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戦国異伝供書

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第百八話 関東管領上杉家その五

「武田殿と今川殿にじゃ」
「援軍を頼む」
「そうしますか」
「そして敵の後ろを狙ってもらう」
「そうしてもらいますか」
「そうして帰ってもらう」
 政虎と彼が率いる軍勢にというのだ。
「そうする、ではな」
「これよりですな」
「徹底して籠城し」
「戦わぬ」
「そうしますな」
「そうせよ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「これよりそうしてです」
「長尾殿と戦いませぬ」
「その様にします」
「戦うのも戦のうちなら戦わぬのも戦のうち」
 氏康は鋭い目で述べた。
「よいな、しかと守るぞ」
「それでは」
 皆頷きそうしてだった。
 どの城も守りを厳重に固めだ、そうして政虎が率いる大軍が領内に入っても北条はまさに一切であった。
 戦わなかった、氏康も小田原の守りを固めさせ。
 逸る者達は止め時には処罰をちらつかせてまで抑えた、そうしてだった。913
 政虎が八幡宮で関東管領になってもだった。
 氏康は動かずこう言った。
「当家がなるつもりであっても」
「後でなる」
「そういうことですな」
「だからですな」
「癪ではあるが」
 それでもというのだ。
「出陣せぬ」
「左様ですな」
「あくまで」
「籠城を続けますな」
「そうしますな」
「そうじゃ、長尾殿は民に手を出しておらぬしな」
 それならというのだ。
「一切じゃ」
「こちらは出ず」
「そしてですな」
「小田原に来ても」
「それでもですな」
「動くでない、やがて鎌倉に来るが」
 東国の武士達にとっては特別な地幕府があった場所だがというのだ。
「そこに来てもな」
「それでもですな」
「動かず」
「そうしてですな」
「小田原に来ても」
 この城にというのだ。
「これまで言った通りじゃ」
「動かずですな」
「そうしてですな」
「敵が去るのを待つ」
「そうしますな」
「左様じゃ、よいな」
 こう言って氏康自身政虎の関東管領就任には苦い思いをしたが動かなかった、そうして遂に軍勢は小田原に来たが。
 その大軍を見てだ、氏康は言った。
「十万じゃな」
「まさにここまで来ましたな」
「恐ろしい大軍です」
「関東と北陸の我等に敵意を持つ諸侯が揃った」
「それだけの軍勢ですな」
「十万の兵が我等の領地深くまで来た」
 小田原までというのだ。
「ならば兵糧等を運ぶのは大変であろうな」
「はい、確かに」
「敵地からここまでも大変ですが」
「十万の大軍です」
「なら余計にですな」
「大変ですな」
「だからな」
 それでというのだ。 
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