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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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騎士道プロミス(小日向未来誕生祭2020)

 
前書き
恭みく推しの皆さん、お待たせしました。未来さんの誕生日回です。
プレゼントは勿論……いえ、分かっていてもここで言ってしまうのは野暮でしょう。

皆さんが待ち望んでいたものを、ようやくお届けできる事を大変喜ばしく思います。
それではどうぞ、お楽しみください! 

 
「それで、相談ってのは?」

ある日の放課後、翔と純は恭一郎から相談がある、と声をかけられた。

特に用事もなく、クリスも今日はクラスメートらと遊んでくるらしいので、彼は恭一郎と共に音楽院の近くにあるカフェへと向かう。

窓際の席に着き、向かい合って座った恭一郎はしばらく躊躇うような表情だったが、やがて思い切ったようにこう切り出した。

「実は……好きな人が、出来たんだ……」
「ほう……」
「へぇ、どんな人?」

二人とも、さほど驚いた様子ではない。
まるで相手を察しているかのように、少しニヤッとしながらそう返す。

「清楚で、お淑やかで、しっかりとした芯のある人だよ。でも、ちょっと危なっかしい所もあって……だから、守ってあげたくなるんだ」
「なるほど。確かに、恭一郎にはお似合いかもしれないね」
「そ、そうかな?」
「ああ、きっと良い関係を築けるさ。それで、俺達に何を聞きたいんだ?」
「それで、その……」

水を一杯飲み、緊張した心を一旦落ち着かせる恭一郎。
コップを置くと、彼は神妙な顔付きで二人に問いかけた。

「その人に告白したいんだけど……どうすればいいと思う?」



「日替わりケーキセット2つと、秋のフルーツパンケーキです。ごゆっくりどうぞ」

狙い済ましたかのようなタイミングで、それぞれ注文したケーキが届く。

「ありがとうございます」

純はウェイトレスに礼を言い、レシートを受け取った。

「なるほど。さしずめ、俺達デートプランを建てて欲しいって所か?」
「いやっ、デート……はしたいんだけれど、まだ告白したわけじゃないし……」
「デートからの告白、ってパターンはよくあるよ。翔もその一人だし」
「まあな」
「でも、向こうが誘いを受けてくれるとは限らないし……」
「なら、恭一郎にとっての理想はどうなんだい?」
「僕にとっての理想?」

首を傾げる恭一郎。
補足するように、翔が続ける。

「あるだろ?理想のシチュエーション。こんな場所で、こんな風に告白したい……ってやつ。恋してる男なら、誰にだってあるはずだ」
「僕の……理想……小日向さんと……」

純は質問の合間に切ったパンケーキを口に運ぶ。
恭一郎が悩んでいる間、じっくりと味わいながら咀嚼し、やがてそれを飲み込んだ頃に答えは返ってきた。

「──なら、そうしてみたらいいんじゃないかな?」
「でも、ちょっと気障っぽくないかな……って」
「そのくらいでいいんだよ。一世一代の大勝負、どうせなら精一杯カッコつけた方が、後悔しないぞ」
「恭一郎、君が好きになった人がどんな子か、思い出してみなよ」
「小日向さんの事を……?」

もうボロが出まくっているが、本人は気づいていないようなので、翔と純は笑って流す。

「そう。小日向さんは、君の精一杯をちゃんと受け取ってくれる人だ。違うかい?」

恭一郎は少し考え込み、やがて首を横に振る。

「なら、心配は要らないさ。でも、まだ不安があるなら……」
「俺達は既に、想い人への告白を経験した身だ。アドバイスなら、幾らでもするさ」
「2人とも……ありがとう!恩に着るよ!」

その後、純からのアドバイスを受けた恭一郎は、晴れ晴れとした顔で店を出て行った。

そして3日後、11月7日にその日はやってきた。

ff

その日の放課後。恭一郎は放課後、ある場所へと未来を呼び出した。

わざわざ手紙を書き、朝早くからリディアン学生寮のポストへと投函した事を知っているのは当人達の他は、アドバイスした二人くらいである。

だが、待ち合わせ場所へと向かう未来の背後には、こっそりと後をつける五つの影があった。

「この先って確か……あの公園だよね?」
「間違いないわね。ロケーション的にも、恋の匂いがプンップンするわッ!」
「日付的に考えても、これは計画的な犯行ですわ。何だかドキドキしますね」

亜麻色のショートヘアー、茶髪のツインテール、金髪ロングの女生徒達が、それぞれ塀の影で呟く。

安藤創世、板場弓美、寺島詩織。言わずと知れた、響や未来のクラスメート三人組である。

「いや、恋かどうか断定するには早いんじゃないかなー」
「いいや、間違いなくあれは恋よッ!さっき飛鳥にLINEで確認したら、恭一郎も一人で同じ場所に向かってるって言ってたもん」
「ええっ!?ってことは、本当に……?」
「小日向さん、学校でも落ち着きがありませんでしたし、もしかしたらもしかするのかもしれませんわ!」

キャーキャーと盛り上がる三人。

その反対側の電柱の影では、未来の親友である彼女が、ニヤニヤしながらその後ろ姿を見つめていた。

「未来にもとうとう彼氏が出来るんだ~……お祝いしなきゃね、クリスちゃん!」
「あのなぁ……なんであたしが巻き込まれてんだよッ!!」
「クリスちゃん!しーッ!バレちゃうよ!」

キレ気味に叫ぼうとしたクリスを、響は慌てて抑える。

「まったく、このバカ……何であたしまで出歯亀に巻き込むんだよ」
「だって、クリスちゃんも見たいでしょ?未来が恭一郎くんに告白するところ~」
「そーいうのは放っておくべきだろうが!?」
「あ、そろそろ移動しないと見失っちゃうよ!」
「話聞けよバカッ!!」
「こーらビッキー、あんまりキネクリ先輩を困らせちゃダメでしょ?」
「変なあだ名で呼ぶんじゃねぇッ!」

未来にバレない程度にわちゃわちゃしながら、5人は物陰を移動していく。

そして遂に、未来と恭一郎の待ち合わせ場所……翔が響に告白したあの公園へと辿り着いた。



「恭一郎くん、待たせちゃったかな?」
「ううん。僕も、今来たところだよ」

沈む夕陽に照らされて、2人の顔がオレンジに染まる。

恭一郎は、未来の顔を見つめて思う。

(ああ……やっぱり、小日向さんの顔……綺麗だな……)

期待と不安に胸を高鳴らせ、緊張で強ばった肩を解すために深呼吸する。

そして、先程綺麗だと褒めたその顔を真っ直ぐに見つめた。

「恭一郎くん?」
「未来さん……笑わないで聞いて欲しい」
「……うん」

彼の真剣な顔に、未来は思わず息を呑む。

陽光が傾くと共に訪れる沈黙。互いの息遣い、心臓の鼓動さえ聞こえそうな静けさが広がる。

「小日向さん……いや、未来さん」
「ッ……」

初めて名前を呼ばれ、未来は思わず肩を跳ねさせる。
直後、胸の奥が高鳴るのを感じ、未来は次の言葉を待った。

「初めて出会った時からずっと、君に夢中でした」
「ッ!それって……」
「君の事を思う度に胸が高鳴って、君の隣に居られるだけで嬉しくて……でも、中々伝える事が出来なかった」

ルナアタックの日、崩壊したリディアンの地下で初めて出会った日を思い出す。

次にアイオニアンでの共学や、その中で言葉を交わした時間の中で、彼女へと抱いた感情を自覚していった事を。

それから、つい先月のあの事件を……。

「でも、この前の事件で、未来さんがあんな事になって……凄く後悔した。あの場に居たのに何も出来なかった事が悔しくて……君に伝えたい言葉をそのまま留めていた自分に腹が立って……。あんな思いは二度としたくない。だから……ッ」

恭一郎は未来の手を取ると、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめる。

「未来さん……僕は、君の事が大好きです」
「恭一郎くん……」

そして、恭一郎は片膝を付くと、彼女の顔を真っ直ぐ見上げた。

「まだまだ頼りない僕だけど、僕は君を守りたい……いいや、絶対守るッ!だから、どうか僕を……貴女のナイトにさせてください」



再び静寂に包まれる公園。夜の帳が降り始める中、わたし達は見つめ合う。

恭一郎くんは、わたしを真っ直ぐ見つめて、答えを待っている。
だから……わたしはゆっくりと口を開いた。



「……お願い、しちゃおうかな」

恭一郎くんが目を見開く。

わたしの顔、きっと真っ赤になってるんだろうなぁ……。だって、こんなに熱くて、ぽかぽかしてるんだもん。

それに、辺りは薄暗くなり始めているけれど、恭一郎くんの目はわたしに釘付けだ。
でも、それはわたしもおんなじ。恭一郎くんの顔もちょっと赤くなってるの、分かるよ。

「わたしも、恭一郎くんのこと……好き、だから……」

優しくて、いつもわたしの事を気にかけてくれていて。
ちょっと頼りない所はあるけれど、そこが可愛くて。

一生懸命な君の姿が、いつの間にか好きになっていたんだ。

「未来さん……ッ!」
「わっ!?」

立ち上がった恭一郎くんが、わたしの背中に腕を回す。
ちょっと驚いちゃったけど、わたしも恭一郎くんの背中に腕を回した。

恭一郎くんの身体……あったかい。
これが男の子の体温なんだ……。

抱き合ったわたし達は互いに見つめ合い、もっとよく見えるようにと顔を近付ける。

「恭一郎くん……本当に、私でいいの?」
「未来さんがいいんだ。僕には君しかいないんだ」
「そっか……。嬉しい……」



日が沈む瞬間。どちらともなく目を閉じて……。



そして二つの唇が、沈んでいく夕陽の中で触れ合った。



「おわわわわわわわわわわわおわぁーッ!?」

物陰から聞こえてきた悲鳴に、2人は慌てて唇を離す。

声の主は……見覚えのある赤髪だった。

「紅介ッ!?それに皆も!?」
「あ、やっべ!」
「だからやめておけってあれほど言っただろう!?」
「結局出歯亀した兄さんも悪いでしょ」
「ごめんね、恭一郎。なんか、付いてきちゃって……」

頭を抱える恭一郎。
だが、未来は紅介達が出てきた場所の反対側を見つめる。

そして、口の両側に手を当てると、大声で叫んだ。

「みんなー、もう出てきていいよ~」

一瞬の間があり、やがて物陰からは響ら5人が顔を出した。

「あはは~……バレちゃってた?」
「も~、バレバレだよ。響、またクリスに迷惑かけてたんでしょ?」
「いや~……あはは……」
「おい、何かあたしに言う事あるだろ?」
「クリスちゃん、巻き込んでごめん!」
「よーし、ゲンコツ一発で許してやらぁ」
「なんでッ!?」
「ホンット、あんたってばアニメみたいよね~」

クリスにシバかれる響を横目で見つつ、創世と詩織は未来を祝福する。

「ヒナ、おめでとう!」
「おめでとうございます、小日向さん!」
「うん、ありがとう」

少し照れ臭そうにはにかむ未来。
そんな姿も愛おしいと、恭一郎はそう思った。

「恭一郎、お前の覚悟はしっかり見届けたぞ。小日向と、お幸せにな」
「今日の勇気を忘れないでね。それがある限り、君は何度でも立ち上がれるから」
「翔、純、ありがとう。これから頑張って、未来さんを守れる、かっこいい男になってみせるよ」
「未来~、何か困った事とかあったら言ってね?恋愛については、未来よりは少し先輩なんだから!」
「うん。頼りにしてるよ、響」

それぞれの親友から祝福され、二人は手を繋ぐ。
見つめ合い、互いの真っ赤な顔が何処かおかしくなって微笑み合うと、ここで純が恭一郎に囁いた。

「恭一郎、あの言葉……言い忘れてない?」
「そうだ、未来さんにもう1つ、言っておかなくちゃ……」
「なぁに?」

恭一郎は、未来の顔をもう一度真っ直ぐ見つめると、満面の笑みと共にあの言葉を贈った。

「未来さん、お誕生日おめでとう!」

そして響や翔、UFZや三人達も声を揃えて、祝いの言葉を告げる。

『ハッピーバースデー、未来(ヒナ)(小日向さん)!!』



親友の、友達の、そして今日、大切な人になった君からの”おめでとう“。

それをしっかり心に刻んで、わたしはとびっきりの笑顔を皆に返す。

「恭一郎くん、みんな……ありがとう」

君と手を繋いで眺めた夜空を、わたしはきっと忘れない。

だって、君と愛を誓ったこの瞬間は、わたしにとっての永遠になるんだから♪ 
 

 
後書き
この後の誕生日パーティーで、恭一郎くんは未来さんに誕生花である“シンビジウム”の花を贈ったとか。

恭みく推しの皆さん、ご満足頂けたでしょうか?
ようやくちゃんと付き合い始めた瞬間を描くことが出来ました。いやー、長かった。

「愛が重い」「YOME」「ヤンデレ」など重い女イメージが強い未来さんですが、伴装者では未来さんの乙女な部分をしっかりピックアップして行けたらなぁ、と思っております。
いや、絶対書いてやるわ。目指せ、清楚系乙女な未来さん!!

さて、恭みくくっ付けたし、そろそろかな……。
卒業制作が終わったら、いよおよGX編の執筆に本腰を入れます。それまでの間、もう少しだけお待ちください。

次回もお楽しみに! 
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