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おっちょこちょいのかよちゃん

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83 運動会の開幕

 
前書き
《前回》
 かよ子は道具の片付け係においておっちょこちょいをしないようにと常に意識する。帰宅後、かよ子は母から東京で起きているビルの爆破事件は極左暴力集団、通称「東アジア反日武装戦線」による暗躍と知る。その組織の結成の所以はアイヌ民族の血を引く人間が差別されて来た事、そして沖縄でもそこの人間の差別があった事も聞いたかよ子は沖縄の人の気持ちも考えながら沖縄民謡の練習に臨むのだった!! 

 
 森の石松はまる子が必死に走っていく姿を見た。気付かれぬよう追ってみると彼女の通う小学校だった。大野に遅刻した事を怒鳴られている。
(さくらももこか・・・。あの者には炎の石を持たせたが。あの者、何か(たる)んどる・・・。組織『次郎長』の構成員として恥ずかしくないのか、全く・・・!)
 石松はまる子に呆れながら姿を消した。

 三河口は北勢田、濃藤と下校中、石松と出会う。
「三河口健、北勢田竜汰、濃藤徳崇」
「森の石松・・・?」
「去る日の祭り事はご苦労であった。ところでだが・・・」
「頼み事か?」
「ああ、山田かよ子らがいる学び舎では運動の競い合いがあるそうであるな」
「ああ、運動会の事だね」
「お主ら、護衛を頼みたいのだが・・・」
「ああ、いいよ。俺達も丁度見に行こうと思ってたところだからね。でも濃藤は妹さんが通う学校でも運動会があるって言ってたから生憎いけないんだが・・・」
「いや、有難い。向こうの方の学び舎も護衛がおれば問題はなかろう」
「そうだね」

 夜、かよ子はある事を誓いながらベッドに入った。
(絶対におっちょこちょいしないように気を付けよう!!そして杉山君達に恥をかかさないように・・・!!)
 そう誓って眠りについた。

 杉山も練る準備をしていた。
(明日の運動会、必ずベストを尽くしてやる!大野と共に皆を動かしてきたし、俺達の特訓の成果を見せるんだ!!)
 杉山も強い決意を持って寝た。

 かよ子の通う小学校の運動会が始まった。かよ子は運動会当日ですら遅刻ギリギリで到着したまる子とばったり出会った。
「あ、まるちゃん、急いで!もう皆着替え終わってるよ!」
「ええ!?」
 まる子は急いで体操着に着替えた。そして時間になった。大野と杉山が黒板の前に立つ。
「よし、皆!今日は待ちに待った運動会だ!!全力で戦うぞ!!」
 大野の言葉に皆は「オー!!」と返事をした。

 かよ子の両親は娘の運動会の観戦に出かける。
「あ、まきちゃん!信彦さん!」
 隣人の奈美子が呼ぶ。信彦というのはかよ子の父の名前である。
「健ちゃんもかよちゃんとこの運動会観に行くって」
「あら」
「この前の文化祭に来てくれたお礼もあるし、もしかしたら赤軍とかが乱入してテロを起こさないか警備も兼ねる為だって。健ちゃん、迷惑かけんようにね」
「はい、畏まりました。宜しくお願い致します」
「あら、宜しく。かよ子も喜ぶわ」

 校庭には多くの保護者達が現れた。三河口は長山の両親と同行していた北勢田と合流した。
「お、北勢田」
「ああ、ミカワか」
「今の所は俺の心臓は異常なしだが、そちらは?」
「こっちも特にない」
「なら、開会を待つか」
「あら、三河口君、北勢田君じゃない」
 二人は聞き覚えのある声の方を振り向いた。
「奏子ちゃん!?」
「徳林さんも来てたのか」
「うん、近所の子が出てるからね」
「笹山かず子ちゃんかい?」
「ええ、そうよ」
「最近藤木君とは仲良くやってるかね?」
「まあ、本人に聞いてみないと・・・」
「それにしてもここの小学校に通ってたら俺ももっとマシな小学校生活になってたのかな・・・」
「あ・・・」
 北勢田と奏子は三河口の波乱で壮絶な小学生時代の話を聞いている為、返答は上手くできなかった。
「まあ、この運動会の観戦を楽しんでみるか」
「ええ、そうしましょうよ」

 運動会の開会の時刻となった。まず全校生徒が整列する。6年生の一人が選手宣誓を行った後、校長の(無駄に長い)話を終えた。生徒達は各々の指定された応援席に着く。そしてかよ子達はまずは最初に行われる1年生の玉入れを観戦した。続いて2年生の時間制限ドッジボール、そして6年生のリレーが始まる。まる子は自分の姉が走る番になり、姉を思わず応援した。そしてクラスメイト達もまる子の姉を応援する。彼女は恥ずかしがりながらもその応援に応えて全力疾走した。そして次は4年生のソーラン節、そして3年生女子の借り物競走が始まった。
(よーし、おっちょこちょいしないぞ!!)
 次々の女子達が走ってカードを拾い、書かれた物や人を持って来たり連れて来る。そしてかよ子が走る番となった。
「お、かよ子の番か」
「かよ子、頑張って!」
 両親は娘を応援する。体育の先生の銃の発砲と共にかよ子含む6名の女子が走り出す。そしてカードを拾う。カードには「1年生の女子」とあった。かよ子は1年生の応援席へ向かった。
「ねえ、誰かカードに『1年の女子』って書いてあったんだ、誰か来てー!!」
 かよ子は呼ぶ。
「こ、こはる、いく!!」
 応えたのは長山の妹・小春だった。
「小春ちゃん!ありがとう!」
 かよ子は小春を連れてゴールへと向かった。結果は3等だった。
「かよちゃん、やるな」
「まさか、小春ちゃんを連れて行くとは」
「カードに『1年生の女の子』って書いてあったのかしら?」
「だろうね」
「あ、次はかず子ちゃんが走る番ね!」
 奏子は笹山を応援した。笹山は玉入れの玉を借りて2等でゴールした。
「かず子ちゃんもやるね」
「ええ」
 その時、「笹山さん、凄いぞ!!」と叫んだ男子がいた。
「あれは藤木君かね?」
「そうみたいね」
 高校生三人は笑った。一方の笹山は恥ずかしがった。
(もう、藤木君ったら・・・!!)
 次は冬田の走る番が来た。
(大野くうん、頑張るわあ!!)
 冬田は大野の事を考えてやる気を(みなぎ)らせた。冬田は駆ける。カードを拾うと「帽子」とあった。女子は鉢巻の為、男子の助けが必要である。
「だ、誰か帽子貸してえ!」
 冬田は叫んだ。その時、4年生の男子が現れた。
「俺の持ってけ!」
「ありがとおう!」
 冬田は帽子を貰って走った。結果は4等だった。
(はあ、もっと早く着けられたら大野君にも褒められたのに・・・)
 冬田は少し落ち込んだ。

 次は3年生男子の障害物競走だった。跳び箱を跳び、平均台を渡り、網を潜って最後はケンケンパッをしてゴールである。
(笹山さん、頑張るよ!)
 藤木は笹山の事を考えながら走り出した。だが、藤木は途中で網を足に引っ掛かって抜けなくなるハプニングを起こしてしまい、結局ビリの6等となってしまった。
(はあ、笹山さん・・・)
 藤木は恥をかいたと思い、落ち込んだ。そして長山が走る。長山は3等だった。次は杉山が走る。
(す、杉山君、頑張って・・・!!)
 かよ子は心の中で応援した。杉山は走る。跳び箱をあっさり跳び、平均台も何の不安もなく渡った。そして網もさっと潜ってケンケンパッをする時には2位以下に大きく差を付けた。もちろん1等で決めた。
(凄い、杉山君!!)
 かよ子は心の中で杉山を祝福した。そして大野が走る番が来た。
「大野くうん、頑張ってえ~!!」
 冬田は大声で大野を応援した。大野も圧倒的な速さで1等となった。障害物競走が全て終わり、男子達が退場する。大野が席に戻るやすぐに冬田が出迎えた。
「大野くうん、凄かったわあ~!」
「ああ、サンキューな、冬田・・・」
 大野は冬田に引きながら礼をした。
「す、杉山君、1等、おめでとう・・・」
「え、ああ、お前も借り物競争、頑張ってたな」
「う、うん・・・!!」
 かよ子は嬉しくなった。
「藤木君、お疲れ様」
 藤木は笹山から声を掛けられた。
「あ、うん、でも、ビリだったよ」
「でも藤木君だって頑張ってたわよ」
「ありがとう、笹山さん・・・」
 藤木は笹山から慰められて嬉しくなった。次に5年生の大縄跳びが始まった。そしてまだ踊りを披露していただけの4年生の競技が始まった。ピンポン玉に乗せたスプーンを運びながら走る競技だった。それが終わると昼休みとなった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「激戦化する後半戦」
 運動会は続く。休憩の昼食で両親や三河口と顔を合わせるかよ子。北勢田と顔を合わせる長山。奏子と顔を合わせる笹山と藤木。そして運動会は午後の部に入っていく・・・。 
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