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クラディールに憑依しました

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ヤるなら今だと思いました

「…………とりあえず、お疲れさん」
「お疲れ様でした」
「お疲れー」
「お疲れ様、シリカちゃん見てたよ、最後かっこ良かったよ」

「あ――ありがとうございます、もう、無我夢中で」
「あぁ、助かったよ、俺の『アバランシュ』は突進攻撃で、攻撃が終わった後も少し距離を走る嵌めになるんだ。
 ――――対人戦なら、ソードスキルの硬直を誤魔化せるほど距離を取れるんだが、巨大な相手だとその距離も意味が無くなる、マジで助かった」
「いえ、あたしも良く解ってませんでしたから…………」


 シリカが顔を真っ赤にして照れている、うむ、可愛いな。

「ところで、シリカ、あのフィールドボスってドロップは何だったの?」
「そう言えば確認してなかったな」
「あ、まだ見てませんでした」


 シリカと一緒にメニューを確認するが、出てきたのは指輪だった、俺のは青い宝石でシリカは赤い宝石が付いていた。


「コレはあれか? 一匹目がオスで二匹目が雌だったとか、そう言うモンスターか?」
「どんな効果があるのかしら? シリカちゃん、何か書いてある?」
「えっと、ダンジョンや迷宮区の中で使うとお互いの位置が判るみたいです」
「ワープ系のランダムダンジョンで重宝しそうだな――――誰か貰うか?」


 三人を見回すが誰も何も言わない――――何故?


「とにかく、シリカちゃん、お疲れ様――――アルゴの話だと、あのフィールドボスは日にワンペアしか出ないから、このフィールドはもう安全だよ」
「――――お前、この為に態々アルゴから情報を買ったのか?」
「そうよ、わたし達のPTでも難なくこなせる狩場を教えて貰ったの」
「……ご苦労なこって」

「褒めるんならちゃんと褒めなさい」
「――――――流石アスナ様です」
「それ絶対褒めてないッ!! ――もう、そう言う事する人にはお昼ご飯あげません!」


 アスナがメニューからランチボックスを出して、俺の死角に隠した。


「飯持って来たのかよ、上等のクッションマット敷くからそれで手を打ってくれ」


 俺もメニューを操作して、八畳ほどの巨大なクッションマットが出現する。


「結構大きいわね、コレなら全員座れるか……今回はそのクッションマットに免じて食べさせてあげるわ」
「あぁ、ありがたく頂くよ」


 ランチボックスを開くと中からサンドウィッチが出て来た。


『いただきます』


 狩りの後と言う事もあって、みんな黙々とサンドウィッチを租借する。


「アスナさんお料理上手ですね」
「――料理スキルで作ったから上手とは言えないんだけどね」
「いえ、あたしも料理スキルを持ってるから解ります、結構難しいんですよね」

「シリカちゃんも料理スキル持ってるの?」
「はい――他の人とPT組んだ時に…………街に帰れなくなって、晩御飯に食材を調理してくれたんですけど…………」
「あー、良く解るわそれ、あたしも大変だったから」

「それで、料理スキルを取る事にしたんです」
「今度一緒に作ろうか?」
「良いんですか? 是非お願いします!」


 あー、話に花が咲いてるなー。


「ねぇ? あんたは料理スキルとか持ってるの?」
「いや? 前にも言ったかもしれないが、料理とか家とか家具とかに金使うくらいなら装備を整えるから」
「じゃあ、ご飯とかどうしてんの?」
「基本外食だよ、後は我慢してるな」

「お金が勿体無いわね、アスナかシリカに作って貰ったら?」
「好きでも無い男に料理作るとか、拷問だろ、面倒臭過ぎて死ねるぞ? それともお前が俺の為に作ってみるか? ん?」
「――御免、言ったあたしが悪かった」
「解ってくれたら良いんだよ」
「…………何か納得行かないわ」

「気にするな、それに前に飯食ったのがシリカとぶつかった時に食ったチーズケーキだし」
「――――え? アレから何も食べてなかったんですか!?」
「うむ、散財したし、本物の身体は病院のベッドで点滴生活だしな、我慢すればどうと言う事は無い」
「駄目ですよ!? 身体壊しますよ!?」

「だから点滴生活だから壊れねーよ」
「心が壊れますッ!!」
「壊れねーって」
「あたしの分あげますから食べて下さい!」


 シリカにサンドウィッチを押し付けられる。


「あーぁ、大丈夫だって、ほら非常食もお菓子も一応持って歩いてるんだよ、みんなでお菓子でも食ってくれ」


 メニューを操作してナッツや饅頭のような白パンを大量に取り出す。


「あんた、こんなにあるのに何で食べないの?」
「食い飽きたから」
「…………あー、それはそれで微妙な問題ね、でも食べないと――本当に心が壊れちゃうかもよ?」
「そうなったらそうなった時さね、ほれシリカ、アスナの手料理なんて滅多に食えそうも無いからちゃんと食え」


 シリカに押し付けられたサンドウィッチを返す。


「シリカちゃんには、また作ってあげるわよ…………あなたには、偶になら作ってあげても良いわ」
「はいはい、お心身に沁みます――――アルゴ、見てないでコッチ来い」
「…………お前さんの索敵スキルは一体いくつダ」


 岩陰からアルゴが出てくる。


「黙秘させて貰おうか、悔しければ隠蔽スキルを鍛えるんだな……それで、こんな所で何してるんだ?」
「アルゴはコッチに座って、サンドウィッチ食べる?」
「それは遠慮しておこウ――――此処は圏外だしナ」
「え? どういう意味ですか?」


 シリカが菓子を食べながらモゴモゴしている。


「――――こいつが出した物を口にしたのカ!?」
「え? ――――かはッ!?」


 シリカが麻痺毒で倒れた。


「掛かったのは一人だけか、アスナとリズは学習してるな」
「あんたが出した時点で怪しさ全開だったわよ」
「こ――――これってぇ……!?」

「…………わたしも最初この人に会った時に毒を飲まされたわ」
「――――アレは酷かったナ」
「みんなが成長してくれて俺は嬉しいよ? シリカ、圏外――正確には『アンチクリミナルコード有効圏内の外』では毒を盛る事が可能だ」


 シリカのメニューを開き、倫理コードを解除する。


「そ――――それはぁ……!?」
「さぁ、にゃんにゃんしましょうねー」
「嫌ッー!?」


 俺が発したその台詞と共に、アスナから殺気が発せられた!!


「アスナっ!? 抜刀は駄目よ!? オレンジに――――犯罪になっちゃうよッ!!」
「はっはっは、ほら考えろ、血盟騎士団副団長様よ、オレンジにならずに俺を止めてみろよぉ!」


 アスナが細剣を握り締め、目付きだけで俺を殺しそうな勢いで睨んでくる。


「――――普通に引っぺがせば良イ、数人で犯罪にならないギリギリで力を抑えて引き剥がせば問題なイ」
「…………教えるなよ」


 シリカから手を離して解毒結晶を使う……シリカが涙目でメニューを開き倫理コードをロックした。


「……シリカ、解毒結晶はどうした? さっきの戦闘で毒を使う奴が居たのか?」
「…………あ――いえ、居ませんでした……まだ持ってます」
「解毒結晶を使わなかった理由は?」
「…………いきなりだったので、頭にありませんでした」

「次から気を付けろ? PTを組むのは俺達だけじゃないからな?」
「一応シリカには教えてあったんだゾ? だが……引っかかってしまっては警告も意味が無イ」
「…………ごめんなさい」


 ぽろぽろとシリカが泣き始めてしまった――――アスナとリズの視線が痛い。


「――――後で圏内戦闘、付き合ってくれるわよね?」
「了解した、副団長殿」


 今日シリカは頑張った――フィールドボスも倒せて、アスナと料理の約束をして、美味しいご飯とお菓子を食べて充実した一日になる筈だった。
 それなのに俺が食わせたのは麻痺毒で、倫理コードを解除させられて、毒を食ったお前が悪いとばかりに責められて――――酷い虐めだ。
 アスナがシリカの涙を見て俺を許せないのは仕方のない事だ、アスナとの圏内戦闘が終わったら、シリカにはしっかり謝っておこう。


「さて、内輪揉めはそこまでにしてくレ、実は頼みたい事があってコッチに寄ったんダ」

「――何かあるのか?」
「迷宮区だヨ、この先で見つけたんダ――――これから一緒に回らないカ?」


 アルゴが突然言い出した提案に、俺達はしばらく固まるしかなかった。 
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