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天使の様な天使

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第五章

「そんなことはね」
「信じてくれませんか」
「下手過ぎるから」
 冗談、それがというのだ。
「お芝居でも大根過ぎるわよ」
「大根、ですか。大根美味しいですね」
「大根は美味しいけれど」
 それでもとだ、麗奈は笑ったまま語った。
「麗奈ちゃんの冗談とお芝居はね」
「駄目ですか」
「駄目駄目、大根でもね」
 それこそというのだ。
「酷過ぎるわよ」
「そうでしょうか、ですが私は」
「嘘は言わないのよね」
「天使は絶対に嘘を言いません」
 胸に右手を当てて力説した。
「何があっても」
「だから皆世界ちゃんは嘘を言わないことは知ってるわよ」
「ですが冗談はですか」
「下手なのよ」
 自分を天使と言うそれも天界の話も全部それだとだ、麗奈は確信して言うのだった。そうしてであった。
 父に世界の素晴らしいところをどんどん話していった、十時を回ったところで父に対して言った。北条が家に帰ったのは五時に仕事が終わって一時間程部下と一緒に飲んで七時にだった。
「お母さんと美奈とワラビに留守番してもらって」
「それでか」
「世界ちゃん教会まで送ろう」
 こう言うのだった、母に妹と犬に留守番を任せて。
「そうしよう」
「そうだな、もう遅いしな」
「うん、それに教会近所だし」
「女の子の一人歩きは危ないしな」
「私が送るけれど」
 それでもというのだ。
「ほら、私も女の子だから」
「帰り道は一人になるな」
「これも危ないから」
「ああ、お父さんも一緒に行くな」
「そうしてね」
「そこまでして頂くとは」
「いいのよ、何かあったら遅いから」
 それでとだ、麗奈は世界に今は真面目に答えた。
「だからね」
「教会まで、ですか」
「送るわね」
「そうしてくれますか」
「そう、じゃあ今からね」
 帰ろうと言ってだ、そしてだった。
 麗奈は北条をボディーガードにして世界を彼女が今住んでいるという教会まで送った。その教会はというと。
 実際に彼等の家の近所にあった、それでだった。
 北条は教会、やや小さいが清潔な感じのその建物を見て言った。
「ここだったんだな」
「うん、ここよ」
 麗奈は父の言葉に応えた。
「近いでしょ」
「この教会の人だったんだな」
「はい、養子といいますか」 
 世界も応えてきた。
「こちらのお世話になっています」
「神父さんに」
「そうです、この前から」
「そうだったんだな」
「よかったらいらして下さい」
 笑顔でだ、世界は北条に言ってきた。
「それで主にお祈りも」
「仏教徒ですがいいかな」
「はい、神は」
「そうなんだ」
「ですからよかったら」
 北条がそうしたいならというのだ。 
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