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歪んだ世界の中で

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第一話 底のない絶望その六

 何時でも二人一緒になった。しかしその真人にもだ。
 こうした言葉がだ。かけられる様になっていた。
「あんなのと一緒にいても何にもならないよ」
「あんたの為にならないよ」
「さっさと縁切れば?」
「そうすればいいじゃない」
 こうだ。言われるのだった。しかしだ。
 そう言われてもだ。真人だけはだった。
「いえ」
「いえ?」
「いえって?」
「いえって何だよ」
「僕は遠井君の友達です」
 こう彼等に返すのだった。毅然とだ。
 そしてだ。彼等に言うのだった。
「ですからそれはありません」
「縁切らないっていうのかよ」
「あんな奴とか」
「ずっと一緒にいるってのね」
「そうです。僕達は友達です」
 それはだ。絶対だと答える真人だった。
 そしてだ。また言う彼だった。
「それに皆さんはです」
「何だよ、俺達かよ」
「俺達がどうしたって?」
「どうだっていうのよ、私達が」
「一体何だってのよ」
「遠井君のことを何もわかっていません」
 毅然とさえしていた。真人はあくまで希望の側に立って言うのである。
「遠井君の様な素晴らしい方はいません」
「何処がだよ、あんなデブ」
「運動も駄目、スポーツも駄目」
「しかも性格だって暗いし」
「何処にいいところあるのよ」
「それに素晴らしいって」
「あいつの何処がなのよ」
 こうだ。彼等が嘲笑と共に言うこともだ。真人はだ。
 何の曇りもない目でだ。答えたのである。
「それはお付き合いすればわかることです、遠井君と」
「友達になる?馬鹿言えよ」
「そうだよ、あんなネ暗デブとな」
「いても暗くなるだけだろ」
「運動音痴で馬鹿のな」
「何の取り得もない奴でしょ」
「そんなのと付き合うって」
「何の得にもならないわよ」
 あくまでだ。彼等は嘲笑と共に言うだけだった。
 だが真人は違っていた。その絶望的な真人とだ。
 ずっと共にいた。二人の絆は自然とより深く強いものとなる。
 そしてそのことを確め合いながらだ。希望はだ。
 夏に近付く中でだ。彼にこんなことを提案したのである。
「よかったらだけれどさ」
「何ですか?」
 学校の図書館に二人でいた。一学期の期末試験に対する勉強でだ。
 二人で勉強する中でだ。希望は真人に言ったのだ。
 今二人は図書館の大きなテーブルに横に並び座っている。そうして座ってノートに教科書を開いているのだ。希望が真人に勉強を教えてもらっているのだ。
 その中でだ。彼は言ったのである。
「このテストが終わったらさ」
「もうそれでお休みですね」
「夏休みもかな」
「勿論ですよ」
 ここでもにこりと笑って答える真人だった。 
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