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オズの木挽きの馬

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第五幕その六

「オズの国で楽しく暮らしてるぜ」
「それはよかったです」
「よかったかい」
「大坂の陣の後どうなったか心配だったんです」
「おいら達が死んだと思っていたのかい」
「幸村さんも」
「そうだよな、歴史じゃ殿はあの戦でお亡くなりになってるからな」 
 佐助さんは腕を組んでしみじみとしたお顔で言いました。
「だからな」
「私達がそう思ってもですね」
「仕方ねえな、けれどな」
「生きていてですね」
「今はここにいるからな」
「安心していいですね」
「喜んでくれていいぜ」
 これが佐助さんの返事でした。
「そうしてくれてな」
「それじゃあ」
「それとだけれどな」
 佐助さんの方から言ってきました。
「あんた達川を渡るんだよな」
「はい、そのつもりです」
「そっちのお馬さんは見たしな」
 木挽きの馬を見て言います。
「川を渡って戻るのをな」
「そうなんですね」
「ああ、というかおいらもあんた達のこと知ってるぜ」
「私達全員のことをですか」
「あんた達はオズの国で有名人だからな」 
 それでというのです。
「もう知ってるぜ」
「そうだったんですか」
「お嬢ちゃん達のこともな」
 恵梨香自身にも言いました。
「もう知ってるぜ」
「そうだったんですね」
「けれど会ったのははじめてだぜ」
 佐助さんはにかっと笑って言いました。
「だから嬉しいぜ」
「そうですか」
「それで川を渡りたいならな」
 その場合はといいますと。
「乗りなよ」
「乗っていいんですか」
「その為の小舟だからな」
 それでというのです。
「乗っていきな、おいらの小舟は誰だって乗っていいんだよ」
「それで向こう岸まで渡してくれますか」
「そうさせてもらうぜ、どうだい?」
「宜しくお願いするわ」
 グリンダが佐助さんに微笑んで言いました。
「それではね」
「ああ、そういうことでな」
「お礼はこれでどうかしら」
 グリンダは佐助さんに宝石を出して言いました。
「渡してくれるね」
「おいおい、そんなのいらねえよ」 
 佐助さんはグリンダに笑って答えました。
「別にな」
「いらないのかしら」
「ああ、おいら等はそういうのには興味ないんだよ」
「宝石とかにはなのね」
「自分達が修行出来て飲んで食えてな」
 そうしてというのです。
「楽しく過ごせたらな」
「それでいいのね」
「殿の下にな、だからな」
「いらないのね」
「その気持ちだけで充分さ」
 感謝のそれでというのです。
「だからな」
「別にいいのね」
「ああ、それはグリンダさんで持って行ってくれよ」
「わかったわ」
「いや、気さくなだけでなく無欲なんだ」
 木挽きの馬は佐助さんのその性格に思わず言いました。
「そうなんだね」
「それがこの人達なの」
 恵梨香がその佐助さんに答えます。 
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