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お世話な親切

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第四章

「ショーツが見えてたなんて」
「実際に見えてたわよ」
「だって事実だから」
 枝織はむっとした顔で津波に言い返す。
「言わないとね」
「それでもそんなこと言わないでよ」
 津波は顔を真っ赤にしたまままた抗議した。身振り手振りも慌てた感じになっている。
「恥ずかしいでしょ」
「何かね」
 尚はここまで聞いてこう言った。
「津波ちゃん、気持ちはわかるけれど」
「恥ずかしいでしょ」
「見えたままだともっと恥ずかしいわよ。というかどういう着方してスパッツから下着が見えてたの?」
「上着が後ろに入ったままで」
 前は出ていたが後ろはそうなっていたというのだ。
「それでスパッツがずれてて」
「上着が入ったショーツがなのね」
「そう、出てたの」
「それは確かに恥ずかしいわね」
 男子生徒がいて見れば大騒ぎの格好である。
「ブルマだったら余計にだったわね」
「ブルマなんて今頃ないから」 
 それは言う津波だった。
「幾ら何でもね」
「まあ例えよ、例え」
 尚も笑って津波に返す、。
「けれどとにかくそれはね」
「そう。枝織ちゃん言ったのよ」 
 津波はこう言ってその枝織をきっとした顔で見た。
「どれだけ恥ずかしかったか」
「そう言う津波ちゃんだって」
 枝織も枝織で言う。
「私に言ったじゃない」
「何て言ったの?」
 尚は今度は枝織に問うた。
「津波ちゃん枝織ちゃんに一体」
「胸よ」 
 枝織はむっとした顔で女の子が最も気にする部分の一つを話に出した。
「胸のことを言ったのよ、津波ちゃん」
「胸って?」
「体操服の背中がめくれててブラが見えてるって」
 なきにしもあらずの事態ではある。
「それを言ってきたのよ。恥ずかしいでしょ」
「それもね」
 尚は今度は枝織の言葉に応えた。
「結構以上にね」
「そうよ。どれだけ恥ずかしかったか」
 枝織も顔を真っ赤にして津波に抗議する。
「津波ちゃん酷いよ、そんなこと言うなんて」
「そう言う枝織ちゃんだって」
 津波も受けて立ち枝織に返す。
「何でそんなこと言うのよ」
「けれどそのままだと」
「そのままだとって何よ」
「恥ずかしい思いしたの枝織ちゃんよ」
「そう言うなら津波ちゃんもじゃない」
 二人は尚を前にしてそのまま言い合う。
「パンツ見えてたじゃない。苺のが」
「枝織ちゃんだって白いブラが」
「そのままだと大変なことになってたのよ」
「それでもよかったの?」
「ああ、もうわかったわ」
 尚は二人の言い合いがひっきりなしに続くと判断してこうその二人に言った。
「わかったから」
「わかったからって?」
「それでどうしたの?」
「どうしたもこうしたもなくてね」
 尚はその口を少し尖らせて二人に言っていく。
「二人共お互い様だし」
「パンツ見えてるって言われたのよ」
「ブラよ、ブラ」
「下着は下着だから」
 その二つをまずは同じだとしてとりあえず二人の勢いを止めた。
 そしてそのうえであらためて二人にこう言った。
「話は聞いたけれど」
「うん、津波ちゃん酷いよね」
「枝織ちゃん最悪よ」
「二人共お互いのことを思ってのことじゃない」
「津波ちゃんを!?」
「枝織ちゃんを!?」
「そうよ。下着が見えてたから言い合ったんでしょ」
 尚は冷静にこのことを話す。
「それはそうよね」
「それは」
「何ていうか」
「親切から言ってるじゃない」
 二人のそれぞれの立場に立ってそのうえで双方を気遣っての言葉だった。
「本当に。そうでしょ?」
「まあそれは」
「何ていうか」
 二人も尚にそう言われると俯いて口ごもった。先程までの勢いはもうない。 
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