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代々の猫

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第二章

「ニャア」
「お母さん、猫ちゃんいるよ」
 さりなはその猫を見て家にいる母に話した。
「玄関にね」
「どんな子なの?」
「汚れて痩せていて段ボールの中にいるけれど」
 それでもというのだ。
「白い子よ」
「そうなの」
「まだ凄く小さいよ」
「まさかと思うけれど放っておけないから」 
 母は娘に答えた。
「まずは獣医さんに連れて行ってね」
「うちで飼うの」
「ええ、お父さんが帰ったらお話しましょう」 
 こう話してだった。
 母は実際にその猫を拾って獣医に連れて行った、そうしてから仕事から帰って来た夫にその猫を見せて事情を話した。
 すると父はこう言った。
「その娘生後一ヶ月か」
「それ位ってお医者さん言ってたわ」
「そうなんだな」
「それでね」
 そしてというのだ。
「女の子よ」
「いつもだ、うちに来る娘はな」
「前の娘がお家を出て」
「一ヶ月位したらな」
「生後一ヶ月位の娘が来るの」
「ああ、いつもな」
「不思議なことね」
 妻もその話を聞いて言った。
「それはまた」
「ああ、家の前にいるんだよ」
「そうなの、じゃあ本当に」
「この娘はな」
 夫はその猫を見つつ妻に話した。
「シロなのかもな」
「色も性別も同じだし」
「そうかも知れないな、じゃあな」
「飼うのね」
「どんな子でもうちの前にいたら見捨てないけれどな」
 それでもとだ、夫は家長として妻に答えた。
「それでもな」
「この娘は絶対によね」
「ああ、シロかも知れないしな」
「それじゃあ」
「うちで飼おう」
 こう言ってそうしてだった。
 その猫を飼うことにした、その猫は今度はスノーと名付けられた。飼ってみると食べものの好みも癖もシロそっくりで。
 夏休みで家に帰って来ていた息子父を若くした様な彼もスノーを見て言った。
「話は聞いていたけれど」
「シロそっくりよね」
「子供だから違うってわかるけれど」
 妹にスノーを見つつ話した。
「それでも毛並みの感じも動きも」
「シロそのままね」
「本当に生まれ変わってないか?僕ユキのことうっすらと覚えているけれど」
「お兄ちゃんが子供の頃まだうちにいたのよね」
「シロはそのユキそっくりだったし」
「スノーもなの」
「そっくりだよ、本当に不思議だよ」
「やっぱり生まれ変わり?」
「僕もひょっとしてって思うけれど」
 それでもというのだ。
「ここまでそっくりだとな」
「シロの生まれ変わりで」
「代々じゃないか?いつもいなくなって一ヶ月で来るっていうし」
「それも生後一ヶ月で」
「あまりにも出来過ぎているだろ」
「そう言われると」
 さりなも否定出来なかった。
「そうね」
「証拠はないけれどな」
「生まれ変わりの可能性はあるのね」
「否定出来ない、いやそっくりなんてものじゃないから」
 だからだというのだ。
「僕もそう思うよ」
「そうよね」
「まあそれでも」 
 兄は妹にこうも話した。
「悪い気はしないね」
「そうよね、確かに不思議だけれど」
「いつも猫が家にいたらそれだけで違うから」
「明るくなるわね」
「家族がいつも猫を見て猫と遊んで猫のお話をしてね」
「そうなるからね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「いいことだよ」
「じゃあスノーのことも」
「いいと思うよ」
「ニャア」
 兄は鳴いたスノーを見ながら笑顔で言った、そして。
 兄が大学を卒業して千葉県に戻って地元の公務員になり家にもまた住む様になってさりなも高校から大学を出て就職して。 
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