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犬と温泉

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第二章

「もう出発したからクロ出していいよ」
「そうなの」
「自由にしてあげよう」
「クロ、出すね」
「ワンワン」
 クロはケースを開くと早速出て来た、そうして陽菜の席の横のソファーの上に来るとそこにチョコンと座った。
 それを見てだ、今度は母が言ってきた。
「暫くクロお願いね」
「うん、見ておくね」
「車が揺れたらクロが席から落ちたりするから」
 だからだというのだ。
「それでね」
「そのうえでなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「しっかりと抱いていてね」
「わかったわ」 
 娘は母の言葉に笑顔で答えた、そしてクロを自分が抱いた。母はそれを見てから娘にさらに言った。
「途中休憩する時にクロを出してお散歩とおトイレをね」
「してもらうのね」
「そうするわよ」
「だからリードも持って来たのね」
「そうよ、じゃあいいわね」
「うん、じゃあ車が停まって出る時はね」
「クロをお散歩に連れて行くわよ」
 こう言ってだった。
 実際にクロは途中パーキングの場所で散歩をしてトイレもした、何度かそうしつつ温泉に行って旅館でだった。
 クロは和風の畳の部屋の上に出された、そこで一家団欒をしてだった。
 風呂に入ったが陽菜は自分と母がいる湯舟の傍にいて決してお湯の中に入ろうとしないクロを見て母に言った。
「クロお風呂嫌いだし」
「時々ペットサロンに連れて行ってもでしょ」
「凄く嫌そうね」
「ワンちゃんはお水嫌いだからね」
 濡れることがなのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、クロはね」
「お風呂に入らないのね」
「そうなのね」
「こんなに気持ちいいのに。けれど」 
 陽菜はそのクロを見た、見れば。
 風呂には入っていないが機嫌はよかった、尻尾をぱたぱたとさせている。陽菜はそのクロを見て母に話した。
「楽しそうだし」
「陽菜と一緒にいてね」
「だからいいのね」
「ええ、このまま一緒にいましょう」
 母もこう言ってだった、お風呂の後は。
 夕食だったがこの時もだった。
 クロは自分のドッグフードをいつもの食器で食べている、陽菜はお刺身や山菜の天麩羅それにお鍋を食べながら言った。三人共もう浴衣姿になっている。
「クロだけいつものご飯ね」
「クロはドッグフードしか食べないからね」 
 今度は父が答えた、地元の酒を楽しんでいる。
「だからだよ」
「それでもいいのね」
「そうだよ、けれど寝る時はね」
 その時はとだ、父は娘に酒と食事を楽しみつつ話した。
「一緒だからね」
「いいのね」
「今夜も一緒に寝ようね」
「クロと一緒に」
「そうしようね」
 こう話しながら夕食のご馳走も楽しんだ、その後で一家はまた風呂を楽しんだ。そしてだった。
 クロと一緒に寝ることもした、そのうえで。 
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