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水着だけは嫌 

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第五章

「結構」
「そうなるのね」
「そうなんです。マネージャーとお風呂の時は必死に引っ込めてますけれど」
「湯舟の中だとね」
「見えないですから」
 だから今は気を抜いていたというのだ。
「そうしていたんですけれど」
「だから今は穏やかな顔で」
「外で引っ込めている時は」
「ああした顔になってたのね」
「必死に力入れてましたから」 
 腹にそうしていたからだったのだ。
「緊張してました」
「ううん、事情はわかったわ」
「すいません、隠してて」
「こんなことで謝らなくていいから」
 志津子は湯舟の中で頭を下げる優子にこう返した。
「別にね」
「そうなんですか?」
「こうしたことは言えないものだから」
 だからいいというのだ。そのうえで優子にあらためて言った。
「けれど。便秘になると」
「はい、凄いお腹出るんです」
 優子はまた自分から話す。顔を俯けさせて。
「自分でも呆れる位」」
「そうなのね。優子ちゃんってそんなに」
「お風呂の時は隠せたり湯舟がありますから」
 気も抜ける。だからまだ大丈夫だというのだ。
 しかしこれが水着や下着の撮影ならどうなるか。優子はそれを言うのだ。
「けれど。グラビア撮影って何時間もかかるじゃないですか」
「その間ずっと裸だしね」
 実質的にそうだ。隠すことは難しい。
「それでなの」
「はい、嫌なんです」
 優子は俯いたまま話していく。
「それでずっと」
「成程ね。けれどね」
「水着の撮影はですよね」
「下着もね。アイドルの必須科目だから」
 何時までも逃げてはいられない、志津子が言うのはこのことだった。
「本当にもうね」
「水着にならないと駄目ですよね」
「そうよ。この機会だから言うけれどね」
 志津子はここでは優子に厳しく言う。
「もう観念してね。水着になって」
「けれどお腹は」
「大丈夫、やり方はあるわ」
 志津子は微笑んだ。それは年上の、人生経験豊かな人の余裕のある微笑みだった。
 その微笑みを優子に見せてこう告げたのである。
「それでもね」
「あるんですか?」
「あるわ。優子ちゃん運動好きだし好き嫌いないし」
 食べ物のだ。それで食わず嫌いのバラエティ番組には出られないと事情もあるにはある。
「幾らでもあるから。じゃあ今から改善よ」
「お願いします。私も便秘に悩んでまして」
 優子にとっても困っていることだった。このことは。
「お腹がどうにかなるなら」
「ええ、何とかしましょう」
 水着撮影の為にもだった。こうして志津子は優子の便秘解消にも取り掛かることになったのである。
 運動の量を増やす。そしてだった。
 牛乳を多く飲ませそして芋類や牛蒡といった繊維質をより多く出した。そうして大根の汁やそうしたものも飲ませた。プルーンもあった。
 そうしたものを飲み食べていると次第にだった。優子の便秘は。
 治った。それと共に便秘になると出る腹もだった。
「びっくりする位に」
「引っ込んだのね」
「はい、嘘みたいです」
 仕事の合間の打ち合わせの時の話だった。優子は志津子に朗らかに話す。
「お腹がj引っ込みました」
「そうでしょ。便秘っていうのはね」
「運動とですね」
「食べ物なのよ」 
 この二つで大きく変わるというのだ。
「そうしたことを改善していけばね」
「治るんですね」
「そうよ。じゃあこれでね」
「水着や下着の撮影もですね」
「いけるわよね」
 志津子は笑顔で優子に話す。
「それもね」
「はい、お腹が出ないのなら」
 腹が出ているアイドルなぞ有り得ない、それにそんな恥ずかしい姿は皆に観られたくない、優子はアイドルとして、そして女の子としてこう考えていたのだ。
 しかしそれが治った。それならだった。
「やらせてもらいます」
「そういうことでね。それにしてもね」
「それにしても?」
「優子ちゃんも意外な弱点があったのね」
 彼女がデビューした時からマネージャーをsしていたがようやく気付いたことだった。 
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