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おっちょこちょいのかよちゃん

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104 合唱コンクールの異変

 
前書き
《前回》
 赤軍の次の狙いは護符である事が分かったさりは自身の不安に駆られる。その頃、藤木、笹山と共に下校していたかよ子達は野良犬と遭遇し、襲われそうになる。藤木は笹山を連れるがかよ子をその場に残して逃走する。かよ子は杖で風を操る能力を行使して追い払ったが、翌日笹山と共に藤木に詰め寄り、クラスメイトからも非難を受けた藤木は最悪の日となってしまうのだった・・・。 

 
 レバノンの赤軍本拠地。房子は考える。
「もうクリスマスの季節ね・・・。クリスマスプレゼントはやはりあれらのみ・・・」
 房子が戦争を正義とする異世界の主に献上するクリスマスプレゼント。それはあの三つの道具である。杯、護符、そして杖。早くクリスマスプレゼントを揃えなければと思う房子であった。

 ありはダヌンチオを倒した後、相手が「護符はどこだ?」と言っていた為、もしや母から妹に引き継がれた護符の事かと思った。そして、数日後、神戸に住む姉・ゆりから電話が来た。
『もしもし、あり』
「お姉ちゃん、どうしたの?」
『東アジア反日武装戦線が赤軍によって脱走したって聞いたわ』
「そうよ、私達が東京に行ったのは何の為だったのかしら・・・」
『それだけじゃないわ。実家の隣の山田さんとこの娘さんが異世界の敵に騙されて護符の場所を教えちゃったらしいの。相手はきっとさりの護符の場所が分かったに違いないわ』
「それじゃ、さりが一番危ないって事!?」
『そうなるわね。さりの護符も最上位の強さって聞くからさりもドジは踏まないと思うけど・・・』
「うん、名古屋にもちょっと行ってみようかな・・・」
『そうね、心配なら行ってあげてもいいかもしれないわ。じゃあね』
 お互い電話を切った。
(さり、大丈夫かしら・・・?)
 ありは妹が心配になった。

 この日は12月24日クリスマス・イブ。つまり、クリスマスの合唱コンクール当日だった。かよ子は遅刻、そして喉に気を付けようと思い、早く寝て、早起きした。
「あら、かよ子、おはよう」
「おはよう」
「喉の調子はどうかしら?」
「うん、全然大丈夫だよ」
「良かったわ。コンクール、頑張ってね」
「うん」
「そっか、今日は合唱コンクールだったな。頑張れよ」
 父が応援の言葉を送った。
「うん、おっちょこちょいしないように頑張るよ!」

 かよ子は学校に到着した。
「よっ、山田あ、おはよう!」
「す、杉山君・・・。おはよう!」
「今日、頑張れよな!」
「うん・・・!」
 かよ子は好きな男子から言われてやる気が更に(みなぎ)った。そんな時、大野が入って来た。
「大野君、おはようブー!」
「ああ、おはような」
「あれ、大野君、ちょっと声がおかしいブー」
 ブー太郎は心配になった。
「そ、そんな事ねえよ」
 大野は否定した。
(大野・・・)
 杉山は大野の声が掠れている事に気付いていた。運動会の喧嘩以来、口を聞いてはいなかったが、暫くそのような状態が続くと、どうしても彼が気になってしまうのだった。

 一方の藤木は野良犬からかよ子を見捨てた一件以来、笹山とは口を聞いておらず、合唱コンクールにも何も意気込みを感じなくなってしまっていた。

 朝のホームルーム、戸川先生が話を始める。
「今日は合唱コンクールです。皆、毎日の練習の成果を思う存分発揮しましょう」
 皆が「はいっ」と返事した。

 そして、合唱コンクールが始まった。1年生から順に学年毎に歌を披露する。次に2年生、そして3年生の番となった。自分のクラスの番が近づくにつれ、緊張のボルテージが上がる。だが、おっちょこちょいはしたくない。かよ子はそう思った。
『次は3年4組の「大きな古時計」です』
(よし、絶対におっちょこちょいしないぞ・・・!!)
 かよ子は深呼吸をした。丸尾の指揮で花輪が前奏を弾く。そして1番の合唱が始まる。
「お~おきなのっぽの古時計、おじい~さんのとけい~♪百年、い~つも、動い~ていた、ごじま~んのと~けいさ~♪」
 かよ子の独唱の番が来た。絶対に音を外してはならない。そして練習の成果を見せてやる。
「おじい~さんの生まれた朝に、買~って来たと~けいさ~♪」
 上手く歌えた。かよ子はおっちょこちょいをしなかったのだった。そして合唱に戻る。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪」
 1番が終わった。短い間奏を過ぎ、2番に入る。
「な~んでも知ってる古時計、おじい~さんのとけい~♪きれい~な、花嫁、やってきた、その日~も動~いてた~♪」
 2番の独唱部分。今度は笹山が歌う。
「嬉しい~事も、哀しい事も、皆知ってると~けいさ~♪」
(笹山さん、綺麗な声だったよ・・・)
 藤木は心の中で褒めた。だが、合唱に戻り、藤木は歌い出しが遅れてしまった。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪」
 そして二度目の間奏にはいる。一度目よりは少し長い間奏である。そして、3番に入る。
「ま~よ~中に、ベルがな~った。おじい~さんのとけい~♪お別~れのと~きがき~たのを、皆に教え~たのさ~♪」
 そして3番の独唱部分。今度は大野が歌う。
「てんご~くへ・・・♪」
 その時だった。大野の声が出なくなった。
(しまった、声が、でねえ・・・!!)
 大変な事態である。だが・・・。
「の~ぼるおじいさん、時計~ともお~別れ~♪」
 別の人間が歌った。それは杉山だった。
(す、杉山君、独唱も凄い・・・!!)
 かよ子はそう思った。
(杉山・・・)
 大野も杉山に対して何か思う。そして合唱部分に戻る。
「今は、もう、動かない、そのと~け~い~♪百年休まずに、チクタクチクタク、おじいさんと一緒に、チクタクチクタク、今は、もう、動かない~・・・、そのと~け~い~♪」
 合唱が終わり、花輪が終奏を弾く。そして曲は終わった。嵐のような大きな拍手が聞こえた。クラスの皆は退場する。そしてかよ子は改めて思った。
(あの杉山君と大野君のコンビが帰って来たんだ・・・)
 そして上の学年、クラスの合唱が続き、合唱コンクールは閉幕した。3年4組は全体で2位となったのだった。
「かよちゃん、独唱すごくよかったよ!」
 まる子、たまえ、そしてとし子がかよ子に労わりの言葉を送った。
「あ、ありがとう。おっちょこちょいしなくて頑張ったよ」
 そして、ブー太郎は杉山の所に行く。
「杉山君、大野君の代わりに速攻で独唱をするなんて凄いブー!」
「ああ、実は俺も正直、あいつが心配だったんだよ・・・」
 その時、大野は杉山の所に行く。そして出なくなった声を思い切り出そうとする。
「杉山・・・。ありがとう・・・。後、運動会の時・・・」
「大野、気にすんなよ、俺だって行くのが遅くて悪かったよ。それに、お前も練習、頑張ってたじゃねえか」
「あ・・・、ああ・・・」
(杉山君、大野君、やっと仲直り出来たんだね・・・)
 かよ子は安堵した。
「大野君、杉山君、仲直り出来て良かったブー・・・!」
「おいおい、ブー太郎。、泣くなよお!」
 ブー太郎は感動の涙を思わず流してしまった。そして杉山はかよ子の所へ行く。
「山田、お前の独唱、とても良かったぜ!」
「あ、ありがとう、杉山君・・・!!」
 かよ子は好きなん男子から言われてとても嬉しかった。一方の笹山も皆から労わりの言葉を貰っていた。
「笹山さん、お疲れ様~」
「ありがとう!」
 藤木は思い切って立ち上がった。今自分も労わりの言葉を送れば自分にもきっとありがとうと言ってくれて、あの日の事の事はもう許してくれるだろうと予想した。
「あの、笹山さん・・・」
「え?」
「笹山さんの、声、凄く・・・、よ、よ・・・」
 藤木は照れていた為、言葉が詰まる。その時、永沢が口を挟む。
「藤木君、君、笹山の独唱に惚れて歌い出しが遅れただろ」
「え、いや、そ、そんな事ないさ!」
「いいや、僕見てたんだ。君が口を開くのが遅かったし、少し遅れてたよ」
「い、いや、それは、歌詞が出てこなかったんだよ!」
「言い訳かい!?」
「ええ、藤木歌い遅れたの?2番の所」
「そうだ、俺、隣で聴いてたけど藤木遅れてたぜ」
「ホント、何やってんのかしら?」
 藤木はかよ子や笹山とは対照的に非難で注目の的となってしまった。
「さ、笹山さん・・・」
 笹山は藤木に振り向きもしなかった。藤木は皆から非難され、笹山からはそっぽを向かれ、最悪のクリスマス・イブとなってしまった。

 三河口が通う高校ではこの日が終業式となっていた。
「三河口君」
 奏子が声を掛ける。
「今日、一緒に商店街を歩かない?クリスマス・イブだから三河口君と一緒に過ごしたくて」
「え?ああ、いいよ」

 さりは仕事の後、店のクリスマスパーティーに参加する予定であった。その後、何らかの爆音が聞こえた。
「な、何!?」
 さりや会社の皆は何だと思い、窓を見た。街が荒らされている。
「あれは・・・!!」
 さりは思わず商店街へと出た。相手は集団でいた。
「何してるのよ!?」
「あ、黙れ!」
 男は枯葉を投げた。手裏剣のように去りに襲い掛かる。
(はっ!)
 さりは護符の能力(ちから)を行使した。火炎放射をして枯葉を焼き尽くした。
「それは護符だな!見つけたぞ!護符の所有者!」
 さりははっと気づいた。この男は日本赤軍だと。 
 

 
後書き
次回は・・・
「狙われた護符の所持者」
 さりは赤軍と遭遇し、異世界の敵までもを召喚され、窮地に立たされる。そんな時、さりの護符の能力(ちから)がかよ子や三河口、杉山達清水に住む皆に降りかかる・・・!! 
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