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ドレッドノート

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第一章

                ドレッドノート
 当時世界各国は主力艦である戦艦の建造に血眼になっていた、それはドイツでもフランスでもロシアでもだった。
 とにかく強力な戦艦の建造を急がせていた、特にドイツは凄いものがあり。
 皇帝ヴィルヘルム二世は臣下の者達にカイゼル髭を生やした厳めしい顔で言っていた。
「いいか、我々が世界の盟主になる為にはな」
「産業を充実させ」
「人材を多く擁し」
「植民地をさらに持ち」
「海軍もですね」
「そうだ、イギリス以上にだ」
 七つの海を支配するこの国の海軍はあまりにも有名であった、まさに世界の覇者に相応しい海軍であった。
「強力な海軍を持つのだ」
「そうしますね」
「それを目指すべきですね」
「世界の盟主になる為には」
「必ずですね」
「我が国は伝統的に陸軍国だが」
 プロイセン以来のそれである。
「しかしだ」
「これからはですね」
「海軍もですね」
「強力な海軍を擁しますね」
「そして世界の盟主となりますね」
「その為にはだ」
 まさにというのだ。
「特にだ」
「戦艦ですね」
「戦艦を多く建造しますね」
「これまで以上に」
「多く持ちますね」
「戦艦は海軍の主力だ」
 皇帝は玉座から強い声で話した。
「それ故にだ」
「特に戦艦ですね」
「戦艦を多く建造しますね」
「イギリス以上に」
「そうしますね」
「イギリスも強いが」
 皇帝もこのことは認めた、もっと言えば彼はイギリス王家の血も引いている。祖母はあのヴィクトリア女王で縁故も感じている。
 だがドイツ皇帝としてだ、こう言うのだ。
「イギリスの流石に限界が見えてきている」
「左様ですね」
「ここにきて」
「海軍の規模もです」
「我々は追いついてきています」
「だからですね」
「これからもですね」
「戦艦を多く建造するのだ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 ドイツは戦艦の建造に力を入れさせた、そうして実際に多くの戦艦を建造させて擁していったのだが。
 ある情報を聞いて皇帝は言った。
「イギリスの新型艦か」
「はい、何かです」
「かなりの戦艦を設計してです」
「建造を進めているとか」
「そうした情報が入っています」
「情報部からの話です」
「一体どういった戦艦だ」
 皇帝は眉を顰めさせて言った。
「それで」
「詳しいことはわかっていません」
「イギリス側も機密の保持に隠蔽です」
「それで、です」
「ドックで建造中とのことですが」
「それでもです」
「詳しい情報は不明です」
「そうか、だがだ」
 皇帝はいぶかしみながらも言った。
「戦艦ならな」
「それならですね」
「我々も建造しています」
「それならですね」
「恐れることはないですね」
「そうだ、その新型戦艦を建造してきてもだ」
 それでもというのだ。 
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