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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga10覚醒~Calls from the past~

†††Sideセラティナ†††

“T.C.”の魔術師が発動した創世結界。私たち特騎隊は結界展開時にバラバラにされてしまったようで、さっきまで一緒だったオバラトル氏や“アポローの輝石”の姿はどこにもない。敵魔術師は植物を操ることを得意にしてるようで、草木で組み上げられた30m以上の大きさを誇る巨人を何十体と造り出した。

『セラティナは、オバラトル氏の護衛を最優先! 輝石は・・・最悪T.C.に渡しても仕方ない! 局員や民間人への攻撃は不許可っていうアレも、今の状況じゃ守られていないも同然だし!』

『了解!』

モニター越しのシャルからの指示。シャルはルシルから預かった対魔術用デバイス、水色の投信を持つ長刀“トロイメライ”を振るって、植物の巨人の足を寸断して転倒させる、を繰り返してる。巨人はうつ伏せのままでも腕を払ったり、ぽっかり空いた大きな口で飲み込もうとしたり、体の至る所から伸ばした根や蔓などで攻撃したり、立っていても倒れていても厄介な存在だった。

(シャルには二つ返事で応じたけど、シャル達の魔術どころかルミナのスキルのようなものさえ、私は持ってない。そんな私に護衛なんて大役を果たせるのか・・・)

結界魔法だけなら全魔導師の中でも五指に入るっていう自負はある。でもそれが通用するのは魔法と一部のスキルのみ。練度の高い結界破壊系のスキルや魔術が相手となれば一気に脆くなる。しかも今回は特に不利になる魔術が相手。私に敵う道理はないけど、それでも全うするだけだ。

「氏よ。私が必ずあなたを護り抜きますが、輝石は最悪見捨てることになるかもしれないことを今この場で、我が隊の長イリスに代わり陳謝します。本当に申し訳ありません」

『かまわないよ。信者たちに必要なのはアポローの輝石という偶像で、中身は必要ないんだ。あの植物を操る彼は、借りに来たと言っていたからね。いずれは返してくれるんだろう。まぁ数日ほどであれば嬉しいけどね』

オバラトル氏はそう言って頭を揺らした。笑ってるんだろうけど、“輝石”を盗られた時点で特騎隊の負けが確定する。シャルはそれでもしょうがいないって言ってたけど、可能なら完全勝利でこの戦いを終えたいに決まってる。

「オバラトル氏。戦闘の協力を申し出てもよろしいでしょうか?」

『・・・それは何故か』

「こちらの勝手な理由です。負けたくないんです、あの犯罪者集団に。私たちの組織は、連中の有する特殊な力の所為で一方的に負け続けています。体面を気にしているのか?と問われたら、否定はしません。でもそれだけではないんです。悪事を止めたい、世界を護りたい、と。・・・これは氏を危険な目に遭わせるとことになるので、もちろん断ってくださっても――」

『いいや、その言葉を待っていたよ。隊長さんが、私を護れ、と言っていただろう? 護られるべき対象は、進んで戦闘に参加するわけにはいかないからね。護ってくれる者が困るだろうから。でもいいのかい? 隊長さん、怒るんじゃない?』

「みっちり怒られてきます」

命令無視に護衛対象を戦闘に参加させるなんて、減給どころか停職くらい貰いそうだ。それでもこれ以上の好き勝手を許すわけにはいかない。そんな覚悟をしてると、『私が隊長さんに言っておくよ。私が勝手に戦い始めたとね』オバラトル氏がそう言った。

「え、でも・・・」

『連中の狙いは輝石。なら関係者の私が戦わなくてどうする。・・・さぁ、こちらにも来たぞ』

地響きと共に近付いてくるのは植物の巨人3体。巨体の割に歩くスピードが速い巨人たちに向かってオバラトル氏が「オオオオオオオオ!!」雄叫びをあげた。そして迫り来る巨人たちへ突進。巨人たちはグッと腰を落として、オバラトル氏の突進を受け止めようと両腕を伸ばした。

『はっはっは! 私の突進を受け止められるとは思わないことだね!』

オバラトル氏と巨人たちが激突。すると巨人たちは面白いほどに吹っ飛ばされて、地上へ激突。普通の人間が相手なら、地上へ激突(氏のタックルだけですでに死んでいるかも)した時点で終わっていただろうけど、相手は草木で組み上げられた植物の巨人。痛みなんてもちろんなく、ゆっくりとだけど起き上がろうとしていた。

『させないよ』

反転したオバラトル氏は起き上がり途中の巨人たちに再びタックル。巨大な2つの角で巨人たちを掬い上げるようにして上空に吹っ飛ばした。

『(ここで少し試してみよう!)オバラトル氏! 結界で一度拘束してみます!』

『どうぞ!』

――一方通行(サンダルフォン)の聖域・多層封印(マルチレイヤー)――

地面に激突したと同時に巨人たちを1体ずつ拘束。サンダルフォンは閉じ込めた対象の魔力行使のすべてを強制的に不能にする結界だ。対魔術にはほとんど効果はないのは確認済みだけど、巨人たちの拘束は今のところ出来てる。

(手足を動かせないようにキッチリ囲ったから、打撃で破壊できないっていう狙いは上手くいったかな)

身動きを封じてしまえば結界は破壊できないと考えていたところで、巨人たちはボロボロと崩れ始めた。魔法のサンダルフォンで魔術効果を潰すことは出来ない以上、その崩壊は“T.C.”メンバーの意図するものだってことは判った。

「オバラトル氏! 結界が破られる可能性大です!」

『そうみたいだね。判るかい? 巨人を構成していた草木が小さな人型の群れと成っていく』

「まずい! 結界が壊される!」

1体の巨人から何十体の木人形が再構築されて、一斉に結界を内部から攻撃を始めた。魔術による攻撃なため結界はすぐにヒビ割れ、そのままガシャァン!と破壊された。結界から解放された木人形たちは波のように広がり始めた。

『お嬢さん、私の背に乗って! 飲み込まれるよ!』

這い回る木人形を踏み潰しながら迎えに来てくれたオバラトル氏の背中へと飛行魔法を使って飛び乗る。そうすることで周辺の状況をモニター越しじゃなくて、肉眼で確認することが出来た。最も状況が悪いのは、「オバラトル氏! あちらへ!」って、魔力スフィアを複数展開して矢印を作る。

『おお! 矢印なんていうのも作れるのかい!? すごいな!』

オバラトル氏はそう感嘆しながらも、私が示した方角で独り戦っている「ルミナ!」の元へ急いで駆け出してくれた。

「とにかく今は少しでも・・・!『ルミナ、跳んで!』」

――多牢結界(インディジュアル・ケース)――

ルミナのフォローをするために、ルミナが数mとジャンプしたのを確認してから複数の結界を同時に展開、木人形たちを一斉に隔離する。破壊されるまでの短い間にオバラトル氏の頭の上で合流したルミナが「助かったよ、セラティナ!」ちょっとやつれた笑顔を向けてくれた。まともに対抗手段がない中で何十体っていう木人形に包囲されて、それでも撃墜されないように頑張っていたんだから仕方ないよね。

「うん! このままみんなのフォローに回ろう! オバラトル氏、お願い出来ますか?」

『もちろんだとも! いやぁ、戦闘なんて生まれて初めてだけど、敵を薙ぎ払う快感は素晴らしいね! あ、だからと言ってそれに狂うことはしないよ?』

群がる木人形をバキバキと踏み潰し、蹴り飛ばし、迫る巨人はその角で突き刺し、そして振り回したり、薙ぎ払ったり、オバラトル氏の攻撃は圧倒的だった。次に助けるべきは、意識を失っていながら行方不明なルシルなんだけど・・・。

『こちらアイリ。ルシルを発見して、クララと一緒にシャーリーンへ帰艦。治療はアイリとティファレトの2人がかりで、クララもこのまま残ってもらうことになったけど・・・。それでいいシャル?』

『ええ、問題ないわ。ルシルのことお願い。出来ればサッサと叩き起こしてきて。な、ぜ、か、オバラトル氏が戦闘に参加していただけていることで戦力は申し分なしだから。自ら進んで戦ってくれているようなので、今は不問にしておく。というわけで、各騎、輝石の元に一度集合。侵入者の居所がまだ掴めてないの。わたし達を分散させておいて本命ってことだろうから』

そういうわけで“輝石”の元へ向かう私たちは、なおも健在な4本の柱と結界、そして“輝石”の姿を視認。するとルミナが「アイツ、私たちで遊んでるんだ・・・!」って苛立たし気に呻いた。

「どういうこと?」

「これまでのT.C.は、目的の物を奪うために迅速に行動して即逃亡していたでしょ? なのにアイツはさっさと奪って逃げればいいのに、奪うより私たちを攻撃することを優先している。だから――」

「遊んでる、か」

――ディアブロ・デ・ラ・プランタ――

私も確かにって唸っているところでオバラトル氏の『おわっ!?』って驚きの声と一緒に激しい振動が私たちを襲った。

「どうしました!?」

『例の巨人が四肢にしがみ付いた! 少し待ってくれ、引きはがす!』

オバラトル氏が地団駄を踏むように暴れだした。流石に乗り続けられるような暴れっぷりじゃないし、何より私たちが何もしないわけにはいかない。私とルミナは氏から飛び降りて、四肢に抱き付いてる上半身だけの巨人を確認した。

――連刃・天舞八閃――

とそこに、真紅色の魔力刀8本が右後ろ脚にしがみ付いてる巨人の両肩に突き刺さり、「滅!」のキーワードですべての魔力刀が爆破されて、巨人の両肩を吹っ飛ばした。オバラトル氏はその機を逃さず右後ろ脚を蹴り上げて、両肩を失った巨人を吹っ飛ばした。

――制圧せし氷狼(インバシオン・ローボ)――

反対の左後ろ脚にも巨人がしがみ付いてるけど、50頭を超える氷の狼が襲撃。ガブッと噛み付いたところから凍結が始まって、最終的に両腕も凍り付いて崩壊。オバラトル氏は左後ろ脚を振るって巨人を完全粉砕した。

「お待たせ!」

「ルミナ先輩、セラティナ先輩、大丈夫ですか!?」

シャルと一緒にセレス、クラリス、ミヤビが合流。もうこれで一安心だ。

『前脚も片方だけでいいから解放してもらえると助かるよ』

「お任せを! クラリス先輩!」

「よし」

ミヤビの角は氷と水を操る蒼色で、全身から冷気を迸らせてる。巨人の背中を駆け上がって行って、「氷牙冷雹 雪帝 双凍掌!!」全身から両手の平に移した冷気を、掌底と同時に巨人の右腕に打ち込んだ。

「フェアシュテルケン・シュラーゲン!」

クラリスは魔力付加した金砕棒による打撃攻撃で、凍り付いた右腕を打った。それで右腕は完全崩壊して、オバラトル氏は自由になった右前脚を振るって巨人を吹っ飛ばす。残るは左前脚にしがみ付いてる巨人だけど、『もう私を捕らえることは出来ないよ』って、オバラトル氏は最後の巨人も蹴っ飛ばした。

「輝石も無事みたいね」

「今のところは、だけどね」

“輝石”の在るステージのところにまで戻って来て、4本の柱を繋ぐように張られた結界の中に今なお綺麗に輝いてる“輝石”を確認。ホッとしたのも束の間、「ようやく揃ったか! いつまで俺様を待たせんだよぉ!?」“T.C.”の声が響き渡った。
声の出どころは“輝石”を挟んで向こう側、植物で作られた玉座に座ってる“T.C.”からだ。特騎隊は“輝石”の盾となるような位置で並んで、“T.C.”と相対する。ちなみにオバラトル氏は私たちの後ろで待機だ。

「俺様たちの王からよ、局員への攻撃も可能な限り行うことなかれ。しかしターゲットを入手し、撤退の行く手を妨害する者には反撃を許す・・・って言われてんだよ」

「あなた、その命令をめちゃくちゃ違反してるじゃない。王って言うのがどんな奴かは知らないけど、臣下であるあなたが命令無視をしてると知ればどう思うかな?」

「知ったことかよ。俺様は協力してやってるんだ。ターゲットを持ち帰ってやっただけでも感謝してもらいたいもんだぜ。だからよ、憂さ晴らしさせてくれよ。アイツにこき使われている俺様のためによ!」

“T.C.”はチラッとシャルを見た後、ひじ掛けにもたれさせていた杖を握り、石突で地面を打った。

――真技サタナス・デ・ラ・プランタ――

玉座がブワッと膨れ上がると“T.C.”を飲み込んで巨人化していく。続けて地面を穿って飛び出してきた毒々しい色の植物群が高速で何かを形作り始めた。植物は巨人へと組み込まれていくけど、これまでの巨人とは違う特徴がチラホラ。まずは色。そして妙な樹液を垂れ流してるトゲや、ラフレシアみたいな大きな花が数えきれないほどに咲いてる。あっという間に組まれた頭部の目の部分は、そんな大きな花の集合体。中央の穴からは紫色のようなピンク色のような、どちらとも断言できない妙な色のガスを発してる。

(アレ絶対に触れたらダメなやつだ)

シャルの「全騎! 総攻撃!」っていう指示が飛ぶ。一斉に攻撃態勢に入ったところで、植物に完全に飲み込まれて姿の見えなくなった“T.C.”が「死にてぇ間抜けだけ来やがれ!」そう叫んだ。

――ニエブラ・ベネノーサ――

胸の辺りまで造られた巨人の至る所に咲いてる花からブワッとガスが放出された。そのガスがこちらに向かって流れてくるから、シャルが「ルミナ、ミヤビ!」と一緒に一歩前に躍り出た。

「よし!」

――ルフト・クーゲル――

目にも留まらぬ速さで連続で拳を突き出したルミナが放ったのは拳状の空気の砲弾。

「いきます!」

――風雅拳衝――

角の色が蒼から翠へと変化させたミヤビは両腕に竜巻を纏わせて、ルミナと同じように左右の拳を突き出して拳上の砲撃を2連射。

「風牙烈風刃・乱れ打ちぃぃーーーー!!」

神器“トロイメライ”を振り回しながら風圧の壁を連射。3人の風の攻撃でガスが押し返され始めたから私は、「サンダルフォンで隔離する!」ってみんなに告げた。

「了解! 各騎、セラティナが結界を展開する! 展開と同時に総攻撃!」

シャルの指示にみんなは「了解!」って応えて、攻撃の準備に入った。それを確認した私は、上腕の辺りまで造られた巨人を閉じ込めるために結界魔法を発動。

――一方通行(サンダルフォン)の聖域・多層封印(マルチレイヤー)――

サンダルフォンの14層の多層結界で巨人を閉じ込める。ガスは気体だからこそ魔法でも封じ込めることが出来るんだ。巨人本体に攻撃されたらダメだけど・・・。反撃が始まる前にシャル達の総攻撃が始まった。

「飛刃・翔舞十閃!!」

永遠なる凍土を生ずる王剣(スパーダ・デ・フリオサタナス)!!」

シャルの放った10個の刃は結界をすり抜けて巨人へ到達して、首から下を寸断。そこにセレスの巨大な冷気の剣が崩壊し始めた巨人を貫いて、瞬時に凍結を始める。

「シュトゥースヴェレン・ツ・フェアブライテン!!」

ルミナが右足で思いっきり地面を踏んづけた。あの技は指向性衝撃波を放つというものだ。衝撃波は巨人に向かって地面を割りながら走って、到達すると崩落中の破片がさらに細かく砕けた。そして胴体を失ったことで無事な頭部も落下して、胴体の破片にぶつかると派手な音を立てて崩れた。

「攻撃中止! 次の一手を最大警戒! 結界内で新たな魔術を発動するはず! 侵入者に攻撃を当てないよう注意しながら、次の魔術を即座に破壊する!」

――違うよ。彼は、そんな真っ当な考えをするわけがない――

「え・・・?」

シャルの指示に交じって別の誰かの声が頭の中で聞こえた。周囲を見回すけど、その声の主はどこにもいない。そもそも念話でも通信でも口頭でもない。

――セラティナ。今こそあなたは、魔術師――結界王としての真価を発揮しないとダメなの――

(気の所為なんかじゃ、幻聴なんかじゃない。結界王の真価ってなに? 私のことを言ってるの? でも私は魔術師じゃない・・・)

だけどクラリス、それに騎士トリシュタンや騎士アンジェリエも、ルシルの力で後天的に魔術師になることが出来た。前世の記憶と魔術を見て知るって方法だったはず。もしかして、これがそうなのかも・・・。

――いい? 彼の性根はどうしようもないほどに腐っている。そして敵で弄ぶのが大好きな気質な、正真正銘の狂人。もう結界の中には居ないと思った方が良いから、今の結界は解除しても大丈夫――

「あ、あのっ、あなたは一体何者なんですか?」

「び、びっくりした・・・。セラティナ、急に声を出してどうしたの?」

一方通行の言葉なのか、それとも私との会話が成り立つものなのか、どちらか判らないから声に出してそう尋ねてた。私の側に居たクラリスが目を丸くして私を見た。私は「ごめん、なんでもない」って謝ったところで・・・

――混乱は尤も。でも今は私の声に集中して。大丈夫。混乱なんてすることない。だってあなたは、私の声を知ってるはずだよ――

また声が頭の中でした。ううん、頭の中というより胸の奥から響いてくるような。でもうん、落ち着いてみればこの声を・・・私は知ってる。確かに大丈夫だ。あなたは私の・・・前世なのだから。

(あなたなんだね、アリス・ロードスター)

――うんっ! ようこそ、セラティナ。魔導より過去にして強大な魔道のステージへ。いろいろと伝えたいことはあるけど、今はあなたに私の魔道を託すことを優先する。少しの間だけ辛いかもしれないけど、なんとか耐えて――

(わ、判った!)

夢の中でしか会えず、何より会話なんてすることも出来なかった私の前世であるアリスが、私と会話してる。それだけで興奮気味なのに魔術を扱えるかもしれないと解かった今、うずうずが最高潮になった。

――モレスタル&フィエスタ・デ・コミダ――

とその時、私たちを取り囲むように何百本っていう木々が生えた。さらに樹木の側面から、ハエトリグサのようなギザギザの口を持った植物が、これまた何百本と生えてきた。ガキンガキン!って金属音のような口の開閉を繰り返すその植物が姿の見えない“T.C.”の「喰らいな!」っていう号令の下に一斉に襲い掛かってきた。アリスの言うようにもう結界の外に居るみたいだから、発動中の結界を解除した。

「全騎、食べられないように! 反撃開始!」

完全な魔術である以上、私とルミナは戦力外。だから“輝石”の周りでオバラトル氏と一緒に待機。シャル達が迫る植物を迎撃してるのを見守る中・・・

――セラティナ、よく聞いて。対魔術戦の拘束力において結界王(わたしたち)は最強である――

(はいっ!)

――今必要なのは、魔法じゃなくて魔術としての一方通行(サンダルフォン)の聖域。この術式で彼を拘束して、気絶するような攻撃を加えさえすれば勝利確定――

「っぐ・・・?」

リンカーコアが心臓みたいな鼓動をし始めた・・・気がする。

――私の生まれ変わりであるあなたは、先天的な魔術師として生まれていたの。でも今の時代、魔術は過去の遺物としてあまり世界の意思に認められてない。だから自然に発現することはないの。だけどこうして外部からリミッターを解除してあげれば・・・ほら、あなたもこれで・・・魔術師だよ――

「くぅぅぅ・・・あああ・・・あああああ・・・!」

――昇華――

胸を押さえて痛みに耐える。そんな私にルミナが「ちょっと、大丈夫!?」両肩に手を置いて支えてくれた。私は「必要な痛みだから、大丈夫だよ・・・」笑顔を努めて作ってルミナに向けた。私の言葉に首を傾げるルミナだったけど・・・。

「え?・・・うそ、待って。この魔力の感じって・・・! セラティナ。まさか、あなた・・・!」

「・・・うん」

胸の痛みも落ち着いて、額に噴き出た汗を袖で拭い去りながら私を支えてくれてたルミナに「ありがとう、もう大丈夫」ってお礼を言って、私たちを食べようとする植物たちを睨みつける。

――魔術としての結界術式、ちゃんと理解できてる? リンカーコアの魔力炉(システム)化と一緒に私の結界術式のすべてを送ったんだけど・・・――

(問題ないと思います。頭の中がスッキリして、今ならなんだって出来るような気がするので)

――オーケー。じゃあ、2代目結界王セラティナ・ロードスターの初陣といこうか!――

「(はいっ!)・・・セラティナ・ロードスター、いきます!」
 
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