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影が薄いけれど

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第二章

「スポーツもね」
「何でもそつなくだけれど」
「これといって目立たないし」
「外見もね」
「不細工じゃないけれど」
「結構可愛いけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりね」
「そっちも普通でね」
「ええと、特徴がね」
「ないのよね、あの娘」
「これといって」
「性格も悪くないけれど」
「いい方だけれど」
 人間性もというのだ。
「結構気がついてね」
「面倒見てくれるし」
「親切だけれど」
「自己主張しないから」
「縁の下の力持ちって感じで」
「どうもね」
「本当に特徴がなくて」
 それでというのだ。
「どうしてもね」
「いたの?ってなるわよね」
「一緒にいても」
「クラスで皆で作業していてもね」
 こう言うのだった、とにかく愛理は欠点はないが目立ったところがなくて存在感がなかった。いい意味でも悪い意味でも。
 学校の授業でも当てられることもない、そして先生達も。
「ああ、内藤さんね」
「悪くないけれど」
「悪い娘じゃないけれどな」
「むしろいい娘にしても」 
 それでもというのだ。
「ちょっとな」
「授業でも気付かないな」
「テストの点も悪くないし」
「これといって」
 こうした風だった、それでだ。
 存在感がなく誰も意識しなかった、しかし。
 利光はそんな彼女と交際していていつもとても幸せそうだった、それで愛理は黒の詰襟の制服をお洒落に着ている彼に。
 一緒にお昼を食べている時にこう言った。
「私目立たないけれど」
「よく言われるね」
 利光の返事は素気なかった、一緒に中庭で弁当を食べても愛理を見る人はいない。
「そう」
「ええ、私は別に」
 愛理自身はというのだ。
「目立たなくてもね」
「いいんだよね」
「私は私でトラブルがないと」 
 それでというのだ。
「いいから」
「そうだよね」
「だからいいけれど」
「俺がなんだ」
「私が一緒でいいの?」
 利光に弁当の鮭の塩焼きを食べつつ尋ねた。
「目立たなくても」
「いや、目立たないってさ」 
 利光はミートボールを食べながら返した。
「いいじゃない」
「交際していても」
「だって愛理ちゃんが目立ったら」
 その愛理に言った。
「もててね」
「それでなの」
「俺は困るから」
 付き合っている者としてはというのだ。 
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