| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

SHOCKER 世界を征服したら

作者:日本男児
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ショッカー、栄光の日 本郷猛、最後の日!!

 
前書き
今回、タイトル通り、本郷猛抹殺回です!!
クッソ長過ぎる文、唐突に入るネタなど、駄文要素盛りだくさんですがそれでも読みたいという方は是非、そのままお進みください。

(`゚皿゚´)/イーッ!!  

 
ショッカー 日本支部 アジト



『ショッカー、そしてゲルダム団の大幹部の諸君!ついにこの時が来た!!今、この2つの組織は世界征服、そしてその障害となる本郷猛、一文字隼人抹殺のために共闘することになったのだ!!』


その恐ろしくも威厳に満ちた声に合わせて鷲のレリーフのランプが緑色に光る。
そして、その声の人物に敬意を示すべく4人の人物が片膝をついていた。

1人は旧ドイツ国防軍の軍服を着た眼帯をした元軍人で、もう1人は白いスーツに漆黒のマントを羽織った老人、もう1人はファラオ風の被り物をした男、オープンヘルムを被った将軍風の男。彼らはショッカー大幹部のゾル大佐、死神博士、地獄大使、ゲルダム団幹部のブラック将軍である。


『世界中に支部を持つショッカーとアフリカ大陸を影から支配するゲルダム団。両者が組めば百人力である!間もなく発動されるというライダー抹殺合同作戦、期待しておるぞ!!』



「「「イーーーッ!!!」」」




やがて首領への謁見が終わり、大幹部達は互いの交流を兼ねて雑談をしながら廊下を移動する。


「死神博士、とうとうこの日が来たのだな」


「ああ、ついにライダーを倒す日が来たのだ。そのためにショッカーとゲルダム団、この2つの組織が共同で研究を行っているという……ああ、私も参加してみたいものだ」


ゾル大佐はライダーを倒せることに興奮し、死神博士は科学者の立場から他組織の研究技術について気になっている様子だった。


「しかし…我らがショッカーがアフリカの密教組織……ゲルダム団と手を組むとはな……」


「不満か?地獄大使よ。まさか我らゲルダム団を愚弄しているわけではあるまいな?」


地獄大使がブラック将軍の方を向くと彼は両腕を組み、鋭い視線で地獄大使のことを睨みつけていた。


「いや、そういうわけではない。まだ実感が沸かないだけだ……分かったらその目をやめてくれ」



ことの発端は数週間前に遡る。ライダーに敗北続きのショッカー日本支部に呆れた首領は自身がアフリカのコンゴで作ったカルト教団『ゲルダム団』と共闘させるよう両組織の大幹部に指令を出したのだ。


ショッカーとゲルダム団。
首領が創設した両組織は『世界征服』という同じゴールに向かって突き進む同志ではあったが主要メンバーの出自や世界征服へ向けての到達手段が異なる。
片やナチス残党が主となった世界規模で暗躍する秘密結社で、もう片方はアフリカで地道に根を伸ばす密教組織である。
最初こそ、反目しあっていた両組織同士を首領が直々に『命令』し、協力関係を構築させたのだ。両組織ともにメンバーの殆どが首領の命令と期待に応えることを至上の喜びとする怪人集団であるために己の意思を殺して従った。
それでも下級怪人をはじめ、反対する者はいたが首領は彼らを軒並み、粛清したことで無事、共闘への道を漕ぎ出すことが出来たのだ。
それからは科学戦闘員達を中心に共同研究を重ね、次第に1つの組織のように馴染んでいった。そしてその甲斐があってライダーの弱点を発見することができたのだ。



『変身中の0.5秒の隙』。


これこそが仮面ライダーの弱点である。
ゲルダム団の天才科学者ディー博士が本郷猛の変身映像データを解析して発見したものであり、ライダーは変身時の0.5秒だけ本郷猛でも仮面ライダーでもないただの人形と化すという致命的かつ決定的な新事実であった。


「ライダーの弱点を見つけられたのは大きな進歩ではあるが問題はどの怪人が奴にトドメを刺すか…だ」


死神博士が顎に手を添えながら考え込む。
失敗してしまえば2度目からはライダーに弱点を警戒され、弱点を突く作戦は行えなくなる。中途半端な強さの怪人は論外である。そこでショッカーはこれまでの改造技術の粋を集めて最強の改造人間を7体も作り出そうとしていた。




ガアーッと指令室に通じる自動ドアが開き、大幹部達は続々と入室する。
彼らは壁面に備え付けられたモニター越しに手術室の様子を見る。


手術室では手術台で眠る青年を取り囲むように科学戦闘員と執刀医がメスを振るっており、彼らを見守るように黄色や白、緑、青、紫、桃色といった色とりどりのマフラーと手袋をしたショッカーライダーが立っていた。

最初は改造されることに抵抗していた青年も麻酔で眠らせられ、今ではベルトを据え付けらた上に、黒色のマフラーとライダースーツを着せられていた。
彼もまたショッカーライダー№7として改造されているのだった。


手術の助手を務めている科学戦闘員が執刀医の男に報告する。


「天候操作装置、移植完了。最終段階の脳改造に移ります」


ショッカーライダーには一人一人に特殊能力を与えられる。
例えば、黄色のショッカーライダーなら火焔攻撃、白なら毒霧などとそれぞれ固有の能力が備えつけられているのだ。
ちなみに今、製造中のこの黒色のショッカーライダーの能力は『天候操作』である。


彼ら、ショッカーライダーこそショッカーが対仮面ライダー抹殺用に制作している7体の改造人間である。
『毒を以て毒を制す』という言葉のようにショッカー最強の改造人間となるはずだった仮面ライダーを倒すには同型のショッカーライダーを。というの発想である。
安直な発想ではあったがショッカーの「今度こそ仮面ライダーを倒す」という確固たる意志の表れでもあった。


やがて黒いショッカーライダーの脳改造も終わり、科学戦闘員が司令室のモニターに繋がるカメラに向って敬礼する。


「イーッ!ショッカーライダー№7。改造完了!!これで作戦に必要なメンバーは全員揃いました!」



その言葉を指令室で聞いたショッカー、ゲルダム団の大幹部達は満足気にニヤリと嗤う。


「ライダーにはライダーか。実に面白い」
「計7人のショッカーライダー…。今度こそ、今度こそ……」
「本郷、一文字…お前達の息の根を止めてやる…!」


彼らの背後にある鷲のエンブレムマークが不気味に光る。


『フフ、満足の出来だな。よし、抹殺作戦を実行に移せ……』





作戦はこうである。
まず、ショッカーライダー軍団による破壊工作並びに大量殺戮を行い、本郷と一文字を誘い出す。
第2段階でショッカーライダー№7が天候操作能力を使って吹雪を起こし、本郷と一文字のベルトを凍結させる。そしてショッカーライダーキックでトドメを刺し、積年の雪辱を晴らすというものである。




入念な準備を重ね、とうとう作戦決行の日がやってきた。
―――――――――――――――――――――――――
ショッカーライダー達は変身前の人間態の姿で街に繰り出していた。傍から見れば青年達が街にたむろしているようにしか見えない。カモフラージュとしては完璧だった。
その日は休日ということもあり、通りは人通りが非常に多かった。


『作戦を開始せよ…!』


脳内の通信回路に直接、首領の命令が下る。



「「「「了解」」」」


青年達は散らばる。
その中でも№1はスーツ姿の中年男性に目をつけ、立ち塞がって行く手を阻む。
その中年男は日本政府の高官であり、いずれショッカーにとって邪魔になるとされた人物であった。男の方は突然のことに呆然とした様子だった。


「な、何だ?君は…?」


№1は無言のまま、手刀を作ると男の脳天めがけて―。


ザシュッ!!



№1の手刀が男に振り下ろされ、鮮血がほとばしる。
男は何が起きたのか理解できないような顔をしたまま重力に任せて地面に崩れた。



「ぎゃぁぁっ!」
「ひ、ひぃっ!?」
「た、たすけ――」


市民達はパニックになって逃げ惑う。№1だけでなく№2や№3なども殺戮を開始していた。
ショッカーライダー達は逃げ惑う市民や目撃者すら追い回して漏れなく皆殺しにした。付近には死屍累々の屍の山ができる。新入りの№7も市民を敵とみなして虐殺に加担していた。
 
刹那―。



ブゥゥゥゥゥゥン!


エンジン音が次第に近づいてくる。
音のする方を向き直るとヘルメットを被った男がバイクに乗ってこちらに向かってきていた。

間違いない。あれは仮面ライダーの専用マシン、新サイクロン号だ。そして乗っている男は仮面ライダー2号こと一文字隼人だ。
一文字はバイクを停め、さっそうと飛び降りた。


「ショッカー!また何の罪の無い人々を手にかけたな!!許さんぞ!!」


一文字の叫び声に№7のみならずショッカーライダー全員が彼の方を向いた。


「は、やっと来たか。待ちかねたぞ…裏切り者の旧型ァ!!」



彼らが左手を右斜めに掲げて変身ポーズをとるとベルトの歯車が物凄いスピードで回転した。


ギゥゥィィィィィン!!!!



「「変身ッ!!」」
 

男達がショッカーライダーに変身すると一文字は狼狽する。自分とまるで同じ姿の怪人が7人も目の前にいるからだ。


「なッ!!まさかッ!お前達はッ!」


「そうさ!俺達はお前ら裏切り者のあるべき姿、ショッカーライダーだ!そして今日こそ貴様らを倒して我々が本物のライダーとなるのだ!……だがその前に!」


ショッカーライダーは片手を上げて援軍を呼ぶ。


「行けぇ!!戦闘員軍団ッ!!」


「イーッ!」
「ギーッ!」


一文字の周囲をショッカーとゲルダム団の戦闘員がグルリと取り囲む。


「絶対にライダーに変身の隙を与えるなッ!」


しかし、彼らは所詮、簡易改造人間。
裏切り者とはいえ、上級改造人間である一文字に勝てる筈がなかった。

あるショッカー戦闘員は一文字の顔面にパンチをしようと拳を振るうも逆に彼の手刀を食らって死亡した。
あるゲルダム団戦闘員は剣で一文字の胴体を切り裂こうと構えた途端、剣を奪われ、蹴り飛ばされて死亡する。


それでも彼らは戦った。
何故か。首領の、偉大なる組織の命令というのもあるが彼らが誰よりもショッカーの掲げる正義を信じていたからだ。
それを洗脳と呼ぶのは容易いが、それでも彼らの組織に対する忠誠心は本物であり、その為なら死すら(いと)わない。


1人のショッカー戦闘員がククリナイフを腰に構えて一文字に刺突する。
しかし一文字はその戦闘員に肘打ちを食らわせると遥か遠くに投げ飛ばす。
その戦闘員だけはダメージが少なく、泡となって消えることはなかった。しかし当たりどころが悪かったせいで誰に気づかれることなく、グテっと気絶してしまった。



「……チッ、戦闘員軍団は全滅か…なら、俺が相手だ!!」



黄色のマフラーをしたショッカーライダー№1は一文字隼人に掴みかかり、宙高くに投げ飛ばす。
しかし一文字は逆にその窮地を利用した。


「ライダァァァ!!変身ッ!」


一文字は空中で叫ぶと宙帰りをしながら仮面ライダー2号に変身したのである。



「クソッ!変身してしまったか!!」
「構わん!!多勢に無勢だッ!」
「本郷が来る前に殺してしまえッ!!」


ショッカーライダー達はこちらに向って走って来る2号に向けて両腕に装備されたロケット弾を連射した。
しかし2号はとっさに地面に滑り込むことでロケット弾の弾幕射撃を躱す。その勢いで近くにいたショッカーライダー№2に狙いを定めた。

腹部にライダーパンチ。

余りの威力に№2はよろめく。
その一瞬の隙をついて2号が№2の身体を掴んで共に飛び上がる。そして自らの体に捻りを加えて№2を掴んだまま駒のように回転すると叫んだ。


「ライダァァー!!きりもみシュート!!」


2号は空中で№2を掴んでいた手を離して放り投げる。


「グワァァァァァ!!!!!」



№2は空中でグルングルンと回転しながら落下する。回転の衝撃で受け身がとれない。間もなく地面に激突し、大爆発を起こした。
また№2の大爆発によって彼の体内に溜まっていた毒煙が外に漏れ出てしまい、たまたま№2の近くにいた№6がそれをモロに浴びてしまった。
№6は猛毒に悶苦しむ。そしてそのままその場に倒れて爆発四散した。


「№2!№6!おのれぇぇ!!」


仲間の死を目の当たりにした№4は怒り狂った。2号を睨みつけると手にエネルギーを貯め、勢いよく大地に触れる。すると地面が揺れ動き、アスファルトに亀裂が入る。


「俺の能力は地震の発生だ!地割れにみ込まれて死ねぇッ!!」


亀裂は2号の足元にも走る。周囲の地面がグラグラと揺れ、避けることはおろかまともに立つことすら難しい。
しかし、2号は持ちうる力を出し切り、振り絞ると足元の地面がバックリと裂ける前に飛び上がった。
凄まじい跳躍力だった。その跳躍力で№4の背後に回り込む。


「なッ!?」


№4は2号のいる背後を振り向こうとするも2号は№4の左脇に頭を突っ込んで体勢を崩させると持ち上げる。そして、そのまま上半身と下半身を両手で抑えた。その体勢はプロレス技の「バックブリーカー」に似ていた。
それから―


「おりゃあああああ!!!!」


2号は容赦無く№4を投げ飛ばす。
彼だけのオリジナル技「大車輪投げ」が№4に決まった。
投げ飛ばされた№4はビルの壁面に勢いよくぶつかり、小さなクレーター作ってめり込む。それから間もなく№4は爆発し、死亡した。


「№4まで…!このぉぉ!!」


№5は2号の元に高速で近づき、胴体に触れる。№5の能力は放電能力である。数千万ボルトもの電流を流して殺すつもりなのだ。


№5は2号の肩に触れる。
№5の手から稲妻のような青白い電流がバチバチと飛び散る。
やがてその電流は大きくなっていき……


ゴロロロォォォォォォ!!!!


雷鳴にも似た凄まじい電磁音が響き渡る。さすがの2号も5000万ボルトに及ぶ強電流に身体を痺れさせ、苦しそうに呻く。余りの電流の強さに辺りが黄白い光に包まれる。しかし、2号は震える手で№5の腕を掴むと叫んだ。


「ラ…ラ…ライダー放電ッ!!」


2号はライダー放電を放った。このわざは相手の電撃を帯電して反撃する2号が編み出した大技である。
敵が自分の電流を逆流してくるとは思わなかった№5はまさかの攻撃方法に驚いた。今度は逆に№5の方が5000万ボルトの電流の餌食となり、苦しむ番になった。



自分が放った電流を帯電して反撃してくるとは―。


№5の心が屈辱に燃える中、身体は黒焦げ状態になる。そんな中、苦痛にまみれた中で彼は勢いよく両手を上げた。


「シ、ショッカー……ば、万歳……」


そう言い終わると彼は後ろ向きに倒れて……


ドガァァァァァンンン!!!!


№5が死んだことで生き残っているショッカーライダーは№1と№3、№8の3人だけになる。


(このままでは負けてしまう)


ショッカーライダー№1はそう判断し、№3と№7の方を向き直った。


「№3!№7!一緒にいくぞ!!」


「おう!!」
「了解ッ!!」


№1は口から高熱の火炎を吐く。まるで火炎が意思を持ったかのように2号を包む。これにはさすがの2号は怯んだような素振りを見せた。
その僅かな隙に№3が爆雷を2号に投げつけた。2号はそれを見て避けようとするも№7が竜巻を発生させて2号を拘束する。


№3の投げた爆雷が竜巻の渦の中心に入り込み、2号もろとも大爆発を起こす。
余りの爆発力に爆風が周囲をなぎ倒し、竜巻も自然に消えた。
辺りを土煙が舞い、前方を確認することすらままならない。


「やったか!!??」


土煙が晴れる。
そこにはドッシリと立つ影が1つあった。2号である。
仮面やスーツのあちこちが傷つき、身体もふらついた様子ではあったが何とか立っていた。


(なんて生命力なんだ!!!)



その場にいたショッカーライダー達は狼狽える。


仮面ライダーは自分達、ショッカーのことを悪魔の軍団と呼ぶそうだがこれではどっちが悪魔なのか分からないじゃないか。№7はそう思った。


一方、2号の方も立っているのがやっとだった。だが彼の「悪を倒す」という信念が彼に『立ち上がれ!』と告げていた。


「ライダーが……こんなところで……負けるわけにはいかないんだ……人間の…自由の為に、平和の為に…」


2号は覚悟を決めたようにショッカーライダー達の方へと走り出す。傷だらけのダメージを負った体が嘘のようである。


「俺は巨悪と戦い続けるんだ!!正義は必ず勝つ!!」


2号は地面を蹴って大きくジャンプする。そして空中できれいな回転をきめると右足を突き出して叫ぶ。


「ライダァァァ!!!キィーーック!!!」



ロケットの噴射―。
それくらいのスピードで2号は№1と№3、№7の方へ突っ込んでくる。
だが№7には2号のライダーキックがスローモーションのようにゆっくりに見えた。



(走馬灯というやつなのかもしれないな)


№7は2号の言葉を思い出す。


『正義は必ず勝つ』?誰だそんなことを言い始めた奴は?
正義が勝つと言うならなぜ、目の前の裏切り者の悪魔(2号)は勝ち続けるんだ。
混沌とした世界を1つにしようとするショッカーの方が正義なのではないのか?



そんなことを考えていていると……………突然、ショッカーライダー№1がとっさに№7を突き飛ばした。
№7はよろめきながら数メートル先に崩れ落ちた。


(え!?)



振り返ると稲妻のような蹴りが№1に突き刺さっていた。
その蹴りの破壊力は№1の胴体を優に貫き、後ろにいた№3を巻き込んで大きく吹き飛ぶ。№7だけがその悪魔のキックから逃れることができた。


「№1ッ!!№3ッ!!」


№7が叫べば彼らは変身解除し、人間態の姿に戻っていた。
もはや変身状態を維持するだけの体力も残されていないようでもあった。


「何故、突き飛ばしたりしたんだ!?俺達は仲間だろ?死ぬ時は一緒の筈だ!!」



「№7……、お前は、お前だけはこの作戦の最重要怪人だ。俺達がいなくてもお前さえ残ればまだ勝機はある」



次に№3が№1に肩を貸した状態で息絶え絶えに言った。


「絶対に勝てよ……№7。そして世界に、世界にショッカーの鷲の旗を…ひるがえ…」


バチッ!バチッ!ドォン!!ドォン!!


彼らの身体が連鎖爆発を起こす。
彼らは苦しそうに呻いた。


「ハ、ハハ……俺達は、俺達はどうやらここまでらしい。だが……」


「偉大なる……ショッカーと首領に……」



彼らは右手をビシッと空高く掲げた。
そして―


「「イーーーーッ!!!」」


その奇声は一帯によく響いた。
№1と№3はショッカー式敬礼をしたまま地面に倒れ込むと、大爆発の爆炎の中に消えていった。


「№1ッッッ!!!№3ッッッ!!!」



残るショッカーライダーは№7、ただ1人となる。
№7は拳をぷるぷると震わせると2号へと向き直った。怒りで身体が震える。


「2号……なぜ、貴様は俺達、ショッカーの邪魔をする?……なぜ、ショッカーの理想とする世界の素晴らしさが分からないんだ?」


「俺は人間の自由の為に、正義の為に戦っているんだ。そのために人々を殺め、自由と尊厳を奪う人類の敵……ショッカーを倒す。それだけだ」


№7は静かに反論する。


「でもお前はその『人類の敵』に生み出されたわけだろ?それに自分の独善的な正義観で怪人を……言うなれば自分の兄弟達を蹴り殺しているわけだ。……俺に言わせれば『鬼畜の所業』だ」


№7は続ける。


「それにこの世界のどこに守る価値があるんだ?冷戦、公害、過激派による爆破テロ、内戦……この世は不正に満ちている。ショッカーはそんな世界を統一された秩序の元に変えようとしてるんだ」


それに対して2号は腕を払って言い放つ。


「詭弁を吐くなッ!!貴様らショッカーのしようとしていることは知っているぞ!!首領に選ばれた人間だけの少数支配をする気なんだろ!!」



№7は理解に苦しんだ。なぜ目の前の裏切り者はそうまでしてこの世界に固執するのか、なぜそうまでショッカーを『悪』としか認識できないのか……理解できないことだらけだった。


やがて№7の心を偉大なるショッカーを侮辱し、反抗し続ける裏切り者への怒りが支配する。
歯ぎしりし、拳をより強く握りしめた。仮面越しではあったがその目は怒りに満ちていた。


(なぜ、コイツにはショッカーの素晴らしさが理解できないんだ?
なぜ、自らの創造主たる首領様に尽くそうと思わないんだ?)



激怒。№7は激怒した。

 

「分かった……。やはり、貴様はショッカーのミスクリエーション(出来損ない)だ。『ショッカー(新世界)の敵』、仮面ライダー!!許さんぞ!!2号!!」








"その時、不思議なことが起こった"




2号に敗れた№1から№6までのショッカーライダー達の恨み、哀しみ、怒り、苦しみが№7の天候能力を爆発的に活性化させたのである。



「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ!!!!」


№7が叫んだとほぼ同時に地面に大きな影ができて少し暗くなった。
何事かと思い、2号は空を見上げる。灰色の雲が現れたのだ。それは霧のように広がり、青空を覆い尽くす。


「これは……?」


灰色の雲から白い粉が風にのって吐き出される。雪だ。雲から雪が2号にぶつかるようにして吐き出されているのだ。
凍てつく寒さ。
周辺の気温は急速に低下する。道路沿いの木々はみるみるうちに枯れ落ちていく。2号や№7の生命力が高くなれば凍死してもおかしくないほどの寒さだ。

吹雪が白い渦となって辺り一体を薄暗い銀世界に変えていく。
2号は吹雪の激しさに息が詰まりそうだった。




仲間を殺された怒りや恨みが彼自身でも気づいていなかった最強の技を覚醒させたのだ。
№7は無意識に両手を伸ばし、構えた。すると両腕が銀色に光る。


絶叫。



「ショッカァァァァ!!!ブリザァァァド!!!」



バギッ!!バギッ!!



№7は2号の周囲の空気を瞬時に凍らせた。
やがて凍った空気は氷の壁となり、2号を取り囲む。


このままでは氷の壁に閉じ込められてしまう。2号は飛び上がって脱出しようとした。しかし何故か脚が全く動かなかった。
2号が足元を見ると脚部は氷漬けにされていた。それは次第に脚から腰、腰から腹へと徐々に昇っていく。№7はそれを首の辺りまでで止める。
2号は全く身動きが取れなくなる。


「ハハッ!これで動けまい!さぁ、トドメだ!」


吹雪の粉雪の一部が上空に結集し、無数の巨大な氷柱を創り出す。どれも細長く、先端が鋭い槍のような形をしていた。


「今まで貴様らライダーに倒された怪人、戦闘員達の無念を思い知れェェ!!」


№7はそう叫ぶとまるで指揮棒を振るように右手を動かした。彼の腕の動きに合わせて氷の槍が雨のように2号に降り注ぐ。

爆風にも似た衝撃波が起こる。地面に降り積もった雪が舞い上がり、視界が白一色となる。

№7は2号の生死を確認しようと目を凝らす。


残念ながらやはり2号はまだ生きていた。裏切り者とはいえ、流石はライダーというべきか。

それでも身体中がボロボロであった。両足に力を入れて立ち上がろうとするがすぐにバランスを崩してしまう。
ダメージ量、悪天候、そして寒気。2号の味方をするものは何もない。
先程の氷柱ミサイルの影響で氷の壁が壊れ、2号の拘束も解けてしまったが特段、問題は無いだろう。


「ハッ!運のいいやつめ!!」


もう一度、同じ技をくらわせよう。今なら、まともに迎撃の体勢をとることができない2号にさばききれるわけがない。
あとひと押しだ。

勝負の行方は見えている。



倒したら首領様に報告した後にこいつの首を№1から№6までの墓標に捧げていいか許可をいただこう。
それから世界征服を成し遂げ、誰よりも精力的にショッカーのために尽くそう。
様々な思いに胸が膨らむ。



「もう一度ッ!!ショッカァァァ!!ブリザ………」



ヴィィィィィィィンンン!!!!!



突如エンジン音が鳴り響く。獣の咆哮のようなその音はだんだんとこちらに近づいてくる。


何だ?いいところなのに……。



№7がその音がする方をチラリと見ようとした瞬間、白いバイクが物凄いスピードで突っ込んだ。№7は軽く6メートルは吹っ飛び、地面に叩きつけられる。




何が起こったんだ?


№7は突っ込んできたバイクを見た。
そして運転手の姿を見て驚愕した。


(ま、まさか!!嘘だろ…?今になって!!)



バイクの運転手は筋肉質な身体を持ち、腰には風車のついたベルトを着けていた……本郷猛その人である。


「遅くなってすまないな、一文字」


「……やっと来たのかよ。本郷」


本郷の謝罪に2号は素っ気なく応えるがどこか嬉しそうだった。


「おい!隼人!!俺もいるぞ!!」


「おやっさん!!来たくれたんですね!!」


本郷の背後から立花藤兵衛が顔を出した。№7はそのやりとりにイライラした。すぐに俺に倒されるというのに呑気な奴らだ!!


「沙羅クセェ!!お前らも凍らせてやる!!」


幸い、本郷は変身前なのだ。2号は動けそうもないため、本郷のベルトさえ凍らせてしまえば十分に勝機はある。


№7は両手を本郷の足元に向けて、吹雪を起こし、両足を凍らせた。まずは身動きできなくしようとしたのだ。
しかし……


バリ!!バリ!!


本郷は何食わぬ顔で突き進んでくる……足にまとわりつく氷を破壊しながら。
目の前の光景が信じられなかった。
なんという脚力なんだ!!
まだ変身前だというのに!!


「くっ!!これならどうだ!!」


今度は本郷の周囲に氷の壁を作って閉じ込めた。しかし本郷はハエでも払うかのように腕を振るって氷の壁を破壊しながら進んでいく。


「ありえない!!まだ変身前、フルパワーではないのだぞ!!」



本郷は№7の前までくると彼に対して続けざまにパンチをお見舞いする。
№7は受け身の体勢をとるが翻弄される。

№7が反撃しようと拳を振りかぶったがすぐに本郷にいなされ、がら空きになった胸に蹴りを喰らわされた。


実戦経験の差が如実に現れていた。
しかもアメリカ、ヨーロッパ、東南アジアと世界中でショッカーと戦い続けてきた本郷とつい数日前に作られたばかりの№7では差がありすぎた。
2号を追い詰めた先程の勢いも嘘のようになくなっていた。



本郷は№7の右腕に空手チョップ。
その影響で№7の右腕が火花を放つ。どうやら壊れてしまったようだ。


右腕に走る痛み。天候装置にも影響をきたしたらしく寒さが逆流する。
肝心の吹雪技が使えない。


№7はうずくまり、右手を痛々しく抑える。本郷はそんな№7ににじりよる。
№7はこの後に来るであろう強烈な蹴りと衝撃、そして……死を覚悟した。


(…ああ…俺達、ショッカーはまたライダーに負けるのか……。一体、いつになったら勝てるのだろう)

―――――――――――――――――――――――
ショッカー 日本支部 指令室


複数のモニターから送られる現地での映像を通じて作戦の様子を見ていた大幹部達は溜息をつく。精鋭の筈のショッカーライダーが次々と破られ、もう1人しか残っていない。おまけにその最後の1人も手負いの状態である。

大幹部達は作戦は失敗したのだと決めつけて諦める。


「またも失敗か……」
「そのようだな、7体のショッカーライダーですら一文字1人に勝てないとは…」
「首領に何と報告すればいいのだ………」


ゾル大佐、死神博士、地獄大使の3人は頭を抱えて指令室を後にしようとした。一様に足取りは重く、表情は苦悶に満ちていた。


続いてブラック将軍も指令室を去ろうと背を向けたその時、モニターが目に入った。
そのモニターはショッカーライダー達の戦闘の後方の映像を映し出していた。
ブラック将軍はその映像に気になるものを見つけた。


「む?あれは……?」


ブラック将軍は注視する……。
そして指令室を去ろうとする3名の大幹部の方を向いた。


「ちょっと待つんだ。まだ負けたとは限らんぞ。モニターを見てみろ」


ゾル大佐、死神博士、地獄大使は足を止め、ブラック将軍と共にモニター画面を見る。
確かに気になるものが写り込んでいた。
希望的観測ではあるが少しは戦局に変化をもたらすからもしれない。

4名は注視する……


本郷猛の後方で黒い全身骸骨タイツの男がムクリと立ち上がるのを―。
―――――――――――――――――――――――

グロッキー状態の№7を前に本郷は1号に変身するべく変身ポーズをとる。
右腕を大きく突き出し、そのままゆっくりと回転させる。


ピュウウウウウウウウ!!!!


本郷のベルトに周囲の空気が風となって吸い込まれる。№7には風の音が処刑通告のように聞こえた。


「ライダァァァァ!!!!へん―」




この時である。
この時、本郷猛は気づくべきだった。
そうすれば歴史は変わっていたかもしれない。
ショッカーが世界を征服することは無かったかもしれない。一文字隼人がこの日のこの瞬間をずっと後悔し続けることも無かったかもしれない。




そう、気づくべきだったのだ。





背後から迫る1人の戦闘員に―。





「イーーーッッッ!!!!!」



戦闘員は本郷の間近に迫ると背後から持っていたククリナイフを本郷猛の回転中のベルトに刺し込む。


「何ッ!?!?」


その場にいた誰もが一瞬、固まった。







彼……戦闘員 1010号は先程、一文字に肘打ちを喰らい、気絶してしまったショッカー戦闘員である。


彼は驚いた。 
目が覚めると精鋭のショッカーライダー達は№7を除いて全滅しており、彼も負傷していたからだ。2号も大ダメージを負っているのが幸いだった。
そんな時、バイクのエンジン音が聞こえた。倒れた姿勢のまま、音のする方向へ視線をやればそこにはもう1人の裏切り者、本郷猛の姿があった。
  
本郷は№7を殴りつけ、一方的な攻撃を加えると彼にジリジリと近づく。

きっとトドメを刺すつもりなのだろう。

このままでは№7が破れ、作戦が失敗してしまう―。
仲間の死も、これまでの努力も、何もかもが無駄となる!!!


気づいた頃には俺は自分の得物を拾い上げて本郷猛の方へと走り出していた。
幸い、奴は自分には気づいていない様子だった。


「イーーーッッッ!!!!!」


滑るようにしてククリナイフを回転するベルトに刺し込んだ。
本郷の奴は俺を見て、ひどく驚いたような顔していた。裏切り者の間抜け面を拝んでやった。
それだけでこれまでの努力や鍛錬、仲間の死が報われたような気がした。
後は生き残ったショッカーライダーに任せるとしよう。戦闘員の仕事はあくまで怪人のサポートなのだから。
―――――――――――――――――――――――
№7は目の前の出来事にただ呆然とした。
本郷が変身しようと叫んだ途端、戦闘員が乱入したのだ。おまけにその戦闘員は本郷のベルトにナイフを刺し込んで回転を止めてしまった。
ただの戦闘員がだ。
作戦目標の『変身の不可能化』を達成してしまったのである。


「イーッ!!!」


戦闘員1010号は№7の方をバッと向くと№7の赤い複眼をジッと見つめた。
1010号が№7を見つめるその目は「今がチャンスだ!!」と言わんばかりであった。


(その通りだ。ここでウジウジと考えていても仕方ない!!これは好機だ!!)


№7は1010号の想いを理解し、すぐに立ち上がって動けなくなった本郷猛のもとへ駆け出す。
 

「感謝するぞ!戦闘員!」


すれ違いざまに1010号に礼を言う。




俺は駆ける。ショッカーの為、偉大なる首領の為、仲間の無念を晴らす為、世界征服の理想の為。
本郷との距離を次第に詰め、残り5メートルほど。


狙うは本郷の胸元だ。



「死ねぇッ!!裏切り者がぁッ!!!」



ショッカーライダーは空中高く飛び上がり、本郷猛に向かって脚を突き出すと猛スピードで隕石の如く急降下した。


「ショッカー…ライダー……キックゥゥ!!!」



本郷はショッカーライダー№7のキックを腹にマトモに喰らう。
それだけで衝撃波が起き、固い道路のアスファルトに小規模なクレーターができた。


2号は叫ぶ。



「本郷!!本郷、大丈夫か!!!」


「う、うう………」


本郷は胸を抑えながらゆっくりとふらつく足取りで2号の元へ行こうとする。しかし余りのダメージにすぐにバタリと倒れてしまった。



「一文字……滝……ルリ子さん……おやっさん……すま、ない」


本郷は一文字と藤兵衛の方へ手を伸ばす。
その瞬間―。



ドガァァァァァァァンンン!!!!


本郷は大規模な爆発を起こす。
それもさっきまでのショッカーライダー達とは比べ物にならないほどの大爆発である。


「本郷!!!ほんごぉぉぉぉ!!!!」


2号は絶叫し、炎上する本郷の死体へと駆寄ろうとするも立花藤兵衛に押さえられ、止められる。


「一文字!今は退くんだ!!」


「で、でも!本郷が!本郷が!」


「今のお前はダメージがでか過ぎる!!はやくッ!!」


2号は藤兵衛に半ば引きずられる形で退散していった。










「勝った…のか…?」


2号達の後ろ姿を見ながら俺は立ち尽くす。

勝ったんだ!!ライダーに!!
あの憎き裏切り者、本郷猛の息の根を止めたのだ!


裏切り者を倒せた興奮、ショッカーに尽くせたという喜び、ありとあらゆる多幸感がプラスの感情となって波のように押し寄せる。


 
「やった…!!やったぞ!!!」


そこまできて№7はふっと自分の窮地を救ってくれた戦闘員の方を見た。
彼は既に溶けて消えてしまった戦闘員仲間の遺体のあった方を眺めていた。遺体のあった場所は人形の泡がまだ残っていた。
彼の肩にポンと腕を置く。1010号は少し、驚いたような顔をした。


「お前のおかげだ。改めて礼を言うぞ」


彼は顔を綻ばせると少し距離をとって右手を掲げるショッカー式敬礼をした。


「イーッ!!ありがとうございます!!そう言ってもらえると仲間達も報われます」


それとほぼ同時に彼らの脳内に割り込むものがあった。


『よくやった!№7。よくぞ、本郷を抹殺してくれた!』


首領である。№7と1010号は片膝をつく。


『そこの戦闘員もだ。貴様にも褒美をやろう。2人共、すぐにアジトへ帰投せよ』

 
「「イーッ!!!」」


廃墟と化した通りに№7と1010号の奇妙な勝どきが響き渡った。
―――――――――――――――――――――――――
その数日後……。


ショッカー日本支部 アジトの一室。
その部屋は広く、見上げる程の高さに天井があった。そこには数千人もの怪人と戦闘員達がひざまずいて、首領に対する忠誠心を顕にしていた。
その部屋には本来、組織の行く末を決める重大な決定が幹部怪人に発表される場であり、今回のように日本支部に所属する怪人が全員、集められることなど異例中の異例である。
さらに奇妙なことにその場にはショッカーのメンバーだけでなく、首領の作った他の暗黒組織であるゲルダム団、GOD機関、ゲドン、デルザー軍団、ネオショッカー、バダン、ゴルゴムの大幹部や怪人達も集結していた。

誰一人として動かず、息詰まるような沈黙が室内を包み込む。


コツ、コツ、コツ


複数の足音が響き渡り、壇上に各組織の大幹部達が上がる。

そして、そのタイミングを見計らったかのように頭上高くに飾られたエンブレムの鷲の胸部が緑色に光った。


『諸君!よく集まってくれた!諸君らを集めたのは他でもない!!とうとう、我々はにっくき裏切り者である本郷猛を抹殺したことを皆に告げるためだ!』


首領は鷲のレリーフを通じて高らかにそう宣言すると大歓声が沸き起こった。
「裏切り者のライダーを倒した」。
その衝撃は稲妻のように怪人や戦闘員達を駆け巡った。


『数日前のあの日を本郷猛撲滅記念の日と定め、今後は世界全体をその支配下に置くべく、より本格的に活動しようと思う!!』


首領の言葉にまたも怪人と戦闘員達から喜びと興奮が漏れる。


『それに伴い、それまで別々に動いていた全て暗黒組織をショッカーに結集、下部組織として統合する!』


!!!!!?????


その場の空気が一瞬だけ凍った。
首領は「異論は無いな?」と付け足し、皆の返答を待ったがさすがにこれには僅かな間ではあったがざわめきが起こる。

ブラック将軍やアポロガイストなどのショッカー以外の組織の大幹部や怪人達は首領のまさかの宣言に驚いた様子を見せたが偉大なる首領の命令にすぐに賛同した。


「ゲルダム団は首領様の仰せのままに…」
「GOO機関もです……。総司令」
「どんな組織であれ、バダンは総統と共に…」
「御意向承りました…。創生王様」


『異論は無いようだな。たった今を以って、全ての組織はショッカーに統合された。そして私は「首領」ではなく「大首領」へと名を変える。いいな?』


「「「イーーーッ!!!」」」


首領はレリーフ越しにフッと嗤う。
そしてその場にいる全員に劇を飛ばす。


『裏切り者の1人を粛清したことで我がショッカーの世界征服はよりスムーズに進むだろう!!これからの諸君らの活躍と挺身に期待する!!』



「「「イッーーー!!!!」」」


怪人と戦闘員達が興奮したように一斉にショッカー式敬礼をした。






数週間後、ショッカーの世界征服はほぼ完了した。ダブルライダーの内の1人である技の1号こと仮面ライダー1号、本郷猛を葬り去ったからである。

勿論、仮面ライダー2号こと一文字隼人も懸命に戦った。
しかし、幾ら戦ってもたった1人で巨大なショッカーの世界征服の野望を食い止めることは不可能だった。

さらにこの時点でショッカーの勢力は日本の政府高官や警察上層部だけでなく仮面ライダーの数少ない支援者の1人……FBI捜査官 滝和也のいるFBIにも及んでいた。
  
 
―――――――――――――――――――――――
アメリカ合衆国 国連本部ビル FBI分室


日本支部の捜査員である滝和也はFBI長官に直談判していた。
FBIがショッカーに対する調査を完全に打ち切ったからである。「そもそもそんな組織は実在しない」という理由と共に。
多くの捜査員が改造人間を目にしていることから「実在」は確かなはずなのに。
自分もライダーと共に戦ったのに。


(上層部は臆病風にでも吹かれたのか!?このままでは世界はショッカーに征服されてしまうぞ!!)


長官の態度もそうだが、これまで多くの仲間をショッカーに殺された滝としてはこの姿勢が許せなかった。負け腰になるにも程があると思ったからだ。


「何故、ショッカーに対する調査を打ち切りにしたんですか!!??」


「ショッカー?なんのことだね?」


「何を言っているんですか!?長官もご存知でしょう!奴らがどんなに危険かを!!ライダーが1人しかいない以上、捜査官をもっと寄越してください!!」


勢いよくまくし立てる滝に対してFBI長官は両手を挙げ、やれやれといった様子で呆れた顔をする。

 
「はぁ、世界征服に改造人間…あげくに無償で戦う正義のヒーローねぇ。……馬鹿馬鹿しい。コミックじゃあるまいし、そんな狂った組織や酔狂な男がいるものか」


その言葉に滝は怒りに震えた。まるで本郷が……友人が端から存在しなかったかのように扱う長官のことが許せなかった。滝はすんでのところで殴りそうになるのを堪える。
目の前にいるのは自分の上司であり、この国の刑事活動・公安活動などを担う長である。ここで何か反論しても無駄なのは明白であり、滝は押し黙ることしかできなかった。


「Mr.滝、どうやら君は疲れているようだ。休暇を与えよう。確か結婚したばかりの女房がいたな?新婚旅行にでも行ってきたらどうだ?」 


滝は悔しそうに部屋から退室する。

シン―。
人気の無くなった執務室。そこでFBI長官は不気味に微笑む。


「フフッ、Mr.滝め、馬鹿なやつだ。お前の思うより我がショッカーの勢力は大きいのだよ…FBIも例外なくな」


FBI長官は既にショッカーに洗脳されていたのだ。
彼だけではない。もはや世界中の政府要人がショッカーの息のかかった人物に成り代わっているのであった。


「さて……知り過ぎたMr.滝は休暇後に適当な所へ左遷させておくか……はて、どこがいいかな」





そしてショッカーの世界征服計画は最終段階に入った。 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?

我ながら戦闘員とショッカーライダーが本郷猛を倒すというのは無茶苦茶な展開だとは思いますが、本作のストーリー上、どうしてもダブルライダーのどちらかを退場させる必要があったのです。どうかご理解ください。
№7と1010号は『GATE ショッカー』の方でも物語の根幹に関わるキャラクターですので今回、登場させました。

次回でプロローグは終了。ショッカー世界征服達成回です!!
乞うご期待!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧