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歪んだ世界の中で

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第一話 底のない絶望その十四

 具体的に何処に行けばいいかわからずだ。こう言うのだった。
「御免、特にね」
「行く場所ないの?」
「友井君のところもさっき行ったところだしそれで君を連れて行くのも」
 どうかと思いだ。それでなのだった。
「特にね」
「それじゃあね」
 希望が困っているとだ。逆にだった。
 千春からだ。こう言って来た。
「千春が案内してあげるね」
「君が?」
「千春よ」
 君と言われたことにもだ。訂正を言ってきた。
 そうしてだ。希望の左手を自分の右手で掴んで。
 そうしてからだ。引っ張って来て言って来た。
「案内してあげるから」
「案内って」
「色々な場所。千春この町にずっと住んでるから」
「ずっとって」
「そう、神戸に」
 彼等が今いるだ。神戸にだというのだ。
「ずっと前からいるから」
「生まれ、神戸なんだ」
「そうよ。神戸のね」
「神戸の?」
「山のところなの」
 こう希望にだ。言うのだった。
「そこにずっと住んでるの」
「ふうん、そうなんだ」
「じゃあ色々なところ行こう」
 希望の手を。手首を握ったままでの言葉だった。
「それじゃあね」
「うん、じゃあ」
「千春が全部案内するから」
 千春の声だけが明るい。その笑顔も。希望は彼女とは全く反対だった。
 暗く沈んだ顔だ。その顔で千春に応える。
「お願いするよ」
「希望、暗いのね」
 その暗さにだ。千春も言ってきた。
「どうしてもそうなるのね」
「御免、ちょっとね」
「けれど暗いのは消えるから」
 だからだというのだ。
「一緒に行こう。今から」
「うん、それじゃあね」
 こうだ。弱い声で応えてだった。希望は。
 千春と出会い二人で歩きはじめた。これがはじまりだった。


第一話   完


                   2011・12・27 
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