぎを、可奈美は受け流した。

「どうしたの? それだけじゃ、一太刀も私に浴びせられないよ!」
「むむっ……」

 木綿季は頬を膨らませる。彼女は斬を突へ切り替える。

「じゃあ、これを!」

 大したスピードではない。
 可奈美は、二連続の木綿季の突き技を受け流す。

「そういうのは、こうやるんだよ!」

 可奈美は木綿季の竹刀を切り払い、彼女と同じく二連撃の突き技を返す。

「うわっ!」

 それは、素人の木綿季にはあまりにも強い攻撃。弾かれ、木綿季はしりもちをつく。

「おおっ! 大丈夫?」

 ココアが木綿季を助け起こす。頷いた木綿季は、再び可奈美へ竹刀を向けた。

「可奈美、突き技をしない流派なんじゃないの?」
「木綿季ちゃんの技、やってみたくなったから。今日だけは解禁」

 すると、チノがはわはわと口を震わせた。

「か、可奈美さん……お客様にケガをさせるのは……」
「大丈夫。それぐらいの手加減はできるよ」

 可奈美は、試しに切っ先を揺らす。

「木綿季ちゃん。次、いつでもいいよ?」
「……」

 その言葉に、木綿季は深く息を吐いた。
 その時、来る。と、彼女は直感した。

「やあっ!」

 再び、彼女の突き。それに対し、千鳥で跳ね返す。
 だが。

「まだまだあああああ!」

 何度も。何度も。彼女はただひたすらに突きのみを、可奈美に浴びせていく。
 やがて、可奈美は彼女の竹刀を弾き、チノの近くに飛ばさせる。

「あ……」
「大丈夫?」

 自らの手を見下ろす木綿季へ、可奈美が覗き込む。自分よりも身長が低い少女は、竹刀を失った手から、可奈美の目に視線を移す。

「……かい」
「うん?」

 よく聞き取れず、可奈美は耳を傾ける。すると、木綿季は大きな声で言った。

「もう一回!」

 彼女はチノの傍らの竹刀を拾い上げる。

「もう一回! お願いします!」
「う、うん……どうしたの?」

 木綿季の顔は、敗北に悔しがる顔ではなく、熱意を持った顔だった。

「今の、何かが見えた気がする!」
「何か?」
「ずっと考えていた、私だけの技! それが、もうすぐで見えそうなんだ!」
「技?」

 その言葉に、木綿季は力強く頷いた。

「そう! ずっと考えていた、連続技! 回数は……十一回くらい!」
「十一回の連撃?」
「そう! その名も……」

 木綿季は、竹刀を掲げた。

「マザーズロザリオ!」



 その後、ハルトたちが帰ってきても、日が暮れても。
 木綿季が十一連撃を完成させることはできなかった。
 
 

 
後書き
まどか「……なんか、視線を感じる……」
ほむら「じー……」ほむら専用電柱
まどか「……見なかったことにしよう……」
ほむら「じー……」
まどか「ほむらちゃん、もしかしてストーカー?」
ほむら「じー……」
キャスター「マスター」
ほむら「何かしらキャスター今貴女に用はないわ帰りなさい」
キャスター「いえ。差し出がましいようですが」
ほむら「何かしら?」
キャスター「今のマスターは、ただの不審者です」
ほむら「何がかしら? 私はこうして、何時如何なる時もインキュベーターのまどかへの契約を見張っているのよ」
キャスター「電柱の裏でのそれはストーカーです。……アニメ、どうぞ」
ほむら「分かりにくい導入ね」



___だからもっと笑った顔見せあって 結果つられちゃって大正解です___



キャスター「サーバント×サービス。市役所で働く公務員たちの物語です」
ほむら「事務的な説明ね」
キャスター「放送期間は2013年7月から9月。主人公は、山神ルーシー喜美子明江愛理史織倫弥由保千帆子綾乃冨美佳千歳早苗美紀子壱花由紀乃麗奈恵利亜衣多美子千景エミリア樹利亜志津江絵里那千紗夢佳夏希蘭々理恵子刹里智香子あずみ満里奈秀子千秋美咲……」
ほむら「いきなり真顔でじゅげむを言わないで!」
キャスター「が、自分の名前を受理した市役所職員に文句をいうことを目指したドタバタです」
ほむら「貴女が公務員みたいに淡々と説明するのね……はっ! まどかは!? ……いない……」
キャスター「警察(公務員)のお世話にならなくてよかったです」 
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