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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第五十七話 戦う想い   ★

side なのは

 赤い子と向かい合うフェイトちゃん。

「フェイトちゃん」
「大丈夫。なのはは私が守るから」

 そして私の傍で赤い子を見つめるユーノ君。
 ここでは戦いにくいと思ったのか
 
「ちっ」

 赤い子が舌打ちをしてビルの外に飛び出す。

「ユーノ、なのはをお願い」
「うん」

 フェイトちゃんもすぐに赤い子を追ってビルの外に飛び出していく。

「今、治療するから」
「うん」

 ユーノ君の治療魔法の光と温もりに体を委ねる。

 でも落ち着いて考えるとなんで士郎君がいないんだろう?
 ここは海鳴市、士郎君が管理してる土地だから一番最初に士郎君が戻ってくるとばかり思っていたけど

「ユーノ君、士郎君は?」
「大丈夫。今、こっちに向かってる。
 フェイトの裁判が終わって皆で海鳴に向かってたんだけど、士郎は管理局との交渉が合って遅れてるんだ。
 それよりあの子は誰?
 なんでなのはを?」
「わかんない。
 急に襲ってきたの」

 ユーノ君の問いかけに首を横に振る。

 でも士郎君も海鳴に向かってるという真実で少しだけ安心した。

「でももう大丈夫。
 フェイトもいるし、アルフもいるから」
「アルフさんも?」
「うん」

 そっか。
 アルフさんも来てくれたんだ。

「ユーノ君、屋上に」
「わかった」

 ユーノ君に肩を貸してもらって屋上に出ると戦ってるフェイトちゃんとアルフさんが見えた。

 フェイトちゃんとアルフさんが戦ってるのを見てるだけで、ユーノ君に守ってもらって、何も出来ないのが悔しかった。




side フェイト

 私と戦ってる赤い子。

 近接型の戦い方もそうだけど、アルフのシールドを簡単に破った一撃。
 まともに受ければ落とされる。

 だけど私は一人じゃなくてアルフと一緒なんだ。

(アルフ、私が前に出るから)
(あいよ。うまく拘束するから)

 私が赤い子とぶつかり合っている中、アルフには念入りに魔力を注ぎ込んでバインドを組み上げてもらう。

(フェイト、準備でできた。
 いつでもいいよ)
(うん)

 ぶつかり合っている最中に一気に後ろに下がる私。
 
「このっ! っ!!」

 私を追って、向かってくる赤い子にアルフが手足にバインドを施して動きを封じる。
 私みたいなスピードタイプじゃなくてパワータイプだけど、アルフが念入りに組み上げたバインドを力づくに壊すことは出来ない。

「終わりだね。
 名前となのはを襲った目的を教えてもらうよ」

 私の言葉に睨みつけてくる赤い子。

 次の瞬間、何か空気が変わった。

「なんかやばいよ! フェイト!」

 アルフもこの空気に警戒する。
 だけどそれも遅すぎた。

「うあっ!!」

 赤い子に向けていたバルディッシュにいきなり剣を叩きつけられて、弾き飛ばされる。

「シグナム?」

 赤い子が私を弾き飛ばしたポニーテールをした剣を持つ女性をそう呼んだ。

「うおおおっ!!」

 それとほぼ同時にアルフの傍にも男の人が現れて

「っ!!」
 
 アルフを蹴り飛ばした。

 この人たち、一体どこから現れたの?
 それに赤い子を守ったという事は仲間?
 そうなると今まで二対一だったのが、二対三。
 ユーノを入れても三対三。
 数の有利がなくなる。

 これは私のミスだ。
 赤い子に仲間がいる可能性を考えてなかったから。

 自分の失敗の後悔も、今の状況を把握して次の一手を考える事も

「レヴァンティン、カートリッジロード」
「Explosion.」

 相手はそれを許してくれるはずもなく、剣が魔力と共に炎を纏う。

「紫電一閃! はあっ!」

 間合いを詰めるとともに振り下ろされる剣。
 それをバルディッシュで受け止めようとするも

「なっ!」

 バルディッシュをあっさりと分断し、再び振りあげられる刃。

「っ!」

 防御が薄い私には致命的な一撃に息をのみ、恐怖する。

「Defensor.」

 そんな中でバルディッシュがシールドを張ってくれるが、それも突き破られてビルに叩きつけられた。

 だけど勢いはそれでは止まらないで、いくつもの床を突き破っていた。
 
「くっ」

 私が落ちてきたであろう穴を見つめ、体を起こす。

 幸いにも軽い打ち身程度で済んだ。
 いや、バルディッシュがシールドを張ってくれたからこの程度で済んだ。
 もしシールドがなければ死んでいてもおかしくはない。

「フェイト、大丈夫」
「ユーノ、私は大丈夫」
「待って、時間がないから簡易だけど治癒をかけるから」
「ありがとう」
「バルディッシュも」

 私を守ってくれたバルディッシュも柄は半ばから斬られ、全体に傷や亀裂が入っている。
 でも

「大丈夫。本体は無事」
「Recovery.」

 私の言葉に応えるように機体修復をして見せるバルディッシュ。

「ユーノ、なのはは」
「回復と防御の結界魔法の中にいるから大丈夫」
「そう、ならよかった」

 なのはがちゃんと安全という事に安堵するけど、状況としてはあまりよくない。

 数では三対三と拮抗しているけど、なのはを攻撃した赤い子もバルディッシュを一撃で分断した剣士、シグナムもかなりの実力の持ち主。
 
 このまま戦い続けるのはあまりよくない。

 それに負傷したなのはとレイジングハートもいる。
 少しでも早く治療をしたいのが本音。

 だけど数の拮抗が崩れればこちらが落とされる。
 なら

「この結界内から全員同時に外に転送、いける?」
「うん。アルフと協力出来れば何とか」

 戦いの最中で結界に捉えられている状態での全員同時の転送。
 無茶は承知だけど、全員無事にこの結界から逃げる方法が思いつかない。

「私が前に出るからその間にやってみてくれる?」
「わかった」
(アルフもいい?)
(ちょっときついけど何とかするよ)
「それじゃ、頑張ろう」

 覚悟を決めてビルから飛び立つ。

 そんな時私を心配そうに見つめるなのはと目があった。

 大丈夫。

 今度は私がなのはを助ける番だから。
 
 なのはに微笑んで、戦いに舞い戻る。




side 士郎

「あと五分ほどお待ちください」
「わかりました」

 アースラに向かう途中の中継ポートで、転送先の切り替えのために待つ時間があり、こちらは動く事も出来ない。

 いや、動く事は出来なくてもやれることはある。

「すいません。
 次元航行船アースラのリンディ提督と話したいのですが、お願いできますか?」
「わかりました」

 クラウン中将が話を通しておいてくれたおかげで、色々スムーズに物事が進み助かる。

「繋がりました。どうぞ」
「ありがとうございます。
 リンディ提督、衛宮士郎です」
「士郎君」
「提督、今の海鳴の状況をわかる限り教えてください」

 クラウン中将のおかげで色々とやりやすいのは確かだがここに強硬派の人間がいないとも限らないので、最低限の線引きはしておく。

「士郎君の許可を得て、ユーノ・スクライア、フェイト・テスタロッサ、使い魔アルフの三名は海鳴の結界内に入りました。
 現在、アースラのオペレータスタッフが結界抜きをするために動いていますが、ミッドの術式ではないことから時間がかかっています」

 ミッド式ではない結界。
 前に侵入した猫の関係者か?
 それとも全く別のやつか?

「結界内へアースラから私を転送は可能ですか?」
「現状では無理です。
 先の三名は転送魔法を協力して行ってなんとか結界内に入りましたが」
「そうですか……」

 転送魔法が使えるかつ戦力としてはクロノぐらいか。
 俺は転送魔法が使えないからクロノ一人で結界内に転送は難しいだろうな。

 厄介だな。
 結界内の転送は出来ない。
 状況もわからない。

 転送を阻む結界だ。
 歩いて入れるはずもない。

 ともかく結界内に無理矢理でも侵入してなのは達の無事を確認するのが先決か。
 そうなると

「リンディ提督。
 海鳴への転送準備をお願いします。
 アースラに着き次第、結界を力づくで破ります」

 入る事が出来ないのなら力づくで入口を作るだけだ。

「……わかりました。
 準備をしておきます。
 ですがいいのですか?」
 
 リンディさんの表情が提督の顔からプライベートの時の表情に戻る。

 ここでのいいのか、という問いかけは結界を破壊してもらってもいいのかという意味ではない。
 管理局の目の前で俺の魔術の力の一端を見せていもいいのかという意味だ。

 どのように結界を破ったのか記録できませんでしたという言い訳は今回は出来ない。

「構いません。
 彼女達を守るためならば」
「転送ポート準備できました」
「わかりました。
 では提督、準備の程をよろしくお願い致します」

 通信を切り、転送ポートに向かう。

 いまだ行く先は見えずとも彼女達を守りたい。

 その気持ちに間違いなんてないんだから




side フェイト

 シグナムという女性。

 こうして戦うと改めて強さがわかる。



 打ちあう度にバルディッシュは傷つき、フォトンランサーは身に纏った魔力にかき消された。

 転送の準備のためにユーノとアルフに協力させたくても、シグナムと一対一で墜とされないように、アルフ達の方に行かせないようにするだけで精一杯。

 そして再び

「レヴァンティン、叩き斬れ!!」
「Jawohl.」

 シグナムの一撃に先ほどよりはうまく防いだものの、再びビルに叩きつけられる。

 叩きつけられた私を見据えながら、シグナムが剣に弾丸を放り込む。

 あれだ。
 あの弾丸で一時的に魔力を高めてるんだ。

「終わりか? ならばじっとしていろ。
 抵抗をしなければ命までは取らん」
「誰が!」

 バリアジャケットがあるとはいえ、全身至る所に痛みがある上にあの弾丸を使用した魔法に対する対処法も思いつかない。
 それでも立ち上がり、再び飛び上がりシグナムと向かい合う。

「いい気迫だ。
 私はベルカの騎士、ヴォルケンリッターが将シグナム。
 そして、我が剣レヴァンティン
 お前の名は?」
「ミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託、フェイト・テスタロッサ
 この子はバルディッシュ」
「テスタロッサ、それにバルディッシュか」

 どう戦えばシグナムに勝てるのかわからない。
 それでもなのはを助けたい。

 私を助けてくれたから、それだけじゃなくて大切な友達だから。

 絶対に譲れない。

 


side なのは

 私が見上げる空でユーノ君が、アルフさんが、フェイトちゃんが傷つきながら戦ってる。

「助けなきゃ。
 私が皆を助けなきゃ」

 これ以上皆を傷つけさせないために、大切な人たちを守るために

「Master, Shooting Mode, acceleration.」
「レイジングハート?」

 そんな私の思いに応えるようにレイジングハートが翼を広げる。

「Let's shoot it, Starlight Breaker.(撃ってください。スターライトブレーカーを)」

 でも

「無理だよ。そんな状態じゃ」
「I can be shot.(撃てます)」
「あんな負担がかかる魔法、レイジングハートが壊れちゃうよ」

 ユーノ君から貰って、初めて魔法と出会ってからずっと一緒に戦って、空を飛んで来た私の大切なパートナー。

 そんなレイジングハートが壊れるところなんて見たくない。 

「I believe master.(私はあなたを信じてます)
 Trust me, my master.(だから私を信じて下さい)」

 そんな自分が壊れるかもしれないのに私を信じるといってくれるレイジングハート

 こんなレイジングハートの思いに応えないなんて事は絶対に出来ない。

「レイジングハートが私を信じてくれるなら
 私も信じるよ」

 信じてないはずがない。

 私の大切なパートナーをしっかりと空に構える。

 描かれる私の魔法陣。
 それと共に消えるユーノ君が紡いでくれた結界がかき消える。

(フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん、私が結界を壊すからタイミングを合わせて転送を)
(なのは?)
(なのは、大丈夫なのかい?)
(大丈夫。スターライトブレイカーで撃ち抜くから!)

 そう、私達なら出来るよね。

「レイジングハート、カウントを!」
「All right. Count nine, eight,」

 レイジングハートのカウントに合わせ集まる魔力

「seven, six, five,」

 その魔力に赤い子達が私に気がつくけどフェイトちゃん達が時間を稼いでくれてる。

「four, three, th…ree」

 そんな中、レイジングハートの声がかすれ、カウントが止まる。
 レイジングハートがこのまま壊れてしまいそうで

「レイジングハート、大丈夫?」
「No problem.(大丈夫です)
 Count three, two,」

 再び始まったカウントにレイジングハートを振りあげる。

「one」

 そしてレイジングハートを振りおろそうと踏み込もうとして

「っ……あ」

 体に奔った衝撃に呼吸すらままならなくなる。

 自分の身体を見れば、胸から突き出る手。

「なのは!!」

 フェイトちゃんの呼ぶ声に応える事も出来ず、胸から突き出る手を見つめる。

「かはっ」

 その手は私の中をまさぐるように再度動き輝くモノを掴む。

 手の中にあるその輝きは徐々に弱くなると同時に自分の中から何かが引き摺りだされていくような嫌悪感。

 そんな嫌悪感に包まれ、薄れていく意識の中で時に空に輝く赤い閃光。

 その閃光の中から飛び出してくるよく知ってる大好きな男の子。

「……士郎君」

 私はその男の子の名前を呼びながらゆっくりと意識を失った。




side 士郎

「リンディさん、転送準備と現状は?」

 アースラのブリッジに転送されるなり、挨拶など後回しに現状の把握を優先する

「転送先の詳細位置情報さえ準備出来ればいつでも行けるわよ。
 海鳴の結界は現状進展はないわ」

 そんな俺の焦りをリンディさんも理解してくれているようで何も言わず俺の聞きたい事を答えてくれる。

 結界は相変わらず張られていて進展はなしか。

「結界の強度は?」
「エイミィ」
「残念ながら術式が違うから正確な強度はわからないけど並の魔法じゃ壊れないと思う」

 並な攻撃で壊れないなら、桁違いな威力の攻撃で一点突破で破壊すればいいか。

「リンディさん、結界の上空600mに転送を」

 転送先の位置の指定にリンディさんやブリッジの他の面々も目を丸くする。

「……何をする気だ?」

 そんな中聞きたくなさそうに言葉を発するクロノ。

「並な攻撃で壊れないなら、桁違いな一撃を与えるまでだ」
「……それは僕達が記録するという事を、管理局の強硬派の者達までそれを見るという事を理解して言っているのか?」
「クロノ、それは優先度が違う」

 俺の言葉にクロノと同意見のようで首を傾げていたアースラの面々と俺の言いたい事を理解したように眼を閉じるリンディ提督。

「なのはや結界に突入したフェイト達を救うのが最優先だ。
 管理局に俺の能力がばれる事と比べるまでもない」

 俺の言葉に息をのむクロノ達。
 その言葉にリンディさんはゆっくりと瞳を開け

「エイミィ、結界の破壊作業は中断。
 転送先座標、海鳴市結界上空600mに設定。
 どれくらいで出来る?」
「えっと、三十秒でいけます。
 アレックス、結界解析は後回し、転送の準備を最速でするよ」
「了解!」

 エイミィさん達の言葉に頭に念のためと用意していた設計図を解き放ち

「―――投影、開始(トレース・オン)

 深紅の槍を右手に握る。

「クロノ、下に加速するための足場がほしい。
 転送した時に頼めるか」
「え、ああ、それぐらいなら大丈夫だ」

 クロノにひとつ頼みごとをし、外套を翻して、先ほど入ってきた転送ポートに歩きはじめる。
 そんな時

「士郎君、後悔は……しない?」
「しませんよ。
 絶対に」
「管理局と戦う事になっても?」
「なのはやフェイトを守れない方が後悔します」
「……そう、気をつけてね」
「ありがとうございます」

 リンディさんに振り返って一礼する。

「よし、準備できた!
 ポート開くよ」

 エイミィさんの言葉に転送ポートに入り、光に包まれる。
 その光に包まれアースラから消える直前

「やっぱり貴方は自分を犠牲にするのね」

 リンディさんのそんな言葉と共にどこか悲しそうな表情が印象的だった。




side リンディ

 士郎君の魔術を使う時の詩が静かに、力強く紡がれる。

「―――投影、開始(トレース・オン)

 そして士郎君の右手に握られたのは禍々しい血のような鮮やかな深紅の槍。

 その槍を見た瞬間、その槍の存在感だけで、これがジュエルシードを壊した槍なのだと理解出来た。

「これが……」

 傍で共に見ていたクロノも理解したようでじっとその槍を見つめていた。

「クロノ、下に加速するための足場がほしい。
 転送した時に頼めるか」
「え、ああ、それぐらいなら大丈夫だ」

 士郎君のクロノに向けられた言葉に、一瞬驚きながら、クロノが頷く。
 クロノの返事に満足したようで、外套を翻して、先ほど入ってきた転送ポートに歩きはじめる士郎君。

「士郎君、後悔は……しない?」

 そんな士郎君の背中を見て自然と言葉が出てきた。

「しませんよ。
 絶対に」
「管理局と戦う事になっても?」
「なのはやフェイトを守れない方が後悔します」

 だけど士郎君は当然のように返答をする。
 やはり彼はそうなのだ。

「……そう、気をつけてね」
「ありがとうございます」

 半ば呆然としながら士郎君を見送り、その姿が転送ポートの光に包まれる。

「やっぱり貴方は自分を犠牲にするのね」

 彼は自分の事を軽く考え過ぎている。

 光の中に消えた彼の背中があまりに遠かった。 
 

 
後書き
連休なのでいつもより少しゆっくりと更新です。

三連休だからもう一話更新出来るかと思ったんですが、なかなかうまくいかないものです。
それではまた来週に。

ではでは 
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