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氷の龍は世界最強

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氷の皇帝

 一度、家に帰ってきた俺たちは制服に着替えた後、一高に登校した。
 だけど、早めに登校したのが間違いだったな。
 その所為で、愛桜と鉢合わせしてしまう結果になった。
「なんで、お前が早く来ているんだ!!」
「それはこっちの台詞よ!! なんで、朝から出くわさないといけないのよ!!」
 俺は愛桜と朝からガミガミと口喧嘩している。
 なんでか知らないが、俺は愛桜を目にしたら、何故か口喧嘩をしてしまう。
 理由は分からない。
 おそらく、本能的にそうなってしまうのだろう。

 俺と愛桜が睨み合いしながら教室に入る。
 教室に入れば、深雪、ほのか、雫が既に席に着いていた。
「深雪、おはよう」
「深雪、おはようございます」
「おはようございます、蒼汰くん、愛桜」
 深雪はしっかり通れと愛桜に挨拶をする。
 その後、ほのかと雫も挨拶をして、談笑に入った。

 談笑の後、HRになり、HRが終わった後、午前中は深雪たちと一緒に先生の引率で校内を回っていくことにした。
 まあ、俺としては深雪と一緒に回れるからいいけど、周りの男子たちが深雪に媚を売ろうとしている。
 なにを勝手に俺の深雪に手を出そうとしているんだ。
 おっと、今、深雪とはまだ付き合っていなかったな。
 とりあえず、先生の案内で午前の分の校内を見て回れた。
 残りは、後日見て回れそうだな。

 お昼の時間帯になったところで
「深雪。そろそろ時間だし。お昼にしないか?」
「はい」
 俺たちは食堂の方へ向かった。
 食堂に来てみたら、
「凄い人だかりだな」
「そうですね」
「これだと席が空いていないんじゃない」
 愛桜の言うとおりだな。
 今の時間帯じゃあ席なんて空いていない。
 すると、深雪がなにかを見つけたように駆けだした。俺は「なるほど」となる。
「どうしたの、深雪?」
「大方、達也でも見つけたのだろう」
「ああ、なるほど」
「達也さん。彼処にいるんだ」
「まあ、達也の方にも席が空いていないだろうけど、行ってみる価値はあるな」
 俺たちは達也らがいる。深雪を追う形で俺たちを追いかけた。
 深雪を追ったら、案の定、達也がいた。他にも入学式の日に見た彼女たちもいて、最後はクラスメイトと思われる男子がいた。
 やはり、彼らはお昼ご飯の最中だった。
「お兄様」
「深雪」
「ご一緒にしてもよろしいでしょうか」
「それは構わないが、蒼汰たちも一緒か?」
「はい・・・あっ、蒼汰くん」
「よう、達也。席は・・・空いていないか・・・」
「いや、詰めれば、なんとかなれるが、その人数だと、席が足りないかもしれないな」
 達也も俺や深雪だけではなく、愛桜やほのか、雫を見て判断した。
 そこにオレンジ色の髪をした女の子が
「深雪、ほのか、雫。ここ空いているよ」
「じゃあ、俺と愛桜は達也の方に詰めればいいか。すまない、達也」
「構わない。皆で食べるのもいいだろう」
 達也にしてはいいことを言うじゃないか。
 と、そこに達也の隣にいる男子と深雪の隣にいる2人の女子が
「えっと、誰?」
「司波深雪。俺の妹だ。深雪と一緒にいるのは、深雪と同じクラスメイトだ」
「へぇ~」
「初めまして、司波深雪といいます」
「俺は氷川蒼汰。達也と深雪とは幼馴染みだ」
「私は火野愛桜。よろしくね」
「光井ほのかです。よろしくお願いします」
「北山雫。よろしく」
「おう。一度に沢山の名前を聞いちまったから。覚えられるか分からんが・・・俺は西城レオンハルト。レオで良いぜ」
「じゃあ、レオって呼ばせてもらうで」
「よろしなぁ。レオ」
「おう、よろしくな」
 皆、お互いの自己紹介を済ませたところで昼食をとることにした。

 お昼を食べたあと、俺は風紀委員本部に向かうことにした。
 風紀委員本部に来てみれば、渡辺委員長ではなく、姉さんがいた。
「姉さん。なんで、風紀委員本部にいるんだよ」
「風紀委員本部と生徒会室は秘密の階段に繋がっているのよ」
「なんだよ。秘密の階段って・・・」
 気になるんだが・・・・・・
「今、渡辺委員長は生徒会室にいるけど・・・それよりいいの? せっかくの校内巡りを・・・?」
「いいよ。そんなの・・・もう、()()()()()()()()()
 俺は口にする。
 それは俺の氷川家のみが扱える魔法『枯山水』で建物の構造、配置は理解できるからだ。
 その意味を理解している姉さんも
「はいはい。氷川家の秘伝で把握したのね」
 呆れかえっていた。
 なに、呆れかえっているんだ。
 俺や姉さんだったら、すぐに分かることだろう。
 姉さんは俺にあることを聞いてくる。
「そういえば、蒼汰は深雪ちゃんや達也くんに真実を話したの?」
「いや、まだだ」
「どうして、話さないの?」
 姉さんは俺が真実を話さないのか聞いてくる。
「今、話したら、達也だったら、眼を使って、調べてくる。達也と深雪には嘘をつきたくないだけだ」
「なるほどね」
 姉さんはそう言って納得してくれた。
 俺は姉さんと談笑し、夕方近くになったところで『枯山水』に反応があった。
 さらに言えば、俺の眼――霊子放射過敏症。
 眼に映る精霊たちがざわめいていた。
 俺と姉さんは精霊たちから状況を聞き取り、
「全く、入学して早々、問題を起こすなよ」
「本当ね。一応、会長と委員長が動いているけど・・・・・・って、もういないし」
 姉さんは俺に状況を話そうとしたが、俺は風紀委員本部をでて、校門へ向かった。
 時を同じくして、愛桜も午後は部活連にいて、下校する際、精霊から状況を知って、現場へと向かう。

 校門ではというと――。
 現在、新入生同士で口論になっている。
 今にも、魔法をしようとしている雰囲気であった。
 止めようとする生徒もいるが、誰もが聞く耳を持っていない状況だ。
 一科生の生徒が魔法を行使しようとしているのをレオが止めようと駆けだす。
 深雪はそれを見て達也に振り向き
「お兄様!?」
 達也も不味いと思い、止めようと手をかざすが、途中で止めた。
 それは、一科生、レオ、オレンジ色の髪をした女の子の身体に絡みついた氷の蔦。
 それが彼らの動きを阻害した。
 「いったい、誰が」という状況下で声がした。
「そこまでにしろ。全員、動くんじゃない。動けば、誰だろうと凍らせるからな」
 辺り一帯を包み込む威圧感。
 途轍もなく冷たく、凍えるもの。
 誰もが凍りつくように、その場を立ち続ける。
 そこにやってきたのは、俺だ。
 俺が辺り一帯を支配している。
 邪魔する奴は誰だろうと黙らせる。
「おい!! 貴様も彼らに加担するのか!!?」
 一科生の1人が俺に突っかかってくるも
「バカか。誰が達也たちに加担するって言った? 俺はこの場を修めるために来ただけだ。そもそも、たかが登下校如きで野次馬を起こすんじゃない。いつまで、ガキでいる気だ?」
 周囲を見渡しながら、大声を発することもなく、冷たい声音で周囲に浸透していき黙らせる。
 俺の言葉に一科生たちは恥じるように顔を伏せる。
 俺は達也の友人の方に向き、
「お前たちも一々、口喧嘩で頭に血を上らせるな」
 忠告して、悪びれる形で彼らも悄げる。
「会長、委員長、姉さん。いるんだろう」
 俺は人混みへ向かって言う。
 それに応えるかのように会長らが人混みをかき分けて姿を現した。
「なんでしょうか? 氷川くん」
「たいしたことないですよ。未だにガキでいる彼らの我が儘が原因です。騒ぎはこの通り収まりましたので姉さんたちはお帰りになっても構いません。あと、俺のことは蒼汰で構いません。姉さんと名字が被るので・・・・・・」
 俺は迷惑を懸けたことに謝罪し、頭を下げる。
 会長と委員長は俺が頭を下げられたことで強く言えない。
「だが、そこの彼が魔法を無断で使用しようとした事実は無視できないぞ?」
「分かっていますよ。彼の処分に関しては姉さんたちにお任せします。幸い、発動しようとしたようですが、結果は発動せずに未遂で済みました。ですが、もし、ご不満なら、俺が骨の髄まで教え込ませますが?」
「いや、この一件は私たちが対応する。キミが教え込ませると死人が出そうだ」
「人を悪魔や死神みたいに言わないでくださいよ」
「言いたくなるわ!! 全く、姉弟揃って、皇帝かなんか!!」
 委員長は声を荒げる。
 失敬な、俺は皇帝ではない。
 見ろよ、姉さんだって、「皇帝じゃないわよ」と言っているじゃないか。
「新入生。キミたちに先に告げておくが、これから先、問題行動を起こさないように・・・起こせば、氷川姉弟の犠牲になることを肝に銘じろ。絶対にだ!!」
 委員長。やけに問題行動を起こさないように言い放っているな。
 まあいい。
「これこっきりにしろよ。今回は加減したが、次からは加減しないからな」
 氷の蔦を解いた。
 蔦を解かれた奴らはハアハアと息を吐いている。
 冷気を当てられたんだ。
 身体を温めようと新鮮な空気を取り込んでいるのだろう。
 俺が氷の蔦を解いたのを見て、姉さんが
「さあ、今日はもう帰りなさい。明日から授業が始まるんだから。気持ちを切り替えるのよ」
 帰らせるように促す。
「それじゃあ、蒼汰は深雪ちゃんたちと一緒に先に帰っていなさい。達也くんと深雪ちゃんも今日はもう早く帰りなさい」
「分かりました、玲奈さん」
「ご迷惑を掛けて申し訳ございません」
 達也と深雪も姉さんに頭を下げる。
「いいわよ。遅かれ早かれ、こうなることは分かっていたから」
 姉さんは会長と委員長と一緒に校舎に引き返していく。
「それより、さっさと帰るぞ。達也、深雪。レオも感情的になるなよ」
 俺はレオに忠告する。
「お前に言われて、熱くなりすぎたと反省しているところだ」
「ならいい。キミたちもだぞ」
 深雪と一緒にいた彼女たちにも忠告する。
「申し訳ございません」
「はい・・・私も興奮して煽ってしまいました」
 彼女らも口々に思ったことを返す。
「じゃあ、帰るぞ。ほのかと雫、愛桜もそれで良いな?」
 まだ解散する気がない一科生に巻き込まれる形でいたほのかと雫に声をかける。
 ついでに、現場に到着した愛桜にも俺は声をかけた。
 彼女らは返事をしてから人混みをかき分けて、俺たちと合流してから帰路した。
 さっさと帰った方がいい。目立つからな。

 下校の際、オレンジ色の髪をした女の子が
「そういえば、キミの名前を聞いていなかったね」
 確かにそうだな。
「俺は氷川蒼汰。姉さんと名字が被るから蒼汰でいいぞ」
「蒼汰くんね。私は千葉エリカ。エリカでいいよ」
「私は柴田美月と言います。先ほどはご迷惑を掛けて申し訳ございません」
「エリカに、美月ね。分かった。全く、迷惑をかけるなら、問題行動を起こすなよ」
「いや、そこを突かれるとなにも言い返せないわね」
「全くだぜ。いきなり、割り込まれて、動きを封じられるとは思わなかった」
 彼女たちだけではなく、レオも動きを封じられるとは思ってもいなかったようだ。
「あれでも、序の口だ。本気だったら、骨の髄まで凍らせているよ」
「演技でもねぇから止めてくれ。それだけは・・・・・・」
 レオは顔を青ざめる形で言葉を漏らした。

 ここで、ほのかが
「そういえば、蒼汰さんと達也さん、深雪とはどういった関係なの?」
 俺たちの関係を聞いてくる。
「俺と達也、深雪は幼馴染みだ。幼少の頃から一緒にいたからな」
「へぇ~、そうなんだ」
 エリカはそれで納得してくれた。
 俺としてはこれで納得するのかという疑心がある。
 いや、疑心暗鬼もいかんな。
「それよりもよ。蒼汰はいつ、魔法を使用したんだ? 俺らの眼から見ても、CADを使用したのか分からなかったぜ」
 レオが俺にいつ、魔法を使用したのか。CADを使用したのかを聞いてくる。
「いや、俺はCADを使用していない」
「でも、魔法を使っていたじゃない」
「俺は存在するだけで、水と氷を支配し、自在に操ることができる」
「どういうこと?」
「つまり、俺は存在するだけで支配対象である水さえあれば無関係に操れる。だから、こんなことだってできる」
 俺は右手をかざすだけで掌に氷の結晶が出来ていく。
 レオやエリカたちは俺が氷の結晶を生成したのを見て、
「魔法を超越しているわね。蒼汰くんは・・・・・・」
「全くだぜ」
 俺が超越者に聞こえる言い方をした。
「まあ、校門での氷の蔦は準備をしていたけどな」
「準備?」
「一高全域に設置型の魔法式を展開して、巨大な魔法式を構築、展開する。そして、ある一定の領域内では魔法式、起動式の構築を吹っ飛ばしてしまう展開し、魔法を行使する大規模魔法を準備してある」
「どういうこと?」
「つまり、俺は一高全域では魔法の発動工程を吹き飛ばして、即時展開することができるというわけだ。要するに俺はデタラメな魔法を使用している」
「マジで、デタラメだな」
「CADすらも使わずに魔法を使える上にデタラメな魔法まで持っているなんて、規格外すぎるでしょう」
 確かに規格外だな。
 だが――、
「だが、領域の設定や準備に時間が掛かってしまうが、一度、発動してしまえば、俺は水と氷を自由自在に操れる。まあ、一高全域だけの話だ」
「ですが、蒼汰くんは一高全域では無類の強さを発揮できます。それを抜きにしても、蒼汰くんが強いのは明確な事実です」
「深雪。事実を褒めるのはいいが、関東圏では、それを準備するのに時間が掛かる。俺が準備早かったのは姉さんのおかげだ」
「お姉さん?」
「蒼汰さんにはお姉さんがいるの?」
 ほのかと雫が俺に姉がいるのか聞いてくる。
「2年の氷川玲奈さんだ。彼女は蒼汰のお姉さんだ」
「玲奈さんも蒼汰くんと同じように私とお兄様の幼馴染みです」
「ついでに言えば、俺は姉さんが先に構築したデタラメな魔法を上書き、更新しているだけだ。まあ、来週からの部活動勧誘週間で猛威を振るうことになるがな」
 俺が言ったことに皆が「え?」となる。
「猛威を振るうとはいったい・・・・・・」
 深雪が聞き返す中、愛桜が事情を話す。
「去年、玲奈さんが風紀委員として「枯山水」を使用し猛威を振るったからよ」
「玲奈さんが・・・・・・」
「校門で渡辺先輩が言っていたでしょう。死人が出そうって・・・・・・私と蒼汰も昨日、知ったんだけど――。去年、玲奈さんは「枯山水」を使用して、異様な勧誘そのものをなくさせたそうよ。その際、玲奈さんが検挙した件数は歴代最高だって話」
「その所為で俺も風評被害に遭っている」
「は? 蒼汰だって、平気で「枯山水」を使用して、彼らを黙らせようとしていたじゃない!!」
「そういう愛桜だって、俺が来なければ、「第七園」でレオたちに火傷を負わせようとしたよな!!」
 そのまま、俺と愛桜はいがみ合い始めた。
 これには、達也らもどうしようもできずに無視することにした。 
 

 
後書き
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