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切り札は二つ

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第四章

「今からそっちに行くよ」
「あっ、今から私がそっちに行くから」
「行かなくていいんだ」
「待ってて」
 早速熱い彼にクールに告げる。
「そこでね」
「わかったよ。それじゃあね」
 相手もそれで電話の向こうで頷いてきた。
「待ってるから」
「それで神社の中に行こうね」
「わかったよ」
 こうしたやり取りからだった。
 富美加は神社に向かった。その入り口に茶色の髪を後ろだけ少し伸ばしくくっている精悍な顔の少年がいた。歳は富美加と同じ位だ。
 背は高く身体つきはしっかりしている。赤いジャケットに青いジーンズがよく似合っている。その彼が笑顔で富美加に言ってきた。
「さっきは電話して御免」
「ううん、いいよ」
 富美加は笑顔で応えた。
「それよりもね」
「うん、神社の中に入って」
「そしてね」
「どうするんだい?やっぱり遊ぶんだよね」
 その彼総一郎は熱い口調で富美加に問うた。
「神社の中で」
「うん、そうよ」
「よし、じゃあ遊ぶか」
 何故かここで燃える総一郎だった。
「気合を入れて」
「気合入れるの?」
「入れないと駄目じゃないか」 
 富美加と梨香子が言う通りやはり熱い総一郎だった。
「さて、何を食べようか」
「まあ先に中に入ってね」
 富美加は総一郎の熱さをかわしながらこう言った。
「遊ぼうね」
「よし、まずは食べるか」
「って食べることしかないけれど」
 富美加は総一郎の横で困った苦笑いになって述べた。
「神社のお祭りって」
「金魚すくいに輪投げに射的に」
「そういえばそういうのもあったわね」
 実は食べることばかりでそうした存在は忘れていた富美加だった。
「まあとにかくね」
「じゃあ行こう、富美加ちゃん」
「まずはたこ焼き食べよう」
 熱さを食べ物に向けることにした。それでまずはたこ焼きだった。
「焼きそばにソーセージもね」
「あと焼き鳥も」
 総一郎は乗った、熱さはそちらに向かった。
「そしてたい焼きにクレープに」
「林檎飴もね」
「僕あれ大好きなんだよ」
 総一郎は両手を拳にしてその目を燃え上がらせていた。
「それに水飴も」
「綿菓子は?」
 富美加はそちらを煽りにかかった。
「それはどう?」
「いいね。じゃあ全部食べるか」
「うん、そうしよう」
 二人で言ってだった。富美加は総一郎と一緒に食べる方に向かった。
 総一郎は背が高いだけによく食べた。次から次にだ。
 そしてかなり食べてそして言ったのだった。
「いや、美味しいね」
「屋台の食べ物tって不思議な位美味しいよね」
「うん、本当にね」 
 総一郎は食べながら言う。今はクレープを食べている。
「それでだけれど」
「それでって?」
「食べているうちに遅くなったけれど」
 二人でのべつまくなしに食べた。それでだった。
 総一郎はクレープの次にたい焼きを食べつつ富美加に問うたのだった。
「どうするの、これから」
「それは」
 これまで一人で考えていることだが言えないことだった。 
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