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機動戦士ガンダム・インフィニットG

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番外編「MS学園文化祭」

 
前書き
 
 久しぶりの投稿です! 今回はギャグエピソードです。ネタ満載でお贈りしま~す!! 

 
「ふぅ……」
臨海学校の件から数週間後、MS学園に帰ってから一か月がたった。今日、学園中は待ちに待った学園祭の行事で盛り上がっていた。
各組で、様々な催し物が出されている中、僕ら一年G組は……メイド&執事喫茶とやらと開いていた。メイド長は明沙である。そして事あることに執事長は僕に抜擢された。メイド長が明砂なら執事長はアムロじゃなきゃ似合わないという周囲の偏見である。
まぁ、僕も明砂がいるなら落ち着くし別にいいんだけどね……?

「該、まじめにやれよ!」
蝶ネクタイがだらしなく曲がって、スーツも無頓着になっている該を見て、隼人が注意する。
「だって、かったりぃんだもん……つーか誰だよ? メイド&執事喫茶なんてモン考えた奴は……」
「知らないのか? 阪井の奴だよ? あいつ、史奈先輩のメイドガンプラでやめときゃいいのに、よりによって俺たちを巻き込んでこんなもん提案するんだぜ? 当初、阪井は女子限定を言ってたけど、女子も女子で男子もやれっていうから最終的にこういう形になったのさ?」
「あの関西オタク野郎……MSの擬人化だけでやめときゃいいのに、よりによってこんなモンにしやがって!」
「大体、当の本人は執事そっちのけでガンプラ作ってるしね……」
と、隼人が指をさす方向には、隅っこで憧れの先輩をモデルにしたオリジナルガンプラを執事のスーツ姿で組み続けている男子がいた。
「だったら、まだ伊織や高坂たちが挙げていたガンプラ展示会のほうがよっぽどマシだよ? そもそも、僕らってあんまりガンプラ作らないし」
「んもう、サボっちまおうぜ? こんな金にもならねぇことやって何の得があんだよ?」
バイトならいざ知らず、金にもならないママゴトには付き合いきれないと該は言った。
「そう言うと思ったよ? ま、あとで残り物のケーキとかあったらお裾分けしてくれるんじゃない?」
「あれ、キキが作ったケーキだろ? あいつが作るのってお世辞にならないほどまずいもん。家庭科の調理実習じゃとんでもないゲテモンしかつくりゃしねぇからな?」
案の定、彼女の作ったケーキは一瞬チョコケーキに見えるが、実はイチゴのショートケーキだったりする。
「ま、そういうな……おぉ!」
隼人は、二人の目の前を恥ずかしそうに通りかかる女子生徒のメイド姿を見た。見るからに、あと数ミリで見えるか否かのミニスカート……
ちなみに、デザインは阪井が担当している。
「あいつ……やっぱ名人だわ」
該と隼人はしばらくくぎっつけであった。これはいいバイト代になりそうだと期待したに違いない……

一方、一年P組では。

担任のウラキ先生と副担任のニナ先生の提案でパン屋の模擬店を開こうという案に対して生徒一同は不安を抱いたが、突然ドサクサ紛れて乱入してきたバニング先生他、モンシア一味によってP組は酒屋のバー模擬店をやるという提案に生徒一同は大いに賛成。
そして、現在。
「う~む! やっぱ、今年の勝者は俺たち栄えあるP組で決まりだな!」
通い詰めていたバーを見慣れているため、バニングたちはそれ相応に忠実で再現して見せており、バニングはその出来に大満足である。
教室一帯を、本格的なカウンターバーに改造し、ウラキ先生がバーテンダーの格好をして、立っている。その隣ではニナも同席だ。
「ケッ! なんでウラキの野郎にニナさんが付いてんだよ?」
モンシアは気に入らない様子だ。
「な~に、俺がウラキに頼んだのよ? ま、見てなって?」
と、何かを企んでいるかのようにバニングは親指で二人を差した。
「なぁ……その、ニナ?」
モジモジしながら、隣で女性バーテンダーをしているニナに問う。
「どうしたの?」
「実は、その……ニナには専用の制服を着てもらいたいんだ」
「専用の制服?」
「そう! バニング先生に頼まれてね? これなんだ!!」
と、意を決して彼は後ろに隠してある……「バニースーツ」を取り出した。
「えっ……えぇ!? これって……本気なの!?」
「たのむっ……! 来てくれ? ニナがバニーを着てくれたら、俺のニンジン嫌いも治るかもしれないんだ……!!」
「あら調子よすぎねぇ!!」
しかし。
「ウラキ!! なんだそのバニースーツは!?」
火が付いたようにバニング先生が予想外の展開だと怒りながら、歩み寄ってくる。
「な、なにって……バニング先生が言っていたバニースーツですけど?」
「ちがうっ!! 俺はこんなのを求めちゃいない!! 大体、それは何だ!?」
と、スーツと一緒についているタイツを見た。女子生徒たちが使用しているパンストである。
「えっ……でも、これ以上だと過激すぎて、PTAとかに色々と……」
「ぶあぁっかもーん!! 生ぬるいわ!! そんなものかんけーない!! 俺はパンストじゃなくってV型ハイレグスーツに生足を望んでいたのだ。なぜそれがわからない!?」
「し、しかし……ダメだ! 僕には到底できません! ニナのハイレグに生足仕様のバニースーツなんて、そんなの僕の中の阻止限界点が突破してしまう~ッ!!」
「自惚れるな! お前ひとりで何ができる? 頭を冷やせー!!」
「で、でも――それでも僕は、連邦の士官です! これだけは譲れませぇーん!!」
「甘えるな! 貴様のその甘えで船が沈む!!」
と、こういうどうしようもないやり取りを見て、ニナはため息をついた。それに、周囲から大の大人二人が、それも教員が真剣に論争を飛ばしているので、周囲の生徒からすれば迷惑である。
「……わかりました。私が、コレを着れば丸く収まるんですよね? バニング先生」
と、ため息をしながらニナが言うと、二人の論争はピタッと止まった。
「ありがとうニナ! これで僕のニンジン嫌いも克服できると思う――あ、でもこのスーツで頼む」
「ええい! PTAが放つミサイルのシャワーなんぞにビビるなウラキ!」
「ニンジン、関係ないと思うけど……てかもうどうでもいいわ」
「よし! そうと決まれば、さっそく黒いバニーを――」
「待ってください! 大尉、黒だなんて……何故、そんなオヤジ臭いカラーディングのものをニナに着せるんですか!?」
「ニナ先生のような大人びた女性には黒が似合うにきまっているだろ!? なぜそれがわからない、ウラキ少尉!?」
「ニナにはピンクのバニーが似合うんです。それだけは僕も断言できます」
「だめだ! ピンクはガキっぽさが出てエロくないではないか!?」
「大尉!!」
と、そこへモンシアが出てきた。
「どうしたモンシア?」
「ここは間を割って白いバニーにするのはどうでしょうか?」
「おお! そいつは名案だぜ!!」
「白か……僕もそれには不満はありません!」
——男って……
そんな下らなすぎる話し合いを目にニナはさらにため息をついた。

一方Z組では

Z組では、たこ焼き屋を開くことにした。
 ……ぎ店はエル達に任せてジュドーは仕事をサボってメイド・執事喫茶へと出向いていた。
「なぁ、カミーユの奴どこいった?」
 ジュドーは、さっきから姿の見えないカミーユに気づいて、近くを通りかかった友人のビーチャヘ訊ねた。
「G組のメイドカフェにスカウトされたんだってよ?」
「ああ……あいつって、意外とイケメンだからな? 執事の姿も似合うだろうし」
「執事じゃなくってメイドらしいぞ?」
「……」
それ以上は言いづらく。ジュドーは黙った。今頃、カミーユは精神崩壊寸前でメイド服を着ているころだろうし……
「ぷるぷるぷる~!!」
すると、G組の教室から一人の小柄な女子生徒がメイド姿で現れて、ジュドーの背後よりのんきに叫びながら彼の背中へ飛びついてくる。
ジオンから来た転校生で、マリーダの妹? らしいプルという子だ。
「こらプル! 危ないだろ?」
「だって~! ジュドーがいないから寂しかったんだもん!! 私を放って、IS学園なんかに行っちゃうからさ?」
「しょうがないだろ? そもそもお前が来たら……」
仮にプルも来たら、ジオンの人間だと冷たい視線が強い。天真爛漫な少女にそんな思いだけはさせたくない。それに、キュベレイのファンネル攻撃を見せたら、あのセシリアがさらにショックと自信を無くしてしまうからである。ここだけの話、マリーダのファンネル戦術を見て、セシリアは自機のビットがおもちゃのように見えてしまったらしく、ひどく落胆してしまったのだ。
 そんなところへ、突然女子たちの歓声が勢いを増し始めた。なんだろうとジュドーはしがみ付くプルと共にビーチャと歓声のする方向へと視線を向けた。
 「金髪の俺様キャラ!」
 「イケメ~ン!」
 「あ、あの――私を指名してもらえませんか!?」
 女子生徒達が歓声を上げる先にいる来客、それは金髪で袖なしのジャケットを着たサングラスのワイルド系男子が現れた。
 「なんだアイツ?」
 「なんか――どっかで見たことがあるやつだな? テレビで見たっけ?」
 「でも……いやいやいや、ありえない。まさか、あの人物がこんな学校へ来るわけないじゃないか」
 「MS学園だぞ? ここ」
 「でも、ありえないって。あの人はジオンの……」
 「あぁ~! キャスバル様だぁ」
 すると、先ほどまでジュドーにしがみついていたプルは彼から離れてそのサングラス男子へと向かって駆け寄ってきた。
 「え? キャスバルって……」
 ジュドーは、そんな目の前のグラサンへかけていくプルの一言に首を傾げた。
 「むぅ?」
 すると、一方のグラサン男子は目の前へかけよってくる小柄なメイド服の少女へ目を付けた。
 「ぷるぷるぷる~! いらっしゃいませ」
 「なんとっ……!!」
 そんなメイドプルを見て、彼は心の中で一つの新たな衝撃を受けた。
 「ロリに、メイド服……人類の革新だ!」
 「キャスバル様――って、あれ?」
 すると、つかさず彼はプルの両手を強く握り始めた。そんな光景に周囲のメイド女子はさらに歓声を上げだした。
 「君には、革新――可能性を見出した。さぁ……私と一緒にあの見渡しのいい席で共にお茶でもどうかね?」
 突然の行為に周囲の視線が注がれる中、この青年――クワトロ・バジーナはメイドプルと共に窓際の席へと共に座って、とりあえずコーヒーのブラックを注文した。
 「……あれ? キャスバルさん」
 すると、そこへ執事長のアムロが偶然二人の席へ通りかかった。
 「今の私はクワトロ・バジーナだ。それ以上でもそれ以下でもない」
 そうどや顔をする彼にアムロは痛い目を向けた。
 「名前、変えたんですね――」
 「にしても、ここは君の教室だったのか」
 「ええ、メイド・執事喫茶です」
 「あぁ! アムロお兄ちゃん!!」
 プルは、彼をジュドー同様に兄のように慕うアムロに向かって、席を出て抱き着いてきた。 
 「こ、こら! プル――まったく、今日も元気が良すぎるな」
 「ッ!!!」
 すると、そんな光景を見ていたキャスバルことクワトロはまた新たな革新を抱いた。
 彼のサングラスとピカリと輝く。
 「お兄ちゃん――ロリのお兄ちゃんっ子メイドだとッ!?」
 いきなりガタッと席をから立ったクワトロは、大きく両手を広げて何かを悟った。
 「嗚呼、妹キャラ――人は、ロリのお兄ちゃんっ子キャラという時代の流れへ乗るべきなのだ……!」 
 「えっと、キャス――クワトロさん?」
 苦笑いするアムロをよそに、クワトロはプルに向けて強烈な執着のこもった視線になった。
 「エルピープルよ。さぁ、私にも『お兄ちゃんっ』って言いながらこの大いなる父性溢れる胸元へ飛び込んでくるのだ!」
 「何言ってるんですか? キャスバル様、今日はいつもと違ってキモすぎますよ」
 キョトンとするプルの言葉に、
 ――この人、自分の国にいてもこうなのか……!
 アムロは、そんなクワトロに顔を青くした。
 ……そのとき!
 「大尉!! 貴方はこんなところで何をやってるんですかッ!!!」
 メイド服を着た男子がモップを片手にクワトロの前へ躍り出た。
 「むっ! この絶望的品性の塊と俗物的殺気は……!」
 キュピーン! と察知するが、すでに遅い。
 鈍い打撃音と共に、クワトロの顔面をモップの先が直撃しだした。
 頬がぷっくりと腫れて横たわる彼を見てアムロは咄嗟に国際問題を思い浮かべた。
 「く、クワトロさん!?」
 駆け寄るアムロの後ろから、メイド服を着たカミーユがモップを片手に殺気溢れながら歩み寄ってくる。
 「大尉、あなたはいつもそうだ! 自分だけ涼しい顔をしてこっちの気も知らずに、僕の目の前で白昼堂々とロリコン行為に耽り始める!!」
 「ち、ちがう! 違うのだカミーユ――その、私はただ……彼女に、このエルピープルから聖なる母性を感じるのだ。彼女は、私の新たな母になってくれる人かもしれない少女なんだぞ!?」
 ――年下の子に母性を感じるとか、とんだ変態だ。
 アムロはそう心の中でつぶやいた。そして、そんな爆弾発言をしたことでカミーユの頭に修正という火が着き始めることを彼は知ってて発言したのか……
 「歯を食いしばれぇ……」 
 すると、次に気づくとカミーユはZガンダムに変身しており、この至近ゼロ距離からご自慢のハイメガランチャーの砲口を突き付けた。
 「よ、よしたまえ! 君は手加減というものを知らんのか!? だ、第一君もそうしてメイド服という女装の趣味をしていたではないかね――」
 「修正してやるうぅぅぅ!!!!!!!」
 ――ちゅどーん!
 教室に巨大な風穴があいた。
 
 
 *

 一方、MS学園にキャスバルが入っていったという知らせを受けて、アクシスの面々あ早々にMS学園の文化祭の景色を見渡していた。
 「キャスバル様、どこにもみあたりませんね~?」
 ゴットンはチョコバナナを片手にしていた。
 「それよりも、日本の文化祭ってけっこうおもしろいじゃないか!」
 キャラはタコ焼きの包みを片手に、
 「しかし、こうも人が多いと探すのに面倒だな」
 マシュマーは焼きトウモロコシを片手に齧っていた。
 「貴様ら……!」
 両手をわなわなさせる三人の士官、ガトーはキャスバルの捜索そっちのけで文化祭を楽しんでいる三人のアホ部下に怒りをあらわにしていた。
 「貴様ら! 探す気があるのか!?」
 「だってぇ~最近忙しすぎてお休み取れないうえにお肌が荒れ荒れなんだしさぁ~少しは息抜きぐらいいいじゃない少佐?」
 キャラは相変わらずだが、他の二人はとっさに手に持っているものを後ろに隠した。
 「何故――何故私にこんな不真面目な部下共が押し付けられたんだ! 私はソロモンの悪夢なんだぞ!? ソロモンの悪夢とISから恐れられたこの私が! なぜこんな仕打ちにを……」
 ここにきて何度目かの絶望をするガトーだが、
 「んもう! そんな不貞腐れたりしていると良い男前が台無しだよ? 少佐!」
 そういうと、彼女はガトーの口へタコ焼きを突っ込んだ。
 「んぐっ!? な、何をするキャラ・スーン……うまいッ」
 口の中で広がるタコ焼きの美味にガトーは一瞬思考停止に陥った。
 そんな彼の口元がフッと緩んだのだ。
 「あはっ! やっと笑ったね少佐」
 「キャラ……」
 「あんた、こっち(アクシズ)へ来てから全然笑ってなくて、むしろお堅い上に怒ってばっかだったじゃないか。笑う人かなってあたしらは少し心配だったんだよ。それでも、ソロモンの悪夢も笑うときは笑ってくれるんだね!」
 そう、人懐っこい笑みを浮かべるキャラに続いてマシュマーやゴットンも微笑んだ。
 「お前たち……」
 「ほらほら少佐、そうときまれば行くよッ!」
 そういって、キャラはガトーの手を引くと、共にこの出店のエリアを駆けていった。
 「お、こら――」
 戸惑うガトーに続いて、マシュマーとゴットンも続く。
 華やかな学園祭の飾りを見渡しながら、キャラに手を引かれてガトーは校舎の無いかへと入っていく。
 ――学校か……
 そういえば、士官学校時代に連邦の士官学生と触れ合う共同合宿をした覚えがあったな。そこのジオン連邦のMS模擬戦トーナメントで彼と……コウ・ウラキとMS整備科訓練生の二ナ・パープルトンと出会った。
 あの後から、奇妙な三角関係が生まれたな――そのあと、ウラキとは何度も良きライバルとしてMSの模擬戦で渡り合った。ウラキは序盤、私に連敗を喫するばかりであったが、徐々に腕を上げていき、ついには相打ちへと持ち込んできた。そんな彼の男気に負けた私は彼にニナを譲った。そして、私は心を鬼としたジオン軍人の道を進むべく、ニナから手を引くために彼女へ最後の別れを告げた。
 そのとき、偶然近くで祭りが始まっていたな。最後に彼女との思いでにそこで幾つも屋台を巡ったものだ。そんな中、彼女ははしゃぎながら私の手を引いて、こうして縁日の中を駆けまわったものだよ……
 キャラに手を引かれて行くこの光景が、あの時の思い出を思い出させてしまったな……嗚呼、今彼女二ナ・パープルトンとライバルのコウ・ウラキは今頃何処で、何をしているのだろうか――
 「きっと、二人とも良き……」
 「あら、少佐? ガトー少佐!?」 
 「む?」
 聞き覚えのある声へ振り返ると、そこには酒場の模擬店をしている教室があり、その教室から白のバニースーツに身を包むニナの姿が……
 ガトーの目は一瞬で死んだ。そして、ぴたりと立ち止まったガトーにキャラが振り返る。
 「なんだい? 少佐、急に立ち止まって……って、誰だいこの女は!?」
 「え――きゃあ~!」
 とたん、知人を前にこの恥ずかしい格好を見せてしまったことに、ニナはとっさに股間辺りと胸元を隠し始めた。
 「ち、ちがうんですガトー少佐、これはそのっ……コウたちにいろいろと言われて、その……」
 「な、なにぃ~!!!」
 途端、ガトーは丸めた口元をパクパクさせながら、下らん妄想を始めた。
 『ぐぇっへっへっへぇ~ ニナは僕だけのウサギさんだぁ~!!! さぁ、僕が育てたとっておきの人参を食べてぇ~!!!』ウラキ
 『いやぁ~ん! 二ナッちんぐぅ~! はやくコウの人参をちょうだぁい♡』ニナ
 「に、ニナのウサギ――ウラキの人参だとぉ~!!!!!」
 両手を震わせて妄想が阻止限界点を突破したようだ。
 「少佐、少佐?」 
 そんなガトーの目の前をキャラが出て掌を振ってみるも、返事はない。
 「ニナ! 園芸部の生徒たちからニンジンをもらってきたよ! バニング先生が言うには、このニンジンを胸元にはさんで……あれ? ガトー!?」
 そこへ、園芸部からもらってきたニンジンを片手に現れるバーテンダー姿のコウが姿を見せた。
 「う、ウラキィ……!」
 「え、いやっ――どうしたんだ? それよりも久しぶりだなぁ!? なんで軍服のままウチの学校へ来てるんだ? ……あぁー! またジュドーやアムロたちが悪さとかしちゃったかな? ごめ~ん! 俺、あいつらとMS学園へ一緒に行けなかったからわからなくてさ。でも、ちゃんとガトーとの約束は果たしてるぜ! こうしてニナのことを……あれ?」
 そのとき、ガトーはジオン製のガンダム機種「サイサリス」へ姿を変えて仁王立ちしていた。
 「ウラキよ……貴様にニナを渡したのが間違いだったようだ」
 「え? ちょっとまてよ。どういうことだ? 俺――なにか気に障るようなことでも言ったかな?」 
 「問答無用! 情無用! 天誅!」
 サイサリスはビームサーベルを引き抜くと、逃げ出すコウを追いかけ始めた。そんな二人を追いかけるニナとキャラ。
 

 そのころ、クワトロならぬキャスバルは上空より射撃してくるカミーユのウェイブライダーに追いかけられていた。 
 上空からビームライフルが襲い掛かり、そこを必死で地面をジグザグに逃げ回るクワトロが居た。
 これによって、多くの屋台が巻き込まれてい言ってしまう。
 外の敷地内ではイオ・フレミング部長筆頭の吹奏楽部がジャズを演奏しながら盛り上がりを見せ居ている。
 そんなイオの奏でるドラムや部員たちのトランペットの音色に合わせて、クワトロの逃走劇がさらに灼熱しはじめる。
 「ゆ、ゆるしてくれ! カミーユ!! 私が悪かったっ、このとおりだ。もう君の名前をバカにはせんし、君を中性的だとか女装男子とか俗物男子とか修正ニュータイプなどと罵るようなことはせん! 神と幼女と妹キャラに誓って約束……」
 「嘘をつけぇ!!!!!!」
 ウェイブライダーから放たれるビームライフルの柱に追われながら、クワトロはUターンして再び校舎の方へ向かっていた。
 
 「あ、あの……マット先生?」
 校舎の屋上で今度こそ告白しようとマットの隣に立つノエルは、
 「もし、マット先生がよろしければいんですけど……」
 「どうしたんだい? ノエル先生」
 「実は私……そのっ」
 とたん、ウェイブライダーが二人の頭上をすれすれに通過し、あとから吹き上げる強風に二人は吹き飛ばされてしまった。
 
 校庭ではポップコーンを口へ放り投げながら食べ歩いているフォルドとルース、後ろにミユがいた。
 「ルース! 今P組でニナがエッロイ格好して接客してるっていうから見てみようぜ!」
 「フォルド、お前本当にいい加減……あ?」
 「どうしたよ? 相棒――」
 突如、ウェイブライダーの先端がフォルドの後頭部を直撃!

 レストランの模擬店では、
 「ユーマ、あ~ん!」シャル
 「あ~ん!」ユーマ
 そんな二人に刺さっていたパラソルが頭上を通過するウェイブライダーが巻き起こす強風で一斉に上空へ魔あがると同時に、口へ運んでもらう予定だったカレーライスが二人の顔面へベッチョリとダイレクトにかぶってしまった。
 
 校庭の一部にユーグとマヤの生徒達が開くかき氷の屋台があり、そこで生徒たちと共に店を切り盛りしていると、
 「ユーグ先生」
 「ん?」
 「その、生徒たちも行ったことだし……ちょっと二人でお話したいことが――」
 「私にですか?」
 キョトンとするユーグに、
 「実は、今日は貴方に私の思いをと……」
 瞬間、頭上からウェイブライダーに突っ込まれ、二人の教員は屋台の下敷きになった。


 「ウラキィー!!」
 「ガト~! 許してくれぇ~!!」
 校舎からはサイサリスを纏ったガトーに追われるコウが出てきた。
 「あの人参は園芸部から……そもそも僕は無実だ! 全部バニング大尉が悪いんだよっ!」
 「男に二言は無しといったはずだ! 誓いの意味さえもわからぬ者に!!」
 「そ、それでも僕は……ニナの恋人だぁ~!」
 「それは一人前の紳士が言うセリフだ!!!」
 「僕は紳士だ! ちょっと思春期から抜けだすのが遅かっただけの紳士なんだ!!」
 「え~い! 南無三ッ!!!」
 すると、追いかけていてはらちが明かぬと、サイサリスは最後の切り札。「アトミックバズーカ」を肩へ設置し、デジタルスコープから映し出されるコウが逃げる後姿をロックオンした。
 「青春よ! 私は帰ってきたぁー!!!!!」
 そのときだ。
 「ど、どいてくれぇ~!!!」
 そんなサイサリスの元へクワトロが突っ込んできた。
 「どくんだ! どいてくれ~!!」
 「きゃ、キャスバル王子!?」
 とたん、探し求めていたキャスバルことクワトロ・バジーナと偶然接触する形になってしまった。
 そして、クワトロは目の前にサイサリスを見てこう叫ぶ。
 「お、おまえは……どけ! 邪魔だ``ソロバン``の悪夢!!」
 「ソロモンですッ!!」
 「修正してやるぅ~!!!!!」
 「「え?」」
 赤いオーラに包まれたウェイブライダーがガトーとクワトロめがけて突っ込んできた。
 そして、アトミックバズーカから放たれたミサイルがウェイブライダーの先端に直撃し……
 「うわぁ~!!」
 その爆風にコウは吹き飛ばされる。
 ここ一帯に巨大なキノコ雲が上がりだした。かくして、MS学園の文化祭はこうして幕を閉じた。

 「ああ……僕、しーらないっと」
 最後にこの惨状を目にアムロは背を向けて、ハロを抱えながら明沙のもとへ歩いて行った。
 「ねぇ、アムロ」
 「ん?」
 「次はIS学園の文化祭へ行こうよ」
 「そうだね。ここよりかはまともだと思うから」 
 

 
後書き
 その後、ガトーとクワトロは全治一か月の怪我で事なきを得た。カミーユは再び一週間精神病院へ入院したという。 
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