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白き竜の少年

作者:刃牙
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不合格率66%

「今日からあなた達の担当上忍になった葛葉リンネです。同じ班同士仲良くしていこうね!」

第6班の担当上忍となった葛葉リンネは笑顔で挨拶を述べた。しかし、下忍達の反応は芳しくない。ハルマは無言で反応を見せず、カナは二人に聞こえるように悪態を吐く。

「こいつらと仲良くできるとは思えないがな」

「よろしくな!先生‼︎」

前途多難な先行きを感じさせる顔合わせだが、リンネは気を取り直して話を進める。

「さっ!まずは第6班だけで演習をしようか」

「演習?」

「そう!不合格率66%の演習♪不合格の場合は忍者学校に戻ってやり直しのオマケ付きよ! 」

3人は顔を顰めた。それはそうだろうと思う。今更、忍者学校に戻りたいなどと思う筈がない。

ただ、演習は担当の上忍が行う。彼らから見て、下忍になるに値しないと判断されれば容赦なく落とされる。

その結果が平均不合格率66%だった。3人いたら、そのうち2人は不合格となり、忍者学校に戻る事になる。そう言われて動揺しない者はいないだろう。案の定、レツがリンネの発言に噛み付く。

「じゃあ!卒業試験は何だったんだよ⁉︎」

「あれ?あれは忍になれる素質があるかを見極める為のテストよ」

リンネは3人にプリントを配る。プリントには集合時間と集合場所。それに演習に必要な道具などが記載されており、下部には赤字でデカデカと不合格率66%と載っている。

「このプリントをよく読んで準備しておいてね」

リンネは明日の事を想像して、期待に胸を膨らませる。今からワクワクが止まらなかった。






日も落ち、人通りが少なくなってきた頃にハルマは家に向かって歩いていた。千手一族の家紋が描かれた暖簾がある門を潜り抜け、一族の集落に入る。すれ違う度に千手一族の者達がこちらを睨むのは勘違いではないだろう。

憂鬱な気分になりながら、歩いていると自宅のあるアパートが見えてきた。同時にアパートの前で黒衣に身を包んだ壮年の男が腕を組み、仁王立ちしている姿を確認する。

ストレートの茶髪をヘアゴムで纏めているその男の名を千手ソウマという。千手一族宗家の当主にして、ハルマとアズサの実の父親でもある。

「随分と遅かったな……ハルマ」

眉間にシワを寄せ、睨みつけるようにソウマの赤眼がハルマを見つめる。早く家に帰って明日の準備をしたいハルマは素っ気ない態度で対応する。ただでさえ、嫌いな相手なのだ。今すぐにでも帰って欲しいというのが本音だった。

「千手ソウマ……何の用だ?」

「そう邪険にするな。話をしに来ただけだ」

そう言ってソウマは腕を下ろし、ぎこちなく笑う。その笑みを見て、ハルマは溜息を吐く。

笑っているつもりだろうが笑えていない。口が吊り上がり、不気味な笑みになっている。だが、敵意があるわけではない事は分かった。渋々ではあるが、話を聞く事にした。

「それで?話って何だ?」

「……下忍選抜試験には合格できそうか?」

「するさ。必ず」

「そうか……今年卒業試験に合格した一族の者のうち、残っているのはお前とアズサだけだ。下忍になれば一族の者として貢献してもらわねばならん」

言葉を重ねる度にハルマの顔が歪む。千手一族に貢献するつもりなどない。お前達がしてきた事を忘れたのかと叫んでやりたかった。

話を聞くだけ無駄だった。これ以上、聞くのは時間の無駄だろうと判断したハルマは千手ソウマの横を通り過ぎ、家に入る。

「明日の準備をしなくちゃな」

『奴を八つ裂きにしなくてよいのか?妾なら貴方に力を与えられる。全てを思い通りにする力を』

そう囁く声には聞こえないフリをした。





朝の10時。ハルマ達の目の前にはフェンスで囲まれた広大な森が広がっていた。そこはは第4演習場として、忍達の修行の場として親しまれている。これからハルマ達はこの場所で演習をする事になる。

「さてと。それじゃあ、始めましょうか」

影分身体のリンネが3人に説明を始める。右手には忍と書かれた巻物がある。今回の演習はあの巻物を探し出すようだ。

「ルールはいたって簡単。明日の日の出までにこの演習場内にある忍と書かれた巻物を私のいる中央の監視塔まで持って来れたら終了よ」

「巻物は1つしかないからどうするか考えてね」

ハルマはリンネの言葉に違和感を覚える。一見すると2人との奪い合いが焦点となるように感じるが、ならばこの違和感の説明がつかない。リンネを見ると彼女はニヤリと笑う。やはり何かあるのか。しかし、その正体が掴めない。

そうこうしているとリンネが開始の合図を告げる。考えている時間は無さそうだった。

「それじゃあ、始め!」
 
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