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失われた信頼

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第三章

「平屋先生はいつも田中先生に注意されていましたから」
「その生徒指導等で、ですね」
「剣道部の部員達を恒常的に虐待していまして」
「虐待!?」
「あの先生がそうしていたとか」
「そうです。このことはそこで終わらせていましたが」
 先生はその平屋に注意して終わったというのだ。生徒への虐待の件は。
「ことを荒だてるのもどうかと思いまして」
「穏健にですか」
「ことを収めようとされたのですか」
「はい、そうしました」
 先生はこう校長と教頭に話す。
「その他にも色々とあったのですが」
「あの先生が生徒から評判が悪いことは知っていました」
「それもかなり」
 このことは校長も教頭も知ってはいた。こうしたことはすぐに校内中に広まりそして定着する話題だからだ。
 だから校長も教頭も平屋が生徒から非常に嫌われている教師だということは知っていた。だがそれでもだった。
「体罰どころか虐待ですか」
「そこまで至っていましたか」
「中学生では禁止さrている突きを生徒に出したり」
 これは何故か。まだ身体のできていない中学生に対してそうした技を加えれば危険だからだ。柔道での締め技も同じだ。
「兎跳びをさせたり何かあると殴ったり蹴ったりしていました」
「それをですか」
「注意されたのですか」
「他にも罵倒、言葉での暴力も酷く」
 こうしたこともしていたというのだ。
「目に余るので注意しましたが」
「それで、ですか」
「平屋先生はそのことを逆恨みして」
「断言はできませんが」
 しかし可能性は高いというのだった。
「そうではないかと」
「若しそうなら許せませんね」
「教師にあるまじき行いです」
 校長も教頭も思慮分別のある教師だった。残念ながらこうした教師は戦後の日本ではかなり少なくなっている様だが。
「すぐにより深く調査をしましょう」
「そして厳密に」
 こうしてこの件に関する調査がさらに進められた。その結果。
 全ては平屋が仕組んだものであることがわかった。彼は田中先生に生徒への虐待を注意されたことを逆恨みをして先生を退職させるべく顧問をしている剣道部の部員達を裏から恫喝までして手駒にして噂を流させそしてネットでも根拠のないことを書き込んでいた。
 田中先生の噂は全て根拠のない誹謗中傷だとわかった。だが。
 校長はその校長室で教頭と先生にこう話した。 
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