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戦国異伝供書

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第百三話 緑から白へその五

「あの家もな」
「はい、しかし関東も乱れていますな」
 幻庵はここでこう言った、北条家の高い鼻と細面の顔は同じであるが出家しているので独特の雰囲気がある。
「むしろ今天下で、です」
「最も乱れておるな」
「そう言っていいですな」
「元々上杉家も一つであった」
「関東管領の家として」
「関東の鎌倉公方様をお助けするな」
 そうした家であったというのだ。
「まさに」
「そうでありましたが」
「分かれてな」
「公方様は鎌倉に入られず」
「古河に入られてな」
 そこでというのだ。
「今では古河公方じゃ」
「そう呼ばれていますな」
「そして他の家もじゃ」
「常に争っており」
「実にややこしい」
「関東の乱れは上方以上ですな」
「間違いなくな」 
 こう弟に話した。
「そうであろう」
「ですな」
「だからな」
 それでというのだ。
「我等はその乱れの中でじゃ」
「徐々に力をつけ」
「そして関東の覇者になり」
「その力で関東を安んじますな」
「そうしようぞ、ただ東国といってもな」
「奥羽の地は、ですな」
「また別じゃ」
「奥州は奥州、羽州は羽州ですな」
「我等はあくまで関東じゃ」
 この地においてどうするかというのだ。
「それが大事でな」
「東国の他の地はよいですな」
「箱根から西も最早な」
「よいですな」
「越後や甲斐も西国であるしな」
 そう分けられているからだというのだ。
「それで甲斐の武田家が何をしてきてもじゃ」
「甲斐に入ることはないですな」
「さして興味はない」
「あくまで関東のみと考える、このことはです」
 幻庵も兄に話した。
「よいかと」
「そうであるな」
「関東でどうするかを定め」
 そしてというのだ。
「動きを考えていくことがです」
「当家に相応しいな」
「はい、ですから」
「我等は東国でどうしていくかな」
「考えていきましょうぞ」
「そういうことであるな」
「当家はまずは相模と伊豆を完全に手中に収めています」
 幻庵は今度は家の勢力のことを話した、話す幻庵も聞く氏綱も既に東国の地図を頭の中に出して考えている。
「そして武蔵に兵を進めていますが」
「まずは武蔵をな」
「完全に手中に収めましょう」
「それがよいな」
「特に河越です」
 この地だというのだ。
「あの地を押さえましょう」
「あの地を押さえれば武蔵の掌握はかなり進むな」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「まずはです」
「あの地までな」
「兵を進め城の守りを固くし」
「大軍に攻められても攻め落とせぬ様にしてな」
「そして河越からです」
「武蔵の全土を掌握してな」
「そこから上野や上総、下総、安房に兵を進め」
「関東の掌握を進めていくな」
「そうしましょうぞ」
 まさにというのだ。 
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