覇王の隣に戦闘狂 Ruler with Berserker
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逃げるが勝ちよ 2
前書き
_〆(。。)
「今この場所は私と私が触れた貴方の二人だけが動くことを許されているのよ」
銀髪の少女は城嶋戌を見詰めている。
恐らく柊矢と同じ10才くらい。
(巨大いな!?)
やけに胸の発育が良かった。
「ロリき……君も【ルーンズ】?」
「?……ええ、私は」
少女は名乗ろうとしたところで動きが止まる。
見ているのは城嶋戌の後ろだ。
「嘘ッ。こいつまさか高位能力者? 私の能力を無理やり解除しようとしてるッ!」
城嶋戌は溜め息を吐く。
「やっぱそう上手くはいかないよなぁ~」
彼が振り向くと白髪の男は全身が赤い光に包まれて、瞳も赤く爛々と輝いていた。
その腕が少女に伸びようとしている。
「あの子達と逃げなさいっ。貴方が触れれば『極限停滞』は解除されるわ!」
「りょーっかいっ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
城嶋戌の切り替えは早かった。
前世では子供の頃から人を殺してでも生き残ってきたので決断に迷わない。
前世で知り合いの岳や要もそうだ。
本来なら銀髪の少女を置いていかない。
しかし今は鷹城兄妹と怪我をした女性を駅の外まで逃がす方が優先される。
城嶋戌は仲間に触れて停滞を解除。
「桃花ちゃん、俺がおんぶする。柊矢は怪我してないから着いてこれるな?」
「当たり前だろ」
「で、でも、あの女の子が……」
「二人と要が背負ってる女の人を逃がしたら俺が戻って助けるから」
城嶋戌は桃花を背負ってホームの階段を降りる途中で苦しそうな声を聞く。
銀髪少女のものだが黙殺。
そして階段を降りきった彼が気付いた。
要も岳も桃花も同じくだ。
柊矢が階段の手前で止まっている。
「おいっ! 早く下りてこいっ!!」
柊矢の耳に岳の声は届いているが、柊矢の足は踏み出そうとしない。
「あのバカ、まさかとは思うがこんな時に悪いクセが出たんじゃないだろうな……」
城嶋戌は顔をしかめながら柊矢を見ていた。
もしそうならここで片を付けることになる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「容量が尽きたな。子供のルーンズでは、さほど【魔素】を蓄えられない」
大人のルーンズ相手には不利だ。
ましてや男は10年以上に渡って軍事訓練を受けている兵士のルーンズ。
正規軍でないテロリストとはいえ、素人が勝てるような鍛え方はしていない。
如何に強力な能力を持っていても、稀少で価値の有る能力であっても、戦闘においては相手を行動不能に出来ない能力は無力。
戦闘向きでないルーンズの能力と普通の人間が持つ力を組み合わせて戦闘型のルーンズに勝つことは不可能ではない。
しかし実戦経験が皆無の銀髪少女がそれをするのはハードルが高過ぎた。
「あ、あぁぁ……!」
少女の声に絶望が混ざる。
それを聞いた柊矢は思う。
何故あの女の子は逃げなかったのか。
その為に能力を使えば助かったのに。
(俺たちと女の人を守ろうとしたんだ。自分を危険に晒してまで……)
柊矢が階段の下を見て微笑む。
「ごめんみんな。俺、やっぱ行けないや」
見捨てることで逃げ切り生き残っても絶対に後悔すると確信できる。
そんなのは御免だ。
岳・要・城嶋戌は気付く。
柊矢の様子が変わったことに。
「はっ。しゃ~ね~な~」
「まぁ、ちょっと遅れて行くよ」
「精々あの娘に格好つけとけ」
城嶋戌は屈んで桃花を背中から降ろす。
そして彼女の頭に手を置いた。
「今からお兄ちゃんを助けてくるから危なくなったら逃げるんだよ」
「城嶋戌さん。お兄ちゃんをおねがいっ」
「女の人は俺と要で治しとくから」
城嶋戌は後ろ向きに手を振ると階段を上がりながら集中力を高めていった。
後書き
_〆(。。)
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