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曇天に哭く修羅

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第四部
  Bブロック 5

 
前書き
どのくらいBブロックの話が続くのか、書いている私にも解りません。

前の話を読んでいる方が1名だけしか居ませんので注意ですが、順番に読まないと只でさえ解りにくい私の話が余計に解りません。 

 
春斗が浮遊する向子へ切っ先を向ける。

すると彼女の体が水中へ沈むようにして、何も無い空間へと埋もれていく。


(会長の【空間接続(アクセション)】か)


世界的な魔術師として知られている向子の代名詞ワープゲート(ワームホール)。

彼女は紀元前2千年から現在まで4千年にも及ぶ【魔術師】の歴史より千年は古く長い発祥とされる、【超能力】の歴史5千年の中でも3本の指に入る空間能力者と言われていた。

他の二人は世界四強の一人《ミディア・ヴァルトシュタイン》と、【鳳皇学園(ほうおうがくえん)】の《龍宮斗浪/たつみやとなみ》である。


(ワープゲートなら何処かに出口が開くはず。武台を覆う結界の内部に出口を出すのなら、会長が攻撃体勢を整えるまでに先制して攻撃することも可能だろう)


頭を出した瞬間を狙って奇襲を。

そう考えた春斗は【夜天中月(ムーンレイズ)】によって飛躍的に増強された知覚を以て武台上だけに留まらず、選手同士の戦いで観客に被害が出ぬよう設置された結界の内側全てを楽々把握。


「さあ来い。その首貰い受ける」


そしてゲートが開いた。

春斗が向子の脈動を捉えようと動き出す。

しかし彼の体が急停止。


「……何だ……これは……?」


確かにワープゲートの出口は存在する。

しかしその有り様は予想と違っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


異変の元凶を察知した春斗。彼が知覚したのは小さなワープゲートだ。

剣先も入らない程の。

それだけなら問題ない。そこから向子が出てくるのは確実なのだからゲートが(ひら)き切って、彼女が姿を現す瞬間に斬り込むだけ。

しかし最初の小さなゲートが開いた直後、離れた場所に同サイズのゲートが(ひら)いた。

もちろん春斗も反応する。

だが同じようなゲートは次々と現れて結界内部の空間に穴を穿(うが)っていく。

正に虫食い穴(ワームホール)のような勢いで増殖し、数えるのも馬鹿らしい数となった。


(どれだけ増えるんだこれは……!?)


未だに向子の姿が見えないところからすると、彼女は別の空間でこちらの空間に戻ってくるタイミングを計っているのだろう。

ゲートが数ミリだったものが数センチとなり、指が入る程には成長すると、そこかしこからスピーカーのように向子の声が響く。


「試すよ?」


ゲートに小さな影が見えた。

春斗は刀を振って迎撃するも、現れたのは正体不明の黒くて小さな欠片(かけら)


「なんだこれは」


武台の床に落ちたそれを剣で()つく。

特に何も起きる気配は無い。


(一体どういうことだ?)

「簡単に私が出たら詰まらないじゃないか。悪いけど、今から江神くんの集中力を()ぎ落とさせてもらうよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(なるほど。そういう趣向か。実力差は歴然だというのにそこまで慎重に戦闘を進めるくらいは俺を認めてくれたのだろうか)


拳大になった数百のゲートに影が浮かぶ。

春斗は両手で刀を握り締め、思いっ切り体を(ねじ)ると高速で水平に一回転。

彼を中心に小規模な竜巻が起こると数千の三日月が弧を描いて刃となり渦を巻く。

ゲートから現れた黒片は全て吹き飛んだ。

その光景を亜空間で眺めていた向子は口笛を吹きながら春斗の技量を称賛。


「下手に出ると斬られるかな? かと言って何時までも引き(こも)ってられないし、まあどうにかして隙を作りますか」


空間振動(シェイキング)

手始めに空間を揺さぶってみる。

発生した振動が空間を波打たせた。

春斗は空間の変化を敏感に感じ取り、迫る振動から逃れるため、素早く移動。

彼が居た場所は空間振動によって生まれた衝撃波が押し寄せて破壊される。


「ふむふむ。もしかして空間振動だけだと倒し切れないのかもしれないね。ゲートの数は維持して江神くんの情報処理は散漫にしとこ。知覚する数にも限界が有るわけだし」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


向子が空間振動を乱発すると、春斗は【夜天中月/ムーンレイズ】の斬撃に【魔晄神氣/セカンドレイク】の【神速斬光(エル・グリント)】を合わせ、剣の振りを速めた。

三日月の刃も動きが高まって、より遠くへと飛んでいくようになる。

速まった斬撃で空気が(うな)ると風を起こし、空間振動とぶつかって相殺。


「へー。異能と超能力に剣技を組み合わせるとはなかなか器用だね。じゃあそんな江神くんには二つ行って見よーかー」


空間歪曲(グラインド)

空間が歪み捻じ曲がる。


空間移動(テレポート)

この能力の名前はテレポーテーションを略して付けたものではない。

故に空間を別の場所に飛ばしたり、能力者が空間を越えることは出来ないのだ。

出来るのは空間の移動。

空間を動かすだけの能力だが高位の空間能力者が使うなら厄介である。


「ヒュウッ……!」


春斗の喉が鋭く音を鳴らす。


(息継ぎや(まばた)きをするだけでも細心の注意を要求されるとはな……! 一体どれだけの余力を残しているんだ会長(あのひと)は……)


春斗は神速斬光を【ニノ段(ツヴァイ)】に上げて新たな空間能力に対処する。
 
 

 
後書き
Cブロックは書く必要ないし、DブロックはBブロックよりも短くなるはず。

しかし、向子さんの本格戦闘を偽悪やLosの本編以外で先に書くことになろうとは。 
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