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柿を食べながら

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第一章

                柿を食べながら
 根室千佳は自宅のテーブルの上で静かに柿を食べながら自分の向かい側の席で柿を食べている兄の寿に尋ねた。
「今どんな気持ち?」
「くたばれジャイアンツだよ」
 兄は妹に柿を皮ごと食べつつ死んだ目で答えた。
「今シーズンはな」
「去年と同じこと言ってるわね」
「そう言う千佳はどうなんだよ」
 兄は妹に問い返した。
「今どんな気持ちだよ」
「地獄に落ちろジャイアンツよ」
 千佳は自分で皮を剥いて四つに切った柿をフォークで食べつつ答えた、見ればその目は兄と同じものだ。
「心から思うわ」
「そうか」
「全く以てね」
「去年からな」
「全然面白くないわね」
「巨人が強いとな」
「というかね」
 千佳は兄に言った。
「阪神この二年何やってるのよ」
「巨人に負けてばかりでな」
「矢野監督何?」
「国賊じゃないか?」
 兄の返事は投げやりなものだった。
「若しかしなくても」
「国賊なのね」
「そうじゃないか?」
「自分でそう言うのね」
「あそこまで巨人に負けたらな」
 それならというのだ。
「それも何も考えてないでな」
「試合してる感じするわね」
「巨人との試合はな」
「普通に三連敗するからね」
「碌に点を取れないでな」
「そうよね、矢野監督ってね」
 千佳は柿を食べながらお茶、緑茶を飲みつつ言った。
「もう巨人の為にいる人よね」
「巨人が調子落としたら阪神の試合になってな」
「そこで三連勝して復活とかね」
「開幕阪神に勝ってスタートダッシュとかな」
「今年ね、もう完全にね」
「あの人巨人の人だな」
「金本監督までそこそこ勝ってたじゃない」
 巨人にはというのだ。
「それがよ」
「あの人になってからな」
「急に巨人に勝てなくなったから」
 それ故にというのだ。
「私もね」
「そう言うんだな」
「そうよ、広島も今年はどうもだけれど」
「矢野監督はな」
「巨人との試合やる気ないどころか」 
 それどころかというのだ。
「もう負ける気がね」
「満々だな」
「そうも思えるから」
「そうだよな、もう試合に負ける度にな」
 その巨人にだ、邪悪でおぞましい瘴気にも似た負の波動で日本も世界も覆わんとするそのチームにだ。
「どれだけ怒ったか」
「いつも滅茶苦茶怒っていたわね」
「ああ、お前もそうだったな」
「巨人は敵よ」
 千佳は言い切った。
「存在自体が悪よ」
「本当にそうだな」
「それでその悪にね」
「阪神はな」
「去年も今年もね」
「全力で負けてたな」
「負ける努力をしているのかってね」
 そのレベルでというのだ。
「思える位ね」
「酷いな」
「ソフトバンクは苦手のチーム相手でもね」
 それでもというのだ。 
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