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戦国異伝供書

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第百十四話 人取橋の戦いその七

「如何に大軍といえどな」
「今の様に攻められますな」
「ある敵を全力で攻めればその敵に正面を向く」
「その敵の背中を攻めれば」
「この通りじゃ」
 まさにというのだ。
「攻められる、しかしな」
「敵は退きましたが」
「また来る、夕闇が来るまではな」 
 まさにその時までというのだ。
「敵は攻め続ける」
「だからですな」
「そうじゃ、敵はまた来る」 
 それでというのだ。
「だからじゃ」
「さらにですな」
「来るからな」
「また退けますな」
「そうする、よいな」
「はい、最後まで戦いましょうぞ」
「そして生きるぞ」
 こう言ってだった。 
 茂庭と先陣を救った政宗は再び陣を整えてそうしてまた攻め寄せてきた五家の軍勢と戦った。やはり鉄砲も長槍も使い。
 粘り強く戦い続けた、そしてだった。
 日が落ちて夕闇となった、それから。
 夜が近付くと敵は退いていった、政宗はそれを見て言った。
「これでじゃ」
「戦は、ですか」
「終わった」
 自分のところに来た小次郎に述べた。
「明日はない」
「敵の英気は充分ですが」
 小次郎は確かな声で言う兄に問うた。
「それでもですか」
「佐竹家は大軍を出してきたな」
「はい、それは」
「万を超える数のな」
「敵の主力です」
「それだけ出してこちらを攻めればじゃ」
 そうすればというのだ。
「相模の北条家はどう出る」
「あの家ですか」
「佐竹家の敵は当家だけではないのじゃ」
「北条家もですか」
「あの家が動く」
 それでというのだ。
「だから長くは戦えぬ」
「我等と」
「それでじゃ」
「もう、ですか」
「退く、そして主力の佐竹家が退けば」
「他の家もですか」
「退くしかない」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「もうですか」
「この戦はな」
「これで終わりですか」
「我等は勝った、しかしな」
 それでもとだ、政宗はこうも言った。
「例え佐竹家がそうなろうともまだな」
「油断は出来ませぬか」
「万が一佐竹家が残るか」
 この戦の場にだ。
「他の家が戦うつもりならな」
「明日もですか」
「戦は続く、だからな」
「まだですな」
「ここで勝鬨をあげずな」
 そうしてというのだ。
「そしてじゃ」
「今宵はですか」
「守りを固めてな」
 そうしてというのだ。
「過ごすぞ」
「そうしますか」
「そして明日の朝敵がおらねば」
 その時にというのだ。 
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