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おっちょこちょいのかよちゃん

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95 遠方の出来事

 
前書き
《前回》
 東京に住む杯の所持者・安藤りえは下校中、友人と共に東アジア反日武装戦線に襲撃される。しかし、かよ子の隣の家のおばさんの次女・ありとその夫・悠一、そして異世界から援護に訪れたシャクシャインが助太刀に入り、彼らを撃退する事に成功するのだった!! 

 
 かよ子は休憩後も歌の練習を続けていた。夕食後も、入浴後も。
「かよ子、もう何時だと思ってるの?」
 母が部屋に入って来た。
「え!?」
 時計を見ると既に時間は9時半を過ぎていた。確かにこんな時間に歌っていたら近所迷惑となってしまう。
「それに練習のしすぎで身体を壊したら大変よ。むりしないでね」
「う、うん、おやすみ・・・」
 練習に夢中になるというおっちょこちょいをやってしまったかよ子はさっさと寝る事にした。

 三河口は叔母から東京での話を聞いていた。
「それで、ありちゃん達は東京で東アジア反日武装戦線の連中を纏めてコテンパンにしたんですか」
 奈美子は電話でありから聞いていた為、ありとその夫が異世界の杯を奪おうとしていた者を纏めて成敗したという事を知っていた。
「うん、ありも杯を持ってる女の子と会ったって言ってたよ」
「杯の所有者・・・。ああ、安藤りえちゃんの事ですか」
「ああ、名前覚えてたんね」
「はい、夏休みにかよちゃん達が会ってましたし、何かあったら一緒に戦うって約束もしてましたからね」
「そういや、そうだったね」

 翌日、山田家は朝食時のニュースにて、東京都内にて東アジア反日武装戦線のメンバー全員と共に日本赤軍のメンバー一名が逮捕されたというニュースが入っていた。
「東京・・・、って事は・・・!!」
「そうね、りえちゃんの住んでいる所ね」
「りえちゃん、大丈夫かな?」
「きっと大丈夫よ。でなきゃ被害者の名前が出てくるじゃない」
「う、うん、そうだよね」
「でも、赤軍のメンバーが混じってるって事はどういう事なんだ?」
 かよ子の父が気になった。
「あ、うん・・・」
「もしかしたら東アジア反日武装戦線は赤軍と同盟を組んだ可能性が高いわね」
 かよ子は背筋が凍るような感じだった。戦いはまた激しくなっていると。

 かよ子は家を出ると丁度三河口と遭遇した。
「ああ、かよちゃん、おはよう」
「隣のお兄ちゃん、おはよう!」
 かよ子は足を滑らせて転びそうになってしまった。
「昨日のニュース聞いたかい?東京のビルの爆破をしたグループが纏めて逮捕されたってやつ」
「うん、それに赤軍の一人もいたんだよね。りえちゃんが心配だよ・・・」
「ああ、それについてだが、北海道の従姉が東京へ来てやっつけてくれたよ」
「そ、そうなの!?」
「うん、おばさんから聞いた。それにその従姉はりえちゃんとその友達とも会ったとね」
「よかった・・・」
「だが、逮捕された東アジア反日武装戦線って奴等は赤軍に頼まれてりえちゃんの杯を奪いに来たそうだよ。それに俺が持ってる能力(ちから)が使える機械を発明したとか」
「いつの間に?」
「うん、だから、かなり大変な事になるよ」
 かよ子はその会話を聞いて震えた。三河口の能力(ちから)は相手を威圧させる威圧の能力(ちから)、どんな攻撃も撥ね返したり、攻撃をすればかなりのダメージを与えたりする武装の能力(ちから)、恐ろしい敵が近づいてくると胸騒ぎがする見聞の能力(ちから)全てを兼ね備えている。この世で異能の能力(ちから)を持つ者の中でも稀有な存在だ。それを赤軍が同等の能力(ちから)を持つとなるととんでもない事になる事はかよ子でも分かった。
(それでも、この杖は渡さない・・・!!)
 かよ子は赤軍やら異世界の敵やらが攻めてこようが、自分がどんなおっちょこちょいをしようが、必ず元の日常を取り戻す。そう誓い続けた。

 房子は和光が東アジア反日武装戦線共々逮捕されたと聞く。
「晴生が逮捕されたわね」
 丸岡と日高もその話を聞く。
「しかも、北海道から来た夫婦も揃って返り討ちにしたとか・・・」
「それに日高が行った時も清水の高校生の男子にやられたしな」
「嫌な事思いださないでくださいよ、丸岡さん」
「剣はうまく行ったのに何で他の三つは上手く行かんのだ?」
「きっと相手も勢力を伸ばしているのでしょう。でも、晴生や東アジア反日武装戦線の逮捕は取引の道具に使うしかないわ」
「取引の道具?」
「ええ、護符の行方が清水市からなくなっているという事よ。それを見つけ出す為にね・・・」
 房子を始めとする日本赤軍は執念深く、異世界の最上位と言われる道具を手に入れようとする。それさえあれば日本を強い国にする事ができる為である。
(杯は仕方ないとして、今度は護符と行くわ・・・)

 ありと悠一は飛行機に乗って北海道へと戻る。
(昨日は何とか杯を守り切って反日武装戦線達は逮捕できたけど、これで終わりという訳にはいかないでしょうね・・・。きっと実家の隣の家のかよちゃんが持ってる杖やさりの護符も狙ってくるはず・・・)
 ありは昨日の自分達の行動は単なるその場しのぎでしかない事と顧みるのであった。

 合唱コンクールの為の練習が始まった。早朝は近所迷惑になりかねないという理由で練習時間は放課後となった。指揮者となった丸尾が(なお学級会では指揮者を決めておらず、丸尾が勝手に自分が就任していた。皆は絶対歌いたくないからやりたかったのだろうと推測した)練習を課した。そして丸尾がミスを続ける度に幾度も練習を繰り返したかよ子は独唱の部分ではまだ少し自信がなかったのか、少し声が小さくなってしまった。
(また、おっちょこちょいしちゃったな・・・)
 かよ子は恥ずかしくなってしまった。この猛練習は運動会の早朝練習と同様に厳しいものであった。だが、完全下校時刻である午後五時を過ぎたら帰らなくてはならなかった。
「はあ、またおっちょこちょいしちゃった・・・」
 かよ子は今回の失敗でくよくよしてしまった。
「山田」
「す、杉山君!?」
 振り向くと自分の好きな男子がかよ子を呼んでいた。
「お前、結構頑張ってるよな」
「うん、でも今日は声が小さくなっちゃったよ・・・」
「大丈夫だって。お前、結構いい声してたからよ。自信持てよ!」
「う、うん・・・!あ、そうだ・・・」
「あん?」
「昨日、東京のりえちゃんが杯を盗られそうになったんだ」
「マジか!じゃあ、昨日の爆破事件のグループと赤軍一人が逮捕されたっていうのはそれが関係してんのか?」
「うん、赤軍は東京のテロリストと組んで杯を狙ってたらしいんだ。隣のお兄ちゃんの従姉のお姉さんが東京へ向かって何とか守れたけどね・・・」
「あいつら・・・。もしかしたら、今度はお前の杖かもしれねえ。気を付けろよ」
「うん・・・!」

 りえは自室のピアノを弾いていた。途中、ピアノの上に飾っていた色紙を見る。
(皆・・・)
 この色紙は夏休みに清水に遊びに行った時、友達になった子達からの寄書だった。
(かよちゃん、杉山君・・・。私も、絶対にこの杯は渡さないわっ・・・!!)
 りえは誓った。遠くの友達と共に元の日常を取り戻すと。

 別の日、かよ子の元に手紙が届いた。よく見ると・・・。
(りえちゃんからだ・・・!!)
 かよ子は封を開けて手紙を読んだ。

 かよちゃんへ

 この前、私の杯を狙ってきた人たちがいたわ。でも友達と一緒に何とか追い払ったわ。それに、北海道から来た人も助けてくれたのよ。その人はかよちゃんの事、知ってたわ。実家が清水って言ってたから、もしかしたら、かよちゃんの知り合いかもね。それじゃあ、またいつか会おうね。私は今度のピアノコンクールの関東大会に向けて頑張るわ。

 りえ

(りえちゃん・・・、やっぱり、あの事件に関わってたんだ・・・!!北海道の人ってのはやっぱり隣のお兄ちゃんの従姉の人だよね・・・)
 かよ子もまた遠くの友達とこの日本を守って元の日常を取り戻すと誓うのだった。

 そして、時はまた進んでいく。 
 

 
後書き
次回は・・・
「三たびの特訓」
 三河口は赤軍の次の狙いはさりの持つ護符ではないかと推測する。一方、かよ子は「大きな古時計」の歌の練習を日夜問わず続けていた。そんな中、笹山から一緒に練習しないかと誘われる・・・・!! 
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