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戦国異伝供書

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第百二話 家臣にしたい者その六

「ならばじゃ」
「これ以上は、ですか」
「無駄な殺生をすべきでない」
「それで、ですか」
「この度は、ですか」
「よい」 
 誰も腹を切らずとも、というのだ。
「その様にする」
「そうされますか」
「では、ですな」
「これより使者を送り」
「降る様に言われますか」
「そうする、これで戦は終わり」
 そしてというのだ。
「我等は山陽と山陰十国の主となるぞ」
「遂に、ですな」
 志道が感慨を込めて言ってきた。
「我等はそうなりますな」
「安芸の一国人がな」
「十国の主ですか」
「そうなる、ならな」
「もうこれで」
「満足じゃ、だからな」
 それだけにというのだ、望みが適うのならば。
「もうな」
「無駄な殺生はせず」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「ことを終わらせるぞ」
「それでは」
「今より使者を送る」
 こう言ってだった、元就は実際にだった。
 月山富田城に使者を送り尼子家に降る様に言った、そして尼子家も最早どうにもならぬと観念してだった。
 降った、元就は尼子家の主な者達を出家することでよしとし戦を終わらせた。これで遂に毛利家は山陽と山陰の十国二百四十万石の主となったが。
 隆元は元就に話した。
「山中殿と十人衆は」
「うむ、大友家の方に落ち延びてな」
「そこからです」
「尼子家の再興にかかろうとしておるな」
「どうされますか」
「よい、大友家は龍造寺家と島津家と対しておる」
 九州においてというのだ。
「我等がこれといって攻めぬのならな」
「それで、ですか」
「動かぬわ」
 毛利家の方にはというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、それでじゃ」
「山中殿のことはですか」
「大友殿も助けられずな」
「兵を集めるにしてもですか」
「あまり集まらぬ」
 そうなるからだというのだ。
「それでじゃ」
「我等としては」
「これといって攻めずにな」
 それでというのだ。
「守りを固めるだけでよい」
「それでは」
「ですが父上」
 今度は元春が言ってきた。
「やはり当家に向かって来るとなると」
「厄介であるか」
「そう思いますが」
「敵は誰でも厄介じゃ」
 元就は元春の言葉を受けてこう述べた。
「やはりな」
「では」
「しかし今言った通りじゃ」
「大友殿の助けを満足に得られぬので」
「大した兵は集まらぬ、しかもな」
 元就はさらに話した。 
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