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新説桃太郎

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第一章

                新説桃太郎
 桃から生まれた桃太郎は悪い鬼達をやっつけるべくお爺さんとお婆さんに刀や黍団子を貰って旅立ちました。
 そして鬼達がいる鬼ヶ島に行く途中で犬と雉と猿をお供にしました。そのうえで鬼ヶ島に向かっていますと。
 ふとです、桃太郎は旅の途中夜で休んでいる時にこう言いました。
「そもそも鬼達はどんな悪さをしているのか」
「はい、近くの村を襲ってです」
「食べものやお酒を奪っています」
「金目のものも奪っています」
「ただ人は傷付けないですね」
「奪う途中で殴ったりはしますが」
「襲ったりはしないです」
 お供達は桃太郎に答えました。
「人殺しもしないです」
「攫ったりもしないです」
「食べものやお金は鬼ヶ島に持って帰ってです」
「蓄えにしています」
「山賊みたいなものか、それに人を殺していないなら」
 それならとです、桃太郎は言いました。
「まだ救いがあるか」
「そうですね、奪う途中で傷付けても」
「積極的に襲っていませんし」
「まだ救いはありますね」
 三匹も桃太郎に答えます。
「それなら」
「奪うことは悪いことでも」
「それでもですね」
「それなら僕達も成敗しても殺すことはないな」
 鬼達をというのです。
「懲らしめても」
「そうですね」
「流石に命を奪うまではないかと」
「彼等もそこまでしていませんし」
「そうだな、というか他にも気になることは」
 何かとです、桃太郎はさらに言いました。
「どうして悪いことをするか」
「そのことも気になりますね」
「悪事にも理由がありますね」
「例え鬼でも」
「鬼が悪いことをすることにも理由があるだろうし」
 それでというのです。
「そこも気になるな」
「はい、ではです」
「鬼達を懲らしめてからです」
「そのことを聞きますか」
「そうしようか」
 こうしたお話をしてでした。
 桃太郎は犬と雉と猿を連れて鬼ヶ島に行ってです。
 鬼達を成敗しました、そして懲らしめた鬼達に尋ねました。
「聞きたいことがあるけれど」
「何でしょうか」
「それは一体」
「そなた達は何故人からものを奪うんだい?」
 このことを実際に尋ねました。
「近所の村を襲って」
「はい、生きていく為です」
 鬼の長老、赤鬼で白く長い髭を生やした鬼が答えました。
「だからです」
「それでか」
「はい、わし等はここに住んでいますが」
 鬼ヶ島にというのです。
「やはり生きる為には食いものや金が必要で」
「それでか」
「はい、ですから」 
 それでというのです。
「近くの村を襲っています」
「そうか、そういう理由だったか」
「生きる為で別に人を取って食うことはしていません」
 長老もこのことは絶対にと言います。
「進んで傷付けることも」
「それも聞いているが」
「それでもですか」
「そういうことはしてはいけない」
 人からものを奪うことはというのです。 
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