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八条学園騒動記

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第五百八十八話 カツカレーといえどもその三

「普通にね」
「ミネラルウォーターだからな」
「それでね」
「味もいいな」
「ミルクもレモンもお砂糖も違うし」
 普通のものと、というのだ。
「セーラ御用達のね」
「シヴァ家のな」
「そんなものだから」
 それだけにというのだ。
「味が違うから」
「美味くてだな」
「余計にね」
「評判がよくてか」
「お客さんが多いのよ」
「そういうことか」
「それでね」
 ルビーはさらに話した。
「私さっき実際にミルクティー飲んだけれど」
「美味しかったか」
「ええ」
 実際にというのだ。
「そうだったわ」
「美味いとね」
 ジョンも言う。
「それだけね」
「お客さんが来てくれるな」
「だからね」
 ジョンはタムタムに話した。
「うちのクラスは繁盛しているんだ」
「そうか」
「そう、だからね」
「忙しいか」
「うん、けれどいい忙しさだよね」
 ジョンはタムタムに笑ってこうも言った。
「繁盛している忙しさは」
「それはな」
「いい感じよ」
「悪い気はしないわ」
 ルビーとジュディも言った。
「充実していてね」
「満足しているわ」
「そうだよね、同じ忙しくても」
 ジョンはこうも言った。
「戦争に負けるとか会社が潰れるとかね」
「そんなピンチの中で忙しいとね」
「嫌な忙しさね」
「ストレスが溜まる」
「そんな忙しさじゃないから」
 それでというのだ。
「いいでしょ」
「確かにな」
 タムタムはジョンのその言葉に頷いて述べた。
「こうした忙しさはいいな」
「戦争に負ける直前の忙しさなんて」
 それこそというのだ。
「物凄いみたいだよ」
「ヒトラーか」
「そう、敗北直前のヒトラーなんて殆ど寝てなかったそうだよ」
「もう戦局は崩壊してか」
「実際に滅茶苦茶になっていて」
 各戦線が崩壊し遂に首都ベルリンまで攻められていた、そうした中で忙しくない筈がない。軍議も書類の仕事もだ。
「それじゃあね」
「もう寝られない位にだな」
「忙しかったんだよ」
「それで勝つならいいがな」
「もう誰が見てもだったから」
 ドイツの敗北は明らかであったからだ。
「嫌な忙しさだよ」
「先に絶望しかないならな」
「忙しくても先に希望があったら」
「充実して働けるな」
「それが実るって思えたら」 
 それならというのだ。 
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