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歪んだ世界の中で

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第一話 底のない絶望その一

                    第一話  底のない絶望
 背は高いがどうしようもなく太っていた。百キロ近くはあるだろうか。
 遠井希望は肥満している。顔も身体もだ。
 黒髪を短く刈っており風貌は野暮ったく見える。それにだ。
 肥満体故運動は苦手でしかも学校の成績もよくない。しかしその彼でもだ。
 好きな相手ができた。というよりかはだ。
 その彼の友人達がだ。こう彼に勧めてきたのだ。
「あの娘御前のこと好きみたいだぜ」
「ほら、G組の野田さんな」
「あの娘御前のことずっと見てるんだよ」
 こうだ。彼等は食事中、クラスで弁当を食べながらだ。彼に言ってきたのだ。
 だが彼はだ。最初その話を聞いてだ。
 信じられないといった顔になってだ。そして彼等に言ったのである。
「嘘だろ、それ」
「いや、嘘じゃないって」
「見てるんだよ、実際にな」
「だからどうだよ。告白するか?」
「自分からな」
「いや、やっぱり嘘だろ」
 自分の肥満している容姿のことも運動神経のことも成績のこともだ。彼はわかっていた。その彼がだ。
 もてるとは自分でも思えなかった。それでなのだった。
 友人達の言葉を信じられずにだ。また言った。
「僕、そういうのは」
「彼女なくてもいいのかよ」
「自分から告白すれば絶対に成功するのにか」
「それでもいいのか?」
「勿体ないぜ」
「それは・・・・・・」
 何人からもそう言われてだ。彼もだ。
 悩んだ顔になりだ。そうして言うのだった。
「ちょっと考えるよ」
「おいおい、すぐに言えばいいのにな」
「そうしたら絶対に成功するぜ」
「それでもしないのは勿体ないけれどな」
 彼等は屈託のない笑顔でだ。希望に言う。しかしだ。
 その彼等の話を聞いてだ。そうしてだった。
 下校中にだ。友人の一人であるだ。友井真人に相談したのだ。
 肥満しているが背の高い希望とは対象的にだ。真人は痩せていて小柄だ。髪は短く刈り眼鏡をしている。目は大きく優しい目をしている。希望の幼稚園から高校までの親友だ。
 同じ八条高校普通科、二人が今通っているその高校に一緒に受けてだ。よく一緒にいる。彼にとってはまことに有り難い、まさに無二の親友である。
 その彼にだ。下校中に歩きながらだ。相談したのだ。
 真人はその話を希望から聞いてだ。そしてだ。
 希望にだ。こう言ったのである。
「よくわからないですが」
「それでもどう思うかな」
 敬語調、礼儀正しい彼に尋ねる希望だった。
「僕は告白すべきかな」
「もう少し様子を見た方がいいと思います」
「もう少しなんだね」
「告白は僕もしたことがないです」
 真人はそうしたことには疎い。だからそうした経験もない。 
 だが彼は親友のことを気遣いだ。親身になって彼に話すのだった。
「ですがそれでもです」
「慎重にいくべきなんだね」
「遠井君のお友達。同じクラスのですね」
「うん、その連中は僕にすぐに告白すべきだって言うんだ」
 このことをだ。真人に話すのだった。
「すぐにでもってね」
「そうですか。その野田さんというのは」
「僕と同じクラスの娘だよ」
 それがそのだ。彼をいつも見ている娘だというのだ。
「吹奏楽部のね。素子っていうんだ」
「野田素子さんですか」
「どんな娘か知ってるかな」
「いえ、知らないです」
 真人は首を残念そうに横に振ってから答えた。 
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