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高コスト

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第一章

               高コスト
 自衛隊の兵器について父の地盤を受け継いで国会議員に当選したばかりの民主自由党の議員大泉幸次郎は自分の事務所でどうかという顔で言った。
「いや、ちょっとね」
「高いですか」
「これは酷過ぎないかい?」
 秘書の松田市太郎にどうかという顔で言った。
「幾ら何でも」
「ええと、海上自衛隊のイージス艦がですね」 
 松田は大泉の細い目が目立つ顔を見つつ話した、背は一七〇ないが顎の先が尖った細面で黒髪を粋にセットしている、そしてスーツを着こなしている彼に言うのだった。
「一二〇〇億円とか」
「これは凄いよ」
 大泉は自衛隊の兵器の資料を読みつつ言った。
「戦闘機とかは普通に百億円超えてるよ」
「哨戒機とかもですね」
「ヘリも高いし戦車もね」
 こちらの兵器もというのだ。
「一〇式戦車が一両七億円だよ」
「その前の九〇式戦車が十億円とありますね」
「八七式対空自走砲とかもっと凄いよ」
 その値段はというのだ。
「一両十五億円だよ」
「兵器は高いものですね」 
 松田は丸眼鏡が印象的な長方形の顔で述べた、白いものが目立ってきた髪の毛をオールバックにしている。着ている服は結構年代もののスーツである。
「まことに」
「いや、それがだよ」
 大泉はここでアメリカ軍や他の国の軍隊の兵器の資料を出して松田に話した。二人は今事務所のソファーにテーブル挟んで向かい合って座っているので気楽に話している。
「他の国の兵器ずっと安いんだよ」
「そうなのですか」
「アメリカ軍のイージス艦なんて海上自衛隊のそれの数分の一だよ」 
 それ位の建造費だというのだ。
「それでカタログの性能だけ見たらだけれど」
「そんなにですか」
「性能変わらない感じだし、他の兵器もね」 
 大泉は自衛隊の兵器と他国軍の兵器をさらに比較して話した。
「自衛隊の兵器は確かに性能はいいけれど」
「他の国の軍隊の兵器と比べてですか」
「コストがね」
 それがというのだ。
「高いよ」
「それもかなり」
「何でもかんでも予算の無駄と言うのは野党の常套手段でね」
「意味がないですね」
「それで無闇に予算を削ってもね」
 例えそうしてもというのだ。
「災害とかに弱くなるからね」
「その通りですね」
「一番じゃ駄目とかね」
 大泉はある野党の女性議員の言葉をここで出してみせて語った。
「そんなこと言ってもね」
「有権者の方々にすぐに底を見られますね」
「そうなるよ、本当の意味の政治家はね」
「予算をどう効果的に使うか」
「そうしたものだと思うけれど」
「自衛隊の兵器は」
「どう見ても高過ぎるよ」
 このことを言うのだった。
「これは」
「それでは」
「問題提起をして」
 そしてというのだ。
「改善していこうか」
「左様ですね」
「兵器のコストが安くなれば」
 どうなるかとだ、大泉は話した。 
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